「禅─心をかたちに─」開催記念

「壊さずに調べる」最新テクノロジーがいにしえ人の思いを今につたえる

提供:東芝ITコントロールシステム 「禅─心をかたちに─」開催記念 「壊さずに調べる」最新テクノロジーがいにしえ人の思いを今につたえる

達磨像 白隠慧鶴筆 大分・萬壽寺蔵

茶の湯や能楽など日本人の美意識に影響を与えた禅宗文化の記憶をたどる特別展「禅─心をかたちに─」が10月18日から東京国立博物館 平成館で開催される。国宝22件をはじめとする禅の名宝が多数集結する中、ひときわ注目を集めているのが鎌倉五山第一位建長寺の蘭渓道隆坐像。最新の非破壊検査技術による事前調査を元に、2年かけての保存修理を終えたばかり。修理後初公開となるからだ。歴史遺産と最新テクノロジーとの出合いを演出した2人に話を聞いた。

Interview 1

仏像の修復方針を決めたCTスキャン解析

東京国立博物館 学芸企画部企画課長 浅見龍介氏

  • 臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠諱記念
  • 特別展「禅─心をかたちに─」
  • 会期2016年10月18日(火)〜11月27日(日)展示替あり
  • 会場東京国立博物館 平成館
  • 開館時間9:30-17:00 入館は閉館の30分前まで
  • 金曜日と10月22日(土)、11月3日(木・祝)、5日(土)は午後8時まで
  • 休館日月曜日
  • 拝観料一般当日券1600円、大学生1200円、高校生900円 中学生以下無料
  • 障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
  • 主催東京国立博物館、臨済宗黄檗連合会派合議所、日本経済新聞社、BSジャパン
  • 問い合わせ03-5777-8600(ハローダイヤル)03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 展覧会公式サイトhttp://zen.exhn.jp/

展示物の放つ厳しいまなざしに触れ
禅の精神を知る

浅見龍介氏

「ムチを見て走る馬ではだめだ。座禅を怠るな──。蘭渓道隆という人は、とにかく修行に厳しい人だった」と語る浅見さん。坐像が放つ射るような目も、弟子たちの怠け心をたしなめているのではと語る。

今回の特別展「禅―心をかたちに―」の見どころを教えてください。

この特別展は春に京都で行われた同展の東京会場という位置づけで、鎌倉時代から江戸時代にいたる臨済禅の歴史をたどる展覧会です。国宝22件、重要文化財102件など、禅の名宝が集結。国宝の「達磨図」(山梨・向嶽寺蔵)など東京展限定の作品もあります。

東京国立博物館ではこれまでもたびたび禅宗の特別展を行ってきましたが、今回は特に臨済宗、黄檗宗の15本山すべてからご出品いただける得難い機会です。厳しい修行で知られる禅の精神は頭で理解するものではありません。作品と向きあって体感していただきたいと思います。

今回、建長寺に安置される開山像「蘭渓道隆坐像」が2年にわたる修復を終え、本展で初めて公開されたということで注目されています。

蘭渓道隆坐像は、建長寺の境内でも一般の参拝が許されない開山堂の中に安置され、修行僧たちを眼光鋭く見つめています。初めて寺外に出た2003年の建長寺創建750年記念特別展「鎌倉―禅の源流―」の時も、座高が62.9cmと小さいながら、対面すると緊張してしまうくらい迫力がありました。

ただ当時は、江戸時代に行われた修復により表面に茶色の漆が塗られ、生々しさに欠ける印象を受けました。京都での修復前に京都国立博物館でX線CT調査を行い、漆の下層に健全な彫刻があることを確認。漆を剥がしたところ、確かに一流の仏師がつくったと思われる立派な彫りが中から現れました。

文化財の修復で怖いのは、表面の漆を剥がしすぎてしまうことです。彫りがあまりなく、単に漆で盛り上げたものだと、最後はまだらになってしまう。では、どこまで剥ぐのがベストか。それを見極めるための判断材料として近年、X線CT検査技術を活用するケースが増えています。

文化財研究を根底から変える
非破壊検査の最新3Dテクノロジー

蘭渓道隆坐像の頭部。左からX線CT調査画像、修理後、修理前

一昨年から2年かけて修理が行われた蘭渓道隆坐像の頭部。修理前(右)は光沢のある漆に覆われていたが、X線CT調査を行い、漆の下層に健全な彫刻があることを確認(左)。表面の漆をはがしたところ、眉間や目尻、頬のシワが現れ、リアルな姿を取り戻した(中)

X線CT検査ではどのようなことがわかるのでしょうか。

X線による調査では平面画像しか得られませんが、CTスキャナーなら3D画像と断面の画像が得られます。像内の空洞部分の観察のほか、木をどう寄せ合わせたか、技法や構造までより詳細に知ることができるのです。

研究者から見て、X線CT検査が今後の文化財研究に与える可能性についてはいかがでしょう。

九州国立博物館が導入してから10年、京都国立博物館は3年、当館は2年、すでにX線CT調査を積極的に活用しています。しかし、まだ日が浅いので、これからもっとさまざまな専門家の参加によって、得られた画像から引き出す情報の量が増えていくと思います。たとえば樹種の判定、年輪年代学による伐採年代の推定などできるかもしれません。将来各県の博物館に導入されれば、研究は飛躍的に進むでしょう。メーカーが文化財調査に特化した有効な機能を開発するモチベーションにもなると思います。

Column

X線CTが文化財調査を変える

京都国立博物館 学芸部 アソシエイトフェロー 池田素子氏

非破壊・非接触で3D画像情報を取得

建長寺の蘭渓道隆坐像の修理は文化庁の指導のもと、当館の文化財保存修理所内で公益社団法人美術院によって行われました。その修理前調査に用いたのが、2014年に当館に導入されたX線CTでした。

X線CTは材質や密度によってX線の透過性が異なることなどを利用し、対象物を壊さずに内部の観察ができる技術として、医療・工業での活躍がよく知られています。レントゲンやX線検査といった単純なX線透視では、限定した方向からの2次元の透視像を得るにとどまるのに対し、X線CTでは、回転スキャンから再構成される断面像と三次元立体像が得られる点に大きな特長があります。このため、形状や構造、寸法、体積、材質など、対象物が内包するさまざまな情報を得ることができ、容易には展開できない対象物の多角的な検証が可能となりました。

例えば、蘭渓道隆坐像の調査ではX線CTによって、坐像の表面に複数回の塗り重ねがあること、表面に見えている亀裂は塗り重ねの部分で層状に生じていること、原状(オリジナル)部分は比較的健全な状態で保たれていることなどが分かりました。

そして、文化庁、美術院、建長寺はこの成果をもとに、下層の塗りむらを表出させることなく表層の漆のみを除去するという修理方針を決定し、調査で得られたデータは安全な修理の進行にも役立てられたと聞いています。

文化財の調査では調査のために穿孔や切断をすることはありませんし、移動や接触も極力控えるようにしています。しかし、文化財をよく知り、どう保存するかを決めようとするとき、表面に見えている情報だけで結論を出すのは難しいことです。そのため、X線CTは非破壊・非接触でさまざまな情報を同時に得られる手法として、文化財調査に積極的に活用され始めています。

Interview 2

蘭渓道隆坐像の秘密を見つけた東芝の非破壊検査技術

東芝ITコントロールシステム株式会社 取締役
検査・メカトロシステム事業部 事業部長 土屋均氏

重要な文化遺産を傷付けることなく

土屋均氏

今後の開発ポイントは「分解能向上、検出精度の向上とともに高速化」と土屋氏。製造ラインのスループットが向上し、量産検査が可能になれば、さまざまな製造分野で品質向上とともに安心・安全な製品開発に貢献できると語る。

文化財の非破壊検査を経験されて、率直な感想をお聞かせください。

産業用なら電子部品とか検査対象物がある程度絞られますが、文化財調査用となると米粒から勾玉(まがたま)、等身大の仏像まで幅広い対象の検査を1台の装置でこなす必要があります。また対象物が重要な文化遺産ですから、移動や検査中に傷付けるようなことがあってもいけない。装置の開発にはあらゆる要件を想定して慎重を期しました。

今回、蘭渓道隆坐像の非破壊検査で使用したX線CTスキャナーはどのような仕組みなのでしょうか。

対象像にX線を照射し、透過するX線を測定して内部の様子を画像化するという点では、通常のX線CTスキャナーと同じです。ただ、貴重な文化財が転倒したり、傷がついたりするのを防ぐために可動式のテーブルではなく、テーブルを固定し高精度を維持しながらX線源とX線スキャナーが上下動するようにしました。

さらにX線発生部には衝突検出センサーを設置しました。もしぶつかって破損しそうになると動作を自動的に停止。こうした数々の工夫により、大切な文化財を傷付けることなく安全に調査することが可能になりました。

5μmという高い分解能を実現

文化財調査用X線CTスキャナ

京都国立博物館に納入された文化財調査用X線CTスキャナ。対象物を載せた内部のテーブルは回転するものの上下移動はせず、X線撮像系が昇降して撮像の高さ位置を選択する。最高分解能は5マイクロメートル。米粒から等身大の仏像まで幅広い文化財を高精細に調査することができる。 独立行政法人 国立文化財機構 京都国立博物館 提供

精度など機能面の設定と、その狙いは。

この種の調査では、通常100μm(ミクロン)程度の分解能が主流なのですが、今回は京都国立博物館様からの要請もあり5μmという極めて高い分解能を実現しています。その結果、蘭渓道隆坐像の検査では木目や材質、薄い漆の層まではっきり確認することができ、使われた木材から顔料、技法、製造方法にいたるまできめの細かい分析が可能になりました。修復作業に向け、我々なりの貢献ができたと自負しています。

まさに御社の非破壊検査技術の高さの証明といえますね。これまでの実績についても教えてください。

東芝は、19世紀末のX線発見の直後からX線発生・応用技術の開発にいち早く着手し、産業界のあらゆる現場の検査ニーズに対応したX線CTスキャナーを提供してきました。小型から標準型、大型まで取りそろえた豊富なラインアップは業界随一です。

加えての強みは「高精度」。現在、当社製品の最高焦点サイズは0.25μmと世界最高レベルです。非接触で物の寸法が計れる「計測CT」には外国勢を含め各社力を入れていますが、当社ではこの分野で先行し、精度や寸法信頼性で世界ナンバーワンを目指したいと考えています。

高速化にも力を入れています。高速化のポイントはできるだけ小さな焦点から大きなX線を出すか、そのX線を効率よく画像にできるかがポイントです。

開発には東芝の総合力を発揮

スキャニングデータ画像

ダイカストなどの鋳物製品は鋳造時に空気が入り込んでボイド(空隙、気泡)が発生しやすい。スキャニングデータを処理し、その体積ごとに色分け表示する。

強みという点では、東芝グループの総合力も大きいですね。

X線CTスキャナーには、メカトロニクス技術、材料の技術、そして出てきたデータを再構成するソフトウェアの技術が求められます。どれ一つ欠けても製品として成り立ちません。当社では、ハードからソフトまでグループ各社のそれぞれ培った幅広い先端技術、システム技術を組み合わせることで、顧客のニーズによりきめ細かく対応したカスタマイズ製品を提供しています。

現状では、どのような業種で活用されているのでしょうか。

一番多いのが自動車関係です。車は不備があると人命に関わりますので、エンジンユニットやハンドル、ホイールなど部品内部に欠陥がないかをチェックします。搭載される電子回路基板や半導体部品なども回路結線やはんだ接合部に欠陥がないか、全数チェックが行われます。このほか小さいところでは樹脂やゴム製品、電池、大型の装置では鋳物やトラックのタイヤなどの不良箇所チェックに活用されています。小惑星探査機はやぶさが地球に持ち帰ったカプセルを開ける際も、X線CTスキャナーで事前に内部チェックを行い、どこに何があるのかを判断するために使われました。

X線CTスキャナーを含めたX線検査装置の将来像をどのように描かれていますか。

例えば、EV(電気自動車)の普及に伴って、リチウムイオン電池分野への需要拡大が期待されます。リチウムイオン電池は電極のズレ量が過多であったり、端子の接続が不十分であると不具合の原因につながるため、多くの企業では出荷する前に一つ一つの電池をX線で調査を行っています。包装された薬の有無や亀裂、異物混入などのチェック用に使いたいという問い合わせや、地質調査分析などの依頼も増えています。

上下水道や蓄電システムなど、社会インフラを手がける当社としては、「安全安心社会」を担保する技術としてX線検査装置が社会のあらゆるシーンで活用されることを願っています。

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