資産形成 “はじめて講座” 確定拠出年金アナリスト:大江加代氏

 2018年から始まった積み立て方式の少額投資非課税制度「つみたてNISA」。対象者が大きく広がり、月払い以外の払い込み方法も可能になるなど使い勝手が向上したiDeCo(個人型確定拠出年金)との併用など、資産形成を後押しする仕組みはさらに充実している。そんな公的な仕組みをどう使うか、どんなライフシーンに生かすか。より具体的な取り組み方を、確定拠出年金アナリストの大江加代氏に聞いた。 (本コンテンツは2018年6月14日付、日本経済新聞(朝刊)で広告特集として掲載したものです)

始めたいのに始められない
それならば考え方を変えてみる

老後資金は暮らしの選択肢のために

 ——少子高齢化が進むなか、「老後生活に向けた自助努力が当たり前の時代」といわれます。何となく不安は感じているんですが、老後の自分ってなかなか想像できなくて。

 大江 お金は自分が何かをしたいときに使うものです。想像もつかない将来のための資金づくりといわれても、ピンとこない方も多いかもしれません。けれど何かするため、暮らしを充実させるために必要なお金が毎月の収入でまかなえる範囲を超えてしまうなら、あらかじめまとまったお金をためておくことは必要ですよね。例えばクルマを買い替える、家を買うといった場合でも、まとまった資金があれば選択肢は広がりますから。

 ——確かに資金があれば少しグレードの高いクルマを選ぶことも、ぜいたくな間取りの家を選ぶこともできますね。

 大江 同じように、定年になった時にまとまったお金があれば住む場所、暮らし方など、選択肢が広がるのではないでしょうか。

 そう考えたときに必要になるのが投資の視点です。例えば1000万というお金をためようと思ったとき、月3万円で利回り3%の運用ができるとすると20年ほどかかります。それが預金だと、同じ金額、同じ期間でも720万円しかたまりません。

 ——720万円と1000万円だと、ずいぶんイメージが違いますね。差額の280万円で買えるものまで想像できそうです。

 大江 将来の楽しい選択肢を増やすのは今の自分です。定年時に必要な老後資金のひとつの目安と言われている3000万円。それも、会社の退職金が2000万円あればそれに加えて、1000万円を自分で用意できればクリアできます。

大江さん「引き落としや天引きで税制優遇制度を使うまずは、そこから始まります」インタビュアーの男性「『来月こそはがんばる』って言ってるだけの自分をなんとかしたい」

非課税の制度が資産形成の王道

 ——毎月一定のお金をどうやって残すかも難しそうです。何となく使ってしまって、「来月から頑張る」と、毎月考えている自分が想像できるのですが。

 大江 そうですね。お金があったら使ってしまう。目先のことに使うのは普通の感覚だと思います。ですからまずは給与天引きなど、定期的な引き落としの仕組みを使うことをお勧めします。例えば給与から3万円引かれると使える金額が減るので初めは痛みはあるのですが、人間はだんだん我慢、つまり心の痛みに鈍感になってきます。天引きされたお金は元々なかったものとして考えられるようになる傾向があるんです。

 ——なるほど。はじめからなかったものと考えられるなら、続けられそうです。ただ、投資となると不安があります。

 大江 投資をする時は、多くの人がいつ金融商品を買うかで悩みますよね。できれば安く買いたいし、高い時には買いたくない。そうすると今か、明日かとなかなか始められない。そんな状態になってしまうんです。天引きで毎月同じ金額であれば、安い時には多く買い、高い時には少し買うことになるので、買うタイミングで悩まなくてすみます。精神的なストレスは少なくなりますね。

 ——そのほかに何か注意点はありますか。

 大江 気にしなければいけないのは税金や手数料ですね。買った金融商品が将来、どのくらい上がるかは分かりませんが、手数料はあらかじめ分かります。運用の成果がどうであれ確実にマイナスになる要素ですから、そこをいかに少なくするかを考えることが結局は手取りを増やすことにつながります。NISAやiDeCoなど非課税の制度を使い、長期投資を行うというのが王道ではないでしょうか。

長期・積み立て・分散投資の効果(実績)

国内・先進国・新興国の株・債券に6分の1ずつ投資した場合、国内の株・債券に半分ずつ投資した場合、定期預金の場合の効果を表した折れ線グラフ。大江さん「積み立て・分散投資と長期保有がポイント!」

※各計数は、毎年同額を投資した場合の各年末時点での累積リターン。株式は、各国の代表的な株価指数を基に、市場規模などに応じ各国のウエートをかけたもの。債券は、各国の国債を基に、市場規模等に応じ各国のウエートをかけたもの。
出典:金融庁

非課税の制度が資産形成の王道

 ——今年始まったつみたてNISAや、iDeCoなど税制面で優遇される制度はいくつかありますが、必要資金別の選び方などはあるのでしょうか。

 大江 つみたてNISAは使うタイミング、つまり投資期間を選べるわけですが、数年後に確実に必要な資産を作るのではなく長期に資産を作るのが前提の制度設計になっています。大きな額で株式にも投資したい場合はNISAがあります。iDeCoは、老後資金を育てることを目的とした年金制度ですから、使い道は明確だと思います。

 今の時代は自分の老後資金は自分で用意する時代といわれています。子どもに負担させるという時代ではないんですよね。ですから教育のために資金を使い切ってしまって、「老後資金がありません」といった状況になるわけにはいきません。特に晩婚化が進んでいて、子どもの成人を定年後に迎えるといった場合も多くなっています。ですから子どもの教育資金も、自分の老後資金も、住宅の資金も、すべて並行して考えないといけないのが今の現役世代だと思います。「どれを」ではなく「どれも」と考える方がいいのかもしれませんね。

 ——色々な仕組みを使いながら、年齢やライフスタイルに合わせて配分を変えていくということもできますね。

 大江 そうです。長い目で考えられる資金に関しては、つみたてNISAやiDeCoを、それぞれに配分する資金を考えながら活用していくということですね。

 ——なるほど。まずは収入が3万円少なかったと考えることから始めて、税制優遇のある制度を使って長期の視点で積み立てていく。その配分は暮らしに合わせて変えていきながら、老後資金を含めた暮らしの選択肢を広げるための資産形成に取り組む——。まずは少額から始めてみたいと思います。

つみたてNISAとiDeCoの違い

つみたてNISAとiDeCo(※1)の違いについてまとめた表。つみたてNISAの位置付けは少額からの長期・積み立て・分散投資に特化した非課税制度であるのに対し、iDeCoは老後の資産形成のための年金制度。つみたてNISAの対象者は20歳以上の居住者だが、iDeCoは自営業者等、専業主婦(夫)等、会社員、公務員となっている。つみたてNISAの年間拠出額は40万円だが、iDeCoは自営業者等で81.6万円、専業主婦(夫)等で27.6万円、会社員で27.6万円(※2)、公務員で14.4万円となっている。非課税期間はつみたてNISAが20年、iDeCoは制限なし。つみたてNISAの投資可能商品は「長期の積み立て・分散投資に適した一定の投資信託で租特令・告示の要件を満たすもの」となっているが、iDeCoの投資可能商品は「投資信託・保険商品・預貯金など」となっている。つみたてNISAに払出し制限は無いが、iDeCoは原則60歳まで引き出し不可。つみたてNISAの税制上のメリットは「運用益が非課税」。一方iDeCoの税制上のメリットは「掛け金が全額所得控除、運用益が非課税、受給時の退職所得控除等」となっている。

※1……2017年1月より、企業年金のある企業にお勤めの方や専業主婦なども加入対象となり、基本的に20歳以上60歳未満の全ての方が加入できるようになった。
※2…企業年金のある企業のうち、企業型確定拠出年金のみを実施している場合は24万円、確定給付型年金を実施している場合は14.4万円となる。
出典:金融庁

▲ページTOPへ