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ブロックチェーンを

ビジネスに
どう活用していくべきか

提供:アクセンチュア
ブロックチェーンをビジネスにどう活用していくべきか

アクセンチュアのコンサルタントが、デジタル技術の最先端で起きている変化の波頭、すなわち「EDGE」の実像に迫るインタビューシリーズ。
今回は「ブロックチェーンの活用」をテーマに、通信・メディア・ハイテク本部シニア・マネジャーの新名龍太郎氏(左)と、箕輪旭氏(右)が語り合った。

ブロックチェーンの技術と経営をつなぐ

対談風景

お二人のご経歴とこれまでのお仕事は? line

新名 私は2002年にアクセンチュアに入社していますが、実業に携わりたいという思いが募り5年後にMITメディアラボの伊藤穣一さんと林郁社長が創業されたデシタルガレージで働きました。デシタルガレージは、日本で最初の個人のホームページを始めるなど、インターネット技術で時代を常に先取りしてきた会社で、そこでの経験が今も生きています。事業会社にいた経験もあり、現在は、主にメディア企業のお客様でスタッフ部門の構造改革、経営企画における新規事業創出といった分野をご支援しています。

箕輪 学生時代は量子コンピューティングの基礎技術を勉強していました。2009年にアクセンチュアへ入社してからは主にシステム開発や先端技術に関するコンサルティングを手がけてきました。昔から先端技術に強い興味があり、テクノロジー活用に強いアクセンチュアは自分の力を存分に発揮できる場所だと感じています。マネジャーになったころからお客様のビジネスのデジタル化が急速に進み、新しいテクノロジーをどう活用していくかなどの意思決定のご支援を行っています。新しいテクノロジーを学ぶのが好きで、プライベートで「ミノワコイン」を実験的に開発してみたりしています。常に、コンサルにありがちな机上ではなく、自分で触ったり作ったり手を動かして生の技術に触れるようにしています。

対談風景

ブロックチェーンを活用して新ビジネスを創出しようという企業が増えました。 line

新名 仮想通貨で注目されたこともあり、ブロックチェーンを活用すれば、誰でももうかるビジネスが始められるかのような雰囲気が生まれていると感じます。しかし、ブロックチェーンを活用して収益を生むビジネスを創出できた企業はまだほとんどなく、企業経営者はその現実を認識するべきです。ブロックチェーンはインターネットの登場と同じぐらいのマグニチュードを潜在的に持つ技術であることに異論はありませんが、新ビジネスの創出へ一足飛びに挑戦するのではなく、まずはどのようなテクノロジーなのかをよく理解していただくのがよいと思います。

箕輪 私もブロックチェーンがインターネット以来の大革命を起こすテクノロジーであるという意見には同感ですが、現在は熱狂的なブームも一段落し始めており、世の中を変えるような新しい施策へのチャレンジには継続して取り組みつつ、ブロックチェーンの活用をより現実的な観点で考えるフェーズに入ってきたと思います。技術は魔法ではないので、まずは現実的に自社のどこにそれが生かせるのかを考え、その意義や効果を実感すべきと思います。例えば既存のシステムを刷新する場合や、新システムを導入する場合に、「ここにブロックチェーン技術を導入するとどんなメリットがあるか?」を考えてみることは効果的だと感じています。

対談風景

より現実的なブロックチェーンの活用法とはどのようなものでしょうか? line

新名 既存のシステムをブロックチェーン技術で、もっとコスト安に構築・運用したいが、すぐには実現できないから5~10年後を見据えて検証する――といった向き合い方が、現時点では多くの企業にとって適切です。今、ブロックチェーンで構築したシステムの処理能力が低くとも、5~10年後には数十~数百倍になっている可能性は高い。そうなったときライバルに後れを取らないよう、今から投資するわけです。ほかのテクノロジーで現在実現できても、10年後に置き換わるという見通しが立てられる領域には投資をすべきです。

箕輪 ブロックチェーンのテクノロジー以外でも実現できるが、ブロックチェーンにすることによるメリットがある例として、複数コミュニティー間でのやり取りが想定されるポイントサービスのようなシステムが考えられます。現在のテクノロジーでもポイントシステムは実現できますが、複数の業界・企業にまたがるような大規模なサービスの仕組みを作ろうとすると、ブロックチェーンのように取引の正当性が担保されているフレームワークを使って開発を行う方がより効率的になる可能性があります。

新名 サプライチェーンマネジメントシステムでは、現在実現できているレベルよりもサプライヤー、メーカー、販売会社など複数会社間の受発注やトレーサビリティーの管理を高度化できる可能性はあります。ただし、全てをパブリックなブロックチェーンでカバーするのは難しいため、活用範囲の見極めは必要となります。

箕輪 システム監査の負担が軽くなる可能性もあります。決済システムを構築する場合、システム的に改ざんが行われていないかどうかを綿密に監査する必要があります。またトレーサビリティーのシステムを構築する場合もその正しさを技術的に説明するプロセスが不可欠です。ブロックチェーン技術では、フレームワーク自体がデータの正当性を担保するため、そうしたシステムではメリットが大きいと思います。

対談風景

ブロックチェーン技術において、アクセンチュアが提供できる価値とは何でしょうか? line

箕輪 今年8月にアクセンチュアは「ブロックチェーン・ハブ」というブロックチェーン・プラットフォームを発表しました。金融業界を皮切りに、通信や製造や他の業界にも広く展開する予定です。多くの企業情報システムは以前、大手ITベンダーが提供する標準テクノロジーを採用することによって開発することができました。それに対して現在は、無償や低コストであるものの多数の細かな標準テクノロジーをどう組み合わせてシステムを構築するのか、構築するシステムにどのようなデータを流し込むのかが問われるようになっています。また実運用化のためには、ブロックチェーンのエンジン自体に加え、UI(ユーザーインタフェース)、認証といった周辺機能の作りこみも必要です。

 そこでブロックチェーン・ハブが、そのときどきで自分たちに最適なテクノロジーを組み合わせられるプラットフォームを提供します。ブロックチェーン技術は、これからも急速に進化し、ブロックチェーン関連サービスも無数に登場するでしょう。それらをシンプルに組み合わせられるハブになっており、既にふくおかフィナンシャルグループが、このブロックチェーン・ハブを活用して地域ポイント基盤システムを開発中です。

ブロックチェーン・ハブのアーキテクチャ全体像

新名 ブロックチェーンの技術と一口に言っても、パブリック向け、コンソーシアム向け、プライベート向けなどがあります。実際のシステム構築では1個のソリューションで済む場合は少なく、複数のソリューションを組み合わせるハブのような仕組みが重要になると考えます。

 また、ブロックチェーンは技術ドリブン変革であり、それだけにブロックチェーンの本質を理解することは難しく、経営者の方がどの領域でいつどれくらいの投資をすればよいかを判断するのは容易ではありません。経営者が投資を判断できるように技術の動向を伝える、いわば経営と技術の通訳が不可欠で、そこでもアクセンチュアがお役に立てると思います。

対談風景

今後、お二人が取り組みたい仕事やテーマは? line

箕輪 ブロックチェーンの技術を他の先端技術と組み合わせて、革新的な仕組みを作ってみたいと考えています。AIの領域ではAIのアルゴリズムやエンジンといった技術の価値が低下し、そこにどのようなデータを投入するかが重要になっています。事実、AIのエンジンを無償で提供し、利用データの収集に注力するベンダーも現れてきました。そのようなAIと、データの価値をやりとりできるブロックチェーンの技術は親和性が高い。AIへ投入するインプットデータをブロックチェーン技術で管理し、インプットデータを全てのものがインターネットへつながるIoT技術で取得し、必要であれば、超高速の量子コンピューターで処理するなど、テクノロジーのハイブリッド化を追求していきたいと思います。

新名 私は新規事業の立ち上げや事業拡大のご支援に一段と力を入れて取り組みたいと思います。アウトソーシングやシステム開発は省人化によるコストダウンに傾きがちです。ブロックチェーンのような新しいテクノロジーを使って新しい事業を作ることは人だからできることで、「人の付加価値を高めることができる」と感じます。さらに、これからはエコシステムが重要になる時代なので、1つの会社で実現できないなら、3~4社などのネットワークを作っていくようなご支援に取り組みたい。ブロックチェーン技術についても、経営者がビジネスを俯瞰(ふかん)的に見て、ポートフォリオを組んだ投資が判断できる「ブロックチェーン診断」のようなサービスで支援できればと思います。

対談風景

アクセンチュア株式会社
通信・メディア・ハイテク本部シニア・マネジャー 新名龍太郎氏

 学生時代はラクロスをやっていました。男子のラクロスでは、ヘルメットやショルダーパッドなど、アメフトのような防具をつけてプレーするかなり激しいスポーツで、ひそかなストレス発散にもなっていました。高校時代までは野球少年で、監督から言われた「自覚なき者反省なし、反省なき者改善なし、改善なき者進歩なし、進歩無き者未来なし」という言葉は今も覚えており、人生の支えになっています。なお、プロ野球は阪神ファンです。

アクセンチュア株式会社
通信・メディア・ハイテク本部シニア・マネジャー 箕輪旭氏

 幼少期から独学でピアノを演奏しており、今はアマチュアコンテストなどに挑戦しています。ピアノを弾いているとイライラしたりすることが減りますね。最近では、2015年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したチョ・ソンジン氏の演奏が好きでよく聞いています。座右の銘はインド独立運動を指導したガンジー氏の「あなたが見たいと思う世界に、あなた自身がなりなさい」です。自分が見たいと思うことは、自分でやっていこうということを日々大事にしています。

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