2016年10月の『押さえておきたい良書』
日中、眠気で仕事に集中できないなど、睡眠不足が原因で仕事のパフォーマンスが下がっている人は少なくないのではないだろうか。だが、睡眠をコントロールすることで常に一定以上のパフォーマンスを出し続けている人もいる。本書でいう「一流の人」とはそんな人だ。著者は、「睡眠」こそが最強のビジネススキルであり、それを上手に活用することが一流への最短ルートだと説く。
著者の裴英洙氏は、医師として手術や診療に携わりながら、慶應ビジネス・スクールでMBAを取得、在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立している。本書では、著者が日々接する患者さんたちや、周囲のビジネスパーソンの睡眠傾向を調査し、医学知識を総動員した検証の結果たどり着いた、独自の「快眠戦略」を詳しく解説している。
著者が手術を担当する際には、ベストな状態で臨むために「前日の睡眠から手術は始まっている」と意識するのだという。
平日の行動予定を順番に書くときに、普通は「起床」から書き始めるのではないだろうか。だが「一流の人」はそうではなく、前夜の「就寝」から書き始めるという。就寝を「1日のゴール」と考えるのではなく、翌日に続く「1日のスタート」としているのだ。「明日のパフォーマンスを最高にもっていく」ことを目的とした能動的睡眠へと意識を変えることが大切なのだ。
万人共通の「最適睡眠時間」など存在しない
また、健康管理上、「22~2時は睡眠のゴールデンタイム」だと言われます。しかし、多忙なビジネスパーソンにとって、毎日22時にベッドに入るというのは、現実離れした話だと言わざるをえないでしょう。
つまり、睡眠には「絶対解」がないのです。だからこそ、一般論やメディアの情報に流されることなく、自分自身に最適な睡眠時間を把握して、「最適解」を得る必要があるのです。” (p.45より)
このように著者は、万人共通の最適睡眠時間など存在しないと断定。各々自分に合った睡眠時間を見つけるために、睡眠の「見える化」を推奨している。
見える化のための具体的な方策としては「睡眠ログ」を作成するのがてっとり早い。入眠時間、起床時間、目覚め感、その日の仕事のパフォーマンスなどを毎日記録していくことで、自分がどんな睡眠をしているのかが大まかにつかめるようになる。これを1カ月ほど続けると、「これ以上睡眠を犠牲にするとパフォーマンスを落とす」といった限界ラインも把握できるようになるそうだ。
床につく前の “入眠儀式”でぐっすり
この睡眠ログには、「睡眠の前行程」も追加して記録するとベターだ。夕食の時間と内容、寝る前のリラックス行動などもログに加えていくのだ。そうすれば、寝る前にどのような行動をとると寝つきが良いのかがわかってくる。さらにその一連の行動を「入眠儀式」として習慣化すると快眠が得られやすくなる。(担当:情報工場 内山貴子)