[PROJECT vol.1] 「積み立てNISA」の口座開設 今年10月からスタート

 2017年度の税制改正大綱で積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の創設が盛り込まれた。口座開設は今年10月から開始予定で、実際の運用は来年1月にスタートする。家計の安定的な資産形成を支援する制度として期待される一方、現時点で対象となる投資信託の数が限られる課題もある。積み立てNISAの趣旨や対象商品の要件、制度普及に向けた金融庁の取り組みなどについて、内閣府の越智隆雄副大臣に話を聞いた。
(本コンテンツは2017年5月18日付、日本経済新聞(朝刊)で広告特集として掲載したものです)

少額からの積み立て・分散投資で
個人の安定的な資産形成を支援

「分かりやすさ」と「低コスト」 手数料に一定の制限

 ──まずは現行のNISAの現状と課題についてお聞きします。

越智隆雄氏・写真

内閣府金融担当副大臣

越智隆雄

 2014年4月に開始した現行のNISAは今年、4年目を迎えました。16年12月末の速報値では1069万口座が開設され、累積投資額は9兆円を超えるなど、着実に普及が進んでいます。

 その一方で、一度も買い付けが行われていない口座が全体の5割を占めています。金融庁が実施したアンケート調査によると、投資をしない理由に「まとまった資金がない」「知識がない」「損しそうで怖い」といった回答が多く寄せられました。投資は少額から可能で、積み立て・分散投資で下落リスクは抑制できるといった点は、家計にはまだ浸透していないことが明らかになりました。

 こうした課題を踏まえ、少額からの積み立て・分散投資による家計の安定的な資産形成を支援する手段として新たにスタートするのが積み立てNISAです。年間40万円までの投資信託による積み立て投資について、配当と譲渡所得が20年間非課税になります。今年10月から口座開設が可能になり、来年1月から実際に投資できるようになります。

 同制度は「貯蓄から資産形成へ」の流れをさらに後押しするものとして期待しており、金融庁としても制度の普及・浸透に努めていきます。

現行NISAと積み立てNISAの違い

 ──金融庁のワーキンググループ(WG)の報告書を踏まえて、積み立てNISAの対象となる投資信託の要件が示されました。この要件にはどのような狙いがありますか。

 対象になる投資信託は、少額からの積み立て・分散投資の促進による安定的な資産形成の支援という制度趣旨にふさわしいことが前提です。この観点から長期保有を念頭に、投資信託の中でも①信託契約期間が無期限または20年以上②毎月分配を行うものではない③一定の場合を除き、デリバティブ取引による運用を行わない④その他一定の事項──の4つの要件が平成29年度税制改正大綱において示されました。

 さらに今年3月に公布した金融庁の告示では、「その他一定の事項」の内容として投資初心者の利用にも適する観点から、対象商品では分かりやすさやコストの低さなどを重視し、インデックス型投信を対象商品の基本と位置付け、販売手数料・信託報酬などにも一定の制限を設けました。制度の趣旨を踏まえ、長期保有に耐えうる、積み立て・分散投資に適した投資信託が適切に組成・販売されることを期待しています。

積み立てNISAの投資対象の主な要件図・アクティブ運用投信はインデックス投信より要件が厳しく、対象ファンドが少ないです。

「売り手の論理」の投信から「買い手目線」へ変革が不可欠

 ──金融事業者の中には告示された要件が厳しすぎるとの指摘もあります。

 約5400本ある既存の株式投資信託にこの要件を当てはめると、積み立てNISAの対象となるものは約50本と全体の1%以下にとどまる結果になりました。これを受けて、一部に厳しすぎるとの声があることは認識しています。

 一方、米国では運用規模の大きな株式投資信託の上位10本のうち、8本がこの要件を満たす結果となりました。従って必ずしも告示で定めた要件が厳しすぎるわけではないと考えます。

 昨今の日本の投資信託の販売の現場では、「テーマ型アクティブ投信」や「毎月分配型投信」などが主流です。しかしテーマ型投信は、次々に登場する目新しいテーマの商品への乗り換えを推奨する回転売買に用いられることがあります。また毎月分配型投信は、長期保有のメリットである複利効果を得にくいという指摘があります。さらにはどちらも手数料が高くなりがちで、長期の資産形成に適しているとは言い難いのではないでしょうか。

 WG報告書も、こうした投資信託は「売り手」の論理で組成されてきた面が強く、今後の家計の安定的な資産形成を促進していくためには「買い手」、つまり顧客本位の目線に立ったものへと変えていく必要があると指摘しています。そこで積み立てNISAの発足が家計の資産形成に適した投資信託が普及・定着していく契機の一つになると考えられます。

個人の金融リテラシー高める、資産形成の好循環の実現へ

 ──積み立てNISAが定着するためには顧客本位の業務運営が欠かせません。

 金融庁は今年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」と原則の定着に向けた取り組みを公表しました。金融事業者はこの原則を踏まえ、顧客本位の業務運営を一層進めていくことが求められます。形式的な取り組みに止まることなく、業界内でより良い金融商品やサービスの提供を競い合うことで、当該原則が実質を伴う形で定着するのが望ましいと考えます。この観点から、金融庁は金融事業者の取り組みの「見える化」や、当局によるモニタリングなどの施策を進めていきます。

 ──利用する一般個人の、投資に関する知識やリテラシーを高める取り組みも必要です。

 その通りです。金融庁では「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」を設置。長期・積み立て・分散投資の促進や実践的な投資教育、情報提供などについて議論しています。

 また、個々の投資信託を個人が比較検討し、良質な商品を選択することが容易になるよう、商品比較情報等の提供のあり方について検討を行います。また、投資初心者など家計向けの実践的な投資教材を作成・活用するための取り組みも進めていきます。

 積み立てNISAをきっかけに資産形成に踏み出した個人が少しずつ経験を積んで投資に関するリテラシーを高め、様々な選択肢の中から自分に合った手法で長期投資を実践する──。そんな好循環が生まれることを期待しています。

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