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2017年3月の『押さえておきたい良書

伸びる会社は「これ」をやらない!

ありがちな部下のマネジメントの誤解や錯覚を解く

『伸びる会社は「これ」をやらない!』
安藤 広大 著
すばる舎
2017/01 224p 1,500円(税別)

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 「上司たるもの、部下のがんばりを評価し、彼らのモチベーションが下がらないよう気を配るべき」「社員とのコミュニケーションを密にし、現場でともに汗を流すのが良い社長の姿」――。これらを「当たり前のこと」と捉えてはいないだろうか?
 本書『伸びる会社は「これ」をやらない!』は、こうした組織運営の考え方は「誤解」や「錯覚」だと断じる。そうした誤解や錯覚が、働く人たちの認識に「ずれ」を生じさせ、組織のパフォーマンスを阻害する。それが業績が伸び悩む要因になるのだという。
 本書の著者は、2015年に株式会社識学を設立。個々の人間の意識構造を探る「識学」をもとにした組織運営のコンサルティングを実践している。150社を超える企業の業績アップに貢献しているという。初の著書である本書では、経営者やリーダーが「やめる」べきことを列挙し、本来どのような言動や行動がふさわしいのかを具体的に解説している。

モチベーションを上げても成果は上がらない

 とくに強調されているのが、社員・部下のモチベーションの取り扱いだ。えてして「社員が高いモチベーションで仕事をすれば、個人の能力が最大限発揮され、会社全体の成果も上がる」と考えがちだが、そこに誤解があるようだ。

“(1)お客さまにサービスを提供する
(2)お客さまから対価をいただく
(3)会社が社員に給与を支払う
 これがビジネスの正しい順番です。この順番が「事実のしくみ」というものです。
 しかし、多くの働く人たちは、
(1)会社が社員に給与を支払う
(2)お客さまにサービスを提供する
(3)お客さまから対価をいただく
という順番だと誤解をしています。”(『伸びる会社は「これ」をやらない!』p.18-19より)

 上記のような誤解をすると「給料がもらえるからがんばる」という思考になる。この「何か理由があるからがんばる」と考えるのが間違いのもとだと、著者は指摘する。本来、会社で仕事をがんばるのに理由はいらない。どうしても理由を挙げるなら「社員だから」だ。がんばってサービスを提供しなければ、お客さまから対価をいただけず、会社は成り立たなくなる。

評価はプロセスではなく結果を客観的指標で

 がんばるのに「社員だから」以外の理由を求めると、「モチベーションが上がらないから、がんばらない」という言い訳が出てくる。そんなことを言われた社長やリーダーがすべきなのは、環境を整えたり、社員同士の親睦を深めるなどして、彼らのモチベーションを上げようとすることではない。彼らがどんな状況にあり、何をしたらいいのかをしっかり認識させることだ。それには適切な「評価」が重要になる。
 その際、「よくがんばっている」のように、プロセスを感覚的に評価してはいけない。あくまで数値データなどの公平で客観的な指標を使って「結果」「成果」を評価する。どうしてもプロセスを評価したい時には「顧客訪問数○件」のように数字を使う。
 “先を見る”社長と、“目の前の仕事に集中する”現場社員の役割の違いを明確にするのも、伸びる会社をつくる鉄則の1つ。著者は、そのために「社長は常に孤独であるべき」とさえ言っている。
 ただし、本書で挙げられている各項目をそのまま実践しようとすると、冷徹な組織という印象を内外に与えかねないのではないか。本書の基本的な考え方を参照した上で、自社を取り巻く環境や社員たちの資質や性格に合わせ、いかに血の通った組織にするか。ひとすじなわにはいかないだろう。しかし、それを考え実現させるのが、社長やリーダーの腕の見せどころではないか。(担当:情報工場 吉川清史)

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2017年3月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店