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2018年3月の『押さえておきたい良書

『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法』-コロンビア大学ビジネススクール最重要講義

続々と「ひらめき」が起こせる秘密のメソッドとは?

『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法』
 -コロンビア大学ビジネススクール最重要講義
ウィリアム・ダガン 著
児島 修 訳
ダイヤモンド社
2017/11 264p 1,500円(税別)

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 作り話が疑われるものもあるが、ニュートンの万有引力やアルキメデスの原理をはじめ、古今東西の偉人による「突然のひらめき」のエピソードはこと欠かない。

 だが、たとえ偉人や天才と呼ばれる人物であっても、狙った時に自由自在にひらめきを起こせるわけではない。リンゴの木をぼんやり見つめていた時、のんびり風呂につかっていた時など、思いもかけない瞬間に突然頭に浮かぶのが、ひらめきなのだ。

 ことほどさようにひらめきはコントロールできないが、それを起こしやすくする科学的なメソッドは存在すると説くのが、本書『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法』だ。突然のひらめきを起こすメカニズムを「第7感」と名づけ、事例を分析しながら、それが働くための条件や行動習慣などについて詳しく解説している。

 著者は米国コロンビア大学ビジネススクール上級講師。同校の大学院課程とエグゼクティブコース、および世界の企業の何千人ものエグゼクティブを対象に第7感についての講義を行っているという。

ひらめきを起こす「第7感」の4要素とは

 著者は第7感には4つの要素があると指摘する。「歴史の先例」「オープンマインド」「突然のひらめき」「決意」だ。このうち、突然のひらめき以外の3要素はコントロール可能だ。この3要素の意図的な形成と実践こそ、著者の唱える「ひらめきを科学的に起こすメソッド」にほかならない。

 歴史の先例とは「過去の経験」やこれまでに培った「知識」を指す。突然のひらめきは、脳の中でそれらの「新しい組み合わせ」ができた時に起こる。そのためには、あらゆる記憶を検索する必要があり、時間がかかる。いつ組み合わせが見つけられるか分からないため、ひらめきは「突然」起こるのだ。

 オープンマインドとは、簡単に言うと「頭を空っぽにする」こと。目の前の状況についての既存の考えを、いったんすべて忘れる。そうやって脳内に、良い組み合わせを見つけるためのスペースを作る。つまり、オープンマインドになることで、歴史の先例が組み合わさり、ひらめきが起こりやすくなる環境が整えられるというわけだ。

 4要素の最後に挙げられている決意とは、ひらめいたアイデアを実現させるのを固く決心することだ。

スターバックスの成功を生んだミラノでのひらめき

 本書では、スターバックスを世界的なコーヒーチェーンに育て上げたハワード・シュルツ氏の第7感を事例として大きく取り上げている。

 1983年、米国シアトルのスターバックスに勤めていたシュルツ氏は、イタリアのミラノに出張した。当時のスターバックスは上質なコーヒー豆の販売店であり、彼はミラノの展示会で新しい什器(じゅうき=店舗で使う器や道具)を探すミッションを負っていたのだ。

 シュルツ氏は展示会に向かう道すがら、ふとコーヒーバーに立ち寄る。そこには、彼がそれまで見たことのなかった豊かな文化があった。

 そして、展示会の帰りにもう一度コーヒーバーに入り、エスプレッソを飲んでいたシュルツ氏に、突然「スターバックスにイタリアのコーヒーバー文化を取り入れる」というひらめきが起こる。

 帰り道のコーヒーバーでの寄り道がシュルツ氏のオープンマインドの時間になったと考えられる。そのおかげで、「上質な豆を売るだけの当時のスターバックス」と「ミラノのコーヒーバー文化」という歴史の先例の新しい組み合わせができあがった。

 本サイト「ひらめきブックレビュー」でふだんなじみのないジャンルの本の紹介に目を通す経験も、文字通りひらめきを起こすための歴史の先例になり得る。

 本書では「人生戦略マップ」など、第7感を活用して人生を豊かにする具体的な手法にも触れている。人生を良い方向に変えるかもしれない最強のメソッドを身に付けてみてはいかがだろうか。

情報工場 チーフエディター 吉川 清史

情報工場 チーフエディター 吉川 清史

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。出版社にて大学受験雑誌および書籍の編集に従事した後、広告代理店にて高等教育専門誌編集長に就任。2007年、創業間もない情報工場に参画。以来チーフエディターとしてSERENDIP、ひらめきブックレビューなどほぼすべての提供コンテンツの制作・編集に携わる。インディーズを中心とする音楽マニアでもあり、多忙の合間をぬって各地のライブハウスに出没。猫一匹とともに暮らす。

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2018年3月のブックレビュー

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