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AI(人工知能)の活用を
どう進めるか

提供:アクセンチュア
AI(人工知能)の活用をどう進めるか

アクセンチュアのコンサルタントが、デジタル技術の最先端で起きている変化の波頭、すなわち「Edge」の実像に迫るインタビューシリーズ。
第5回は「AI(人工知能)の活用をどう進めるか」をテーマに、通信・メディア・ハイテク本部シニア・プリンシパルの八木伸一郎氏と、同本部シニア・マネジャーの木戸早奈英氏が語り合った。

AIで取り組む経営課題を今一度問い直す

対談風景

お二人とも中途でアクセンチュアに入社されたとのことですが。 line

八木 別のコンサルティングファームから転職して、アクセンチュアでは10年以上、通信・メディア・ハイテク(CMT)業界のお客様をご支援してきました。1年半、アクセンチュアの豪シドニーオフィスも経験し、今は主に通信業界のお客様とお仕事をしています。オペレーション戦略や中期経営計画策定、新規事業立ち上げ、BPR(ビジネスプロセス再構築)などを手がけてきましたが、専門は弊社ではカスタマー&チャネルと呼ぶ、マーケティング、セールス、カスタマーケアといったいわゆるCRM(顧客関係管理)です。

木戸 私も別の経営コンサルティングファームから、アクセンチュアに来ました。前職も含めてこれまでに、小売や製薬業界、自動車業界、メディアやプラットフォーム業界のお客様とお仕事をしており、長中期経営計画、サプライチェーンマネジメント戦略、新規ビジネスのプランニング、管理会計方針の刷新などを手がけてきました。最近では、カスタマーエクスペリエンスに関する仕事をしています。業界としては、現在国内外ともに成長しているインターネット業界をご支援することが増えています。

幅広い範囲のお仕事を手がけられていますね。 line

八木 アクセンチュアには、幅広い業界やテーマに関する豊富なナレッジ(知識)データベースがあり、人材も豊富です。各業界に根差した熟練コンサルタントはもちろんのこと、最先端のデータサイエンティスト、デジタルマーケティング事業を展開する子会社のアイ・エム・ジェイ(IMJ)をはじめとするクリエイター集団から、世界中のベストプラクティスを生かすグローバル組織が織りなす総合力があって、これだけのことが可能になります。

木戸 学生時代に研究室で活用した数学、特に論理・統計・確率は、コンサルティングで必要になるロジカルシンキングでも役立っています。その上で、アクセンチュアが持つ社内の有識者・ライトパーソンと迅速に連携しアクセンチュアの総合力を結集させることで多様なクライアント課題に応えることができていると思います。アクセンチュアがデジタルやオペレーションから各産業分野を網羅する規模感は、従来のコンサルとの大きな違いだと思います。

対談風景

お仕事で心がけていることは何でしょうか? line

木戸 ビジネスプランニングの仕事を多く手がけましたが、我々の価値の1つはお客様が変革に向けて実際に動きだすお手伝いをすることです。ゴールの策定、そしてそのゴールに向かってお客様にとってよりよい段取り・順番で進めるための道筋を提案します。それによってすぐにアクションいただける状態まで落としこむことが可能となります。一方、正論だけで解決できないことが多くあるのも実ビジネスです。その組織や文化にあったインセンティブやモチベーションをお客様と共に設定し、変革に向けてステークホルダーの方へご提示するなど、損得や感情面もとても重要視しています。また、これからの時代、クリエイティビティーというか、アートとサイエンスといった異なる二者のバランスがいっそう必要になってくると思います。そうしたことも配慮しながら、お客様が新しいビジネスを生み出すためのお手伝いをしています。

八木 私も同様に、お客様の声の奥にある、本当に取り組むべき課題を探るようにしています。お客様からご相談をいただく際、お客様側で既に課題や目指すべきゴールなどが設定されていることがあります。しかし、それが本当に答えるべき・解決すべき課題なのか、ゴールなのかを今一度客観的に考えたうえで、そこにギャップや二面性がないかどうかを探ります。

 簡単な例でいうと、AIのような新しいテクノロジーでは、「とりあえず当社でもAIで何かできないか」といった安易な課題を設定しがちです。革新的なテクノロジーに着目していち早くとりかかるというのは素晴らしい経営スタンスだと思います。一方で、目指す姿や狙い、多くの場合はそれがどう自社の勝ちパターンにつながるのかなどですが、それがぼんやりしたままではPoC(試験導入)の域を出ず成果を実感することできません。3~5年後に自社のビジネスや組織をどのようにしたいのか、10年後に市場やユーザーが何を欲しているのかを描き、それを実現するために何を変えるのかを決め、そのためにどのようなテクノロジーが使えるか、そのテクノロジーの1つとしてどうAIを使えるか、といったように問い直します。

木戸 AIに限らず、なぜそれを使うのか、それを使って何をなし遂げたいのかを突き詰めておかなければなりませんね。今さらですが、データであったり、AIのような先端テクノロジーを戦略的に利活用するような文化が、企業の生き残りを左右することになります。

対談風景

最近のAIの進化は予想以上に急速です。どう捉えていますか? line

八木 極端な捉え方をされている方が多いように感じています。分かりやすい例として、大きく2つの捉え方を挙げると、1つは「すべての課題を解決する万能のテクノロジーである」「近い将来人間がする仕事はなくなる」というようなもの。もう1つは「これまでのICT(情報通信技術)と変わらないものではないか」というものです。どちらも極端すぎます。

 アクセンチュアが実施したFuture of Workforceという調査で、労働者の25%はAIが自身の仕事にどのような影響をもたらすかイメージを持てていない、加えて、AIに対してポジティブな感情を持つ労働者は22%に留まり、漠然とした不安感を抱いている人がとても多いという結果が出ています。

 AIの明確な定義はまだないそうですが、データを使って「学習する」ことが伝統的なICTとの明確な違いであると思います。そのため、AIのパワーを可能な限り高めようとすると、学習に用いるデータの質と量が勝負になります。データの質と量、両方が必要なので、短期間の試験導入で実用性を否定するのは早計であり、データがないと何もできないので決して万能ではありません。どちらかというと長期間にわたり、データの蓄積も含めて仕事にどう取り込んでいくのかを検討する必要があります。

 例えば、あるクライアントで法人営業における改革を行っているのですが、営業マンの行動・プロセスや商談の実態が見えないという課題を抱えています。そこで、そのクライアントでは一般的によくうたわれる売上フォーキャストやリード・商談スコアリングへのAI活用ではなく、まずは今見えていない情報をキャプチャー・蓄積するための解決策としてのAI活用を検討されています。

木戸 企業がAIを活用する際は適用範囲や適用方法を見極める必要があるでしょう。100%確実な結果を求めており、かつロジックが明確な対処であれば狭義のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で十分です。最近は、AIに前処理でスクリーニングや取捨選択をさせて人間が最終判断をする、という方法でプロセスの最適化を検討することが多くあります。AIとヒトがコラボレーションすることでより効率的で、効果を得られるようになってきています。ここでいう効果は精度だけでなく、顧客満足度などの人の感情面も含まれます。

八木 AI投資を判断する際にはROI(投下資本利益率)という標準的な指標が利用しづらいという点には注意すべきでしょう。AIのROIをプロジェクト単位で算出したいという要望もあり、それはもちろん1つの判断材料として必要ですが、それだけで判断すべきかは疑問です。

木戸 ROIのR(リターン)はそもそも金銭的なリターンという意味ですが、AIにおいては、AIへ投資しないことで生まれる機会損失、AIを使ったビジネスが当たり前になりつつある現在において、他社に後れをとるリスクなどを含めておくべきだと思います。

対談風景

AIに対して、アクセンチュアが提供できる価値とは何でしょうか? line

木戸 アクセンチュア自身がAI活用のユーザーであり、実行者であるということです。そうした立場での実践的な知見を踏まえて、経営者やマネジャーの方々に、AIをどう使うかについて提言できるところが他社にない大きな価値です。

 私たちは今、「_FORM_(フォーム)」という新しいコンサルティングの手法を展開しています。この方法論で我々が活用するスキルは、例えば以下のようなものです。

 Design Thinking(デザイン思考)/ Agile Ways of Working(アジャイルな働き方)/ Data fluency(データの流ちょう性)/ Value Creation(価値創造)/ Storytelling(ストーリーテリング)

 これらは従来の典型的なロジカルシンキングに基づいたコンサルティング手法を、進化させたものです。これからのビジネスは旧来の課題解決や効率化の枠のみならず、新しい発想や顧客体験がさらに求められてくるので、考え方もコンサルティング手法も変わらないといけません。顧客体験や従業員体験の観点も踏まえ、ヒトによるAI活用の最適解を導き出すのにより適したオープンイノベーション志向なコンサルティングで、一方的な提案ではなく、お客様との協働を意識した手法となっています。

ACCENTURE_FORM_

八木 アクセンチュアには様々な部門がありますが、「ストラテジー」はビジネス戦略を、「デジタル」や「テクノロジー」はAIの活用も含め、実現・形づくる部分をそれぞれ強力に支援できます。また、AIのように継続的な学習による精度向上が必要なものについては「オペレーションズ」が社内における実際の活用事例を踏まえて支援することができます。そしてそれらを全体としてお客様の課題をよく知る「コンサルティング」が支援するとともに、人事・組織変革のチームが人財育成のご支援をしたり、財務・会計領域の専門チームのチームがこれからの時代に即したファイナンス変革支援などもできるようになっています。

木戸 提供中の独自ソリューションとして「AI HUBプラットフォーム」があります。AIのエンジンにはそれぞれ得手不得手があります。それぞれの得意なところを、ビジネスのニーズに合わせて組み合わせて活用できるようにしました。AI HUBでは、いろいろな情報を1カ所にまとめて、最適なAIエンジンを容易に適用できるようにします。全てのデータがAI HUBを経由することで学習を繰り返し、サービス品質を制御できる仕組みを実現しています。

AI HUBプラットフォーム

 アクセンチュアはAIを単独で売るわけではありません。なぜ、それを使うのかからはじまり、どこまでなら現時点で効果が出る使い方ができるか、市場やユーザーのニーズに対してどう活用していくかなどをお客様と共に追求して、Profitable(収益性が高く)でSustainable(持続可能)なビジネスの成果を出せるかが、私たちの存在価値だと思っています。

対談風景

今後、取り組みたい仕事やテーマについて教えてください。 line

木戸 AIが急速に進化するなか、ヒトとAIそれぞれの役割分担を見極めることは重要で、特に日本はAIによる生産性向上の恩恵を他国以上に享受できる可能性があります。AIとヒトの役割分担、とくにヒトが担うことによる価値を踏まえた顧客体験の実現を考えていきたいと思っています。

人間とAIの役割分担とは?

八木 日本における産業の新陳代謝を活性化させていくという課題には興味があります。アクセンチュアもオープンイノベーションを推進するなどAIをはじめとするテクノロジーを活用したビジネスの創出や成長に貢献しようとしていますが、私個人としてもスモールビジネスやスタートアップの支援やコラボレーションを通じて貢献したいと考えています。

木戸 スタートアップ企業は急成長期に人材育成や業務インフラが成長に追いつかない、これまでの成長の要件ががらりと変わって対処が難しい、などという課題を抱えます。それらに対してアクセンチュアは、数々のスタートアップ企業への支援を通じて、会社を効率よくスケールするノウハウを「Accenture Webscale Services(アクセンチュアウェブスケールサービス)」という名称でまとめています。グローバルでも多くのインターネット企業の成長を支援してきた実績に基づき、スタートアップに限らず、迅速にデジタルサービスを市場投入するご支援をしています。デジタル化したサービスも裏側ではヒトが担わなければならない業務が多いものです。弊社は数百人単位の様々な人材・スキルと業務インフラの迅速な提供を通じて、新しいインターネットサービスやスタートアップの素早い立ち上がりやスケールアップを支援できます。

 アクセンチュアにはこのように、どのような顧客体験や従業員体験としたいのかを明確化し、そのためにAIとヒトがどのように協働していく方法があるのかを、共に実現できるノウハウがあります。皆様とともに「NEW」を創り出していけることを楽しみにしています。

Accenture WEBSCALE services
EVOLUTION with webscale

対談風景

アクセンチュア株式会社
通信・メディア・ハイテク本部シニア・プリンシパル 八木伸一郎氏

 オフでは、もうすぐ5歳になる双子の子供と遊んだり、家族と過ごすことが多いです。妻も商社に勤務する共働き夫婦でして、平日は仕事や家事でなかなか時間が作れないので、リラックスするようにしています。家族が寝た後に、ヨーロッパや日本のサッカーを観るのも息抜きになっています。料理が好きで、旅行先で食べたトルコ料理にすっかりはまっています。

アクセンチュア株式会社
通信・メディア・ハイテク本部シニア・マネジャー 木戸早奈英氏

 大学院の専攻は分子細胞遺伝学。オフでは3歳の娘と遊んだり、家事をすることが多いです。観葉植物を育てています。ピアノを演奏することもあり、もちろん聴くことも好きなのですが、特にクリスチャン・ツィメルマンさんの熱烈なファンで、来日したときには5カ所のコンサート会場を巡るほどでした。また、これまでに読んだ本の中でアルボムッレ・スマナサーラ氏の『怒らないこと―役立つ初期仏教法話』には大きな感銘を受けました。

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