【8】 エコプロダクツ展 積水化学グループエコプロダクツ展リポート

年末恒例のエコイベントとして定着している日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ展」(主催:(一社)産業環境管理協会、日本経済新聞社)。毎年出展している積水化学グループの今年のテーマは「積水化学が提案する“みらいTOWN”“住・社会インフラからエレクトロニクス・ITのすみずみまで”積水化学グループの環境貢献」だ。今回は、積水化学グループの環境技術と想いが凝縮した展示ブースを東京大学の松本真由美 客員准教授がリポートする。

  • 01.見どころリポート
  • 02.展示リポート
  • 03.来場者インタビュー

01.積水化学グループと来場者がともに創る2030年の“みらいTOWN”

12月12日から14日までの3日間、東京ビッグサイトで「エコプロダクツ2013」が開催された。毎年、小学生からビジネスマンまで多くの来場者でにぎわう同展示会の今年の動員数は約17万人。東5ホール・メインストリートに位置する積水化学グループのブースにも約6000人の来場者が訪れ、展示を熱心に見たり、説明員に質問したりする姿があちらこちらで見られた。
「積水化学が提案する“みらいTOWN”“住・社会インフラからエレクトロニクス・ITのすみずみまで”積水化学グループの環境貢献」を今年のテーマに掲げる積水化学グループ。ブースの一切を取り仕切っている主管部署の一人であるCSR部環境経営グループ三浦仁美氏に話を聞いた。

左:松本真由美氏、右:三浦仁美氏

松本:
今回の積水化学グループのブース全体のコンセプトはどのようなところにあるのでしょうか。
三浦:
積水化学グループは従来、エコプロダクツ展で製品技術を通した環境貢献をPRしてきましたが、今年度は、積水化学グループの“環境経営長期ビジョン2030”を見直したこともあり、お客様とだけでなく社内でも、長期にわたる環境への取り組みをきちんと共有したいという想いを強く込めています。
三浦:
特に、エコプロダクツ展の場において展示することで、これから世に出す製品や技術・サービスを日夜考えている研究開発・営業販売の社員が、お客様の反応やコメントを直接聞いて業務にフィードバックし、現在だけでなく未来の街にも環境貢献し、役立っていく意義を感じることで、社内からの環境に貢献するパワーを高めたいと考えました。
松本:
積水化学グループは事業も多岐にわたるので、苦労なさった点も多いのではないですか?
三浦:
私たちは3つのカンパニーと1つのコーポレートからなるグループです。それぞれが住・社会インフラからエレクトロニクス・IT分野に関わる製品、技術サービスを提供しておりますが、おのおのの製品・事業が協力しあって総合力として結集し、環境に貢献していく姿をどう見せるか、という点で苦労しました。今回は、大きなテーマとして“SEKISUIみらいTOWN”を掲げています。みらいの街や社会をどうつくっていくか、そこに積水化学グループの製品や技術がどう関わっていけるかを常に考えてきましたが、エコプロダクツ展では来場するお客様と一緒にみらいの街を考えていくことができればと思っています。
松本:
一緒に考えるという点で、今回は来場者の方々の意見を吸い上げるユニークなアンケートがあると伺っています。
三浦:
来場者の方々には「SEKISUI MIRAI SCOOP」というアンケートに新聞記者になりきってご記入いただきます。
松本:
新聞記者ですか!?

来場者が記入したアンケートはその場で新聞記事風に加工され、タブレット端末で表示される

三浦:
みらいに向けた私たちの製品・技術について、気づいた点や驚いた点、アイデアなどを記入していただいたアンケートシートをほぼリアルタイムで記事に仕立て、会場に設置しているタブレット端末に映し出します。
松本:
ステキな感想がたくさん集まるといいですね。

2030年のみらいを描く「 SEKISUIみらいTOWN」に積水化学グループの環境製品・技術が集結

今回のエコプロダクツ展に関して、企画から運営事務局までを一手に担う三浦氏

108平方mのブース内には、“みらいTOWNコーナー”を中心に、エネルギーに貢献する製品技術、資源・水に貢献する製品技術、自然に学ぶものづくり支援など積水化学グループの環境貢献製品や技術が所狭しと並ぶ。
レイアウトは以下のとおり。ここでは「SEKISUIみらいTOWN」のブース内で掲示されていた展示パネルが見られるので、見逃した方やもう一度見てみたい方はぜひご覧いただきたい。

ブースレイアウト
SEKISUIみらいTOWN ブースレイアウト
下水熱利用システム
地中熱利用システム
フィルム型リチウムイオン電池
フィルム型太陽電池
TEMS

※三角の矢印のついたボタンをクリックすると展示パネルが別ウインドウで表示されます

02.大容量フィルム型リチウムイオン電池とフィルム型色素増感太陽電池に大きな反響

らいTOWNコーナーの中でも、開催直前にプレスリリースが発表された「大容量フィルム型リチウムイオン電池」と「フィルム型色素増感太陽電池」の反響が特に大きかった。ここではその2つをピックアップ。開発を担当したR&Dセンター 開発推進センター 戦略企画グループ 加藤清一グループ長に、製品の特性や開発秘話を聞いた。

容量3倍・高安全性・生産速度10倍を同時に実現した世界トップレベルの大容量フィルム型リチウムイオン電池

柔軟なフィルムタイプの、画期的な「大容量フィルム型リチウムイオン電池」

「大容量フィルム型リチウムイオン電池」には説明を聞きたい来場者が多く詰めかけた

松本:
今回発表されたフィルム型のリチウムイオン電池は、電池の概念を覆す開発ですね。
加藤:
この電池は、高機能フィルム化がキーワードの一つです。我々はもともと様々な分野でフィルム製品を市場に送り出しているので、その技術を応用して、蓄電池のもつ課題を克服するようなフィルム型リチウムイオン電池の開発に取り組んできました。
松本:
克服した課題というのは、発表にもあった、大容量、高安全性、軽量化などですね。
加藤:
そのとおりです。フィルム型ですから、非常に薄い形状をしていますが、容量は従来の3倍、生産速度も10倍を実現しています。何より蓄電池=四角や円筒のように決まった形をしていたため、商品が電池に合わせざるを得なかったのですが、フィルム化に成功したことで電池のほうが商品に合わせることができると考えています。また大面積化も容易です。
松本:
ある意味、非常にイノベーティブな開発だと思いますが、技術的なカギはどのようなところにあるのでしょうか。
加藤:
通常は真空で電解液を注入するプロセスが必要ですが、このフィルム型の場合は、ゲルタイプ電解質として新規有機ポリマー電解質材料を連続塗工で塗りつけています。そのため高速での生産も可能になりました。
松本:
この大容量フィルム型リチウムイオン電池は、今後どのような場所で活躍するのでしょう。
加藤:
性能やポテンシャルとしては従来通り自動車などに利用できるほか、家電、定置用として住宅にもいろいろと活用できる、夢のふくらむ開発商品だと信じています。また、今回は来場者の方々からも意見をもらって参考にさせていただくつもりです。

容量3倍・高安全性・生産速度10倍を同時に実現した世界トップレベルの大容量フィルム型リチウムイオン電池

松本:
実用化はいつごろのご予定ですか?
加藤:
2015年には競争力のある価格で実用化できるはずです。
松本:
それは期待できますね!

世界初!室温で製造できるフィルム型色素増感太陽電池

松本:
フィルム型リチウムイオン電池と並んで、同じくフィルム型の色素増感太陽電池も展示されています。
屋根に乗っているあの太陽電池とはイメージが全く違いますね。
加藤:
屋根だけでなく、いつでもどこでも使える太陽電池を目指して、実用化に向けた第一弾試作として開発したものです。フィルム型リチウムイオン電池と同じようにフィルム化技術にこだわりました。太陽電池としての特長は、大面積化が可能な点と、照明などの弱い光でも発電できる点、そして、常温で生産ができるという点です。

積水化学工業R&Dセンターで開発に携わる加藤清一氏

松本:
生産工程が通常のガラスタイプの太陽電池とは違うのですね。
加藤:
従来の色素増感太陽電池は酸化チタンなどの酸化物で電極をつくるため、セラミックのように焼いて製造しています。しかし、フィルムは焼くことができませんから、常温でできるエアロゾルデポジション法という、酸化物の粉をフィルムに吹き付けて電極をつくる技術を使いました。この基礎技術は、産業技術総合研究所のもので、今回応用しております。
松本:
常温での製造は熱を発しないということでLCA(ライフサイクルアセスメント)でも環境負荷が小さいですし、なによりローコストでの製造が可能になるのではないですか?
加藤:
そうですね。さらに、通常の太陽電池はクリーンルームで製造することが多いのですが、このフィルム型の場合は不要です。ロール・ツー・ロールで生産施設の大幅な省スペース化もできますから、実用化の際にはかなり低価格のフィルム型太陽電池が誕生するはずです。
松本:
実用化は、フィルム型リチウムイオン電池と同じ2015年頃でしょうか。
加藤:
それを目指してがんばっています。今回のメイン展示“SEKISUIみらいTOWN”では2030年の街をイメージして積水化学の製品・技術を紹介していますが、その頃にはフィルム型リチウムイオン電池もフィルム型色素増感太陽電池も、街や暮らしに自然に溶け込み、気づかないうちに環境貢献しているような存在になれるとうれしいです。

“いつでもどこでも太陽電池”をコンセプトに試作された「フィルム型色素増感太陽電池」。光を効率的に取り入れるナノ構造制御技術を採用し、発電効率は8.0%を誇る

03.エコプロ来場者の幅広い層から注目を集める積水化学グループ

12日から14日までの3日間で積水化学グループのブースを訪れた来場者数は、のべ6000人超。お目当ての展示物に直行する人、全体をくまなく見て回る人、説明員の話にじっくり耳を傾ける人など、それぞれ思い思いの楽しみ方でブース内をめぐっている様子が見られた。
そんな来場者に、松本准教授が突撃インタビュー。来場の主な目的や、印象的な展示物、感想などを聞いた。

エコプロ来場者の幅広い層から注目を集める積水化学グループ

エコプロ来場者の幅広い層から注目を集める積水化学グループ

来場者の中には大学院生の姿も。既に決まっている就職先で、今後活かせる知識や技術を勉強しに来たとのことだ。

太陽熱や太陽電池などエネルギー関連に興味があるという女性来場者も。

最初に声をかけたのは、フィルム型リチウムイオン電池(写真①)のプレスリリースを見て訪れた、電機メーカー勤務の40代男性。新製品開発のためのアイデアを仕入れに来たという。
「従来の3倍の電力密度ということで、どのようなものか見てみたかったので積水化学のブースに直行しました。3倍も容量が増えているのに曲がるというのはすごいですね。ウェアラブル機器などに有効だと思いました。2015年に販売予定とのことでしたので、前向きに購入する方向で検討してみます」(電機メーカー勤務 40代 男性 )。

写真①プレスリリースの反響が大きく、フィルム型リチウムイオン電池とフィルム型色素増感太陽電池の前には絶えず人だかりが

写真②自動車用遮熱中間膜の展示。遮熱中間膜は熱を遮るため、同じ照明を当てても、遮熱処理されたガラスとそうではないガラスの下では温度が全く違う

写真③地中熱利用と並んで注目を集めている下水熱利用システム。積水化学グループは、老朽化した下水管を改築・更新する管路更生技術を使って、管内を流れる未処理下水から熱を回収・利用する、国内初のシステムを開発した

エコプロダクツ展には毎年来ているという、コンピューター会社事務の40代女性は、エネルギー関係の勉強会で太陽熱や太陽電池などに興味をもったといい、今回もエネルギー関係を中心に見て回ったようだ。
「普段はエコバッグを使ったり、節水したりといった程度のエコアクションしかできていませんが、SEKISUIみらいTOWNのように、街全体が環境負荷を下げる方向に進んでいくのは、すばらしいことだと感じました。個人的に印象に残ったのは、自動車用の遮熱中間膜(写真②)です。技術の進歩はすごいですね」(コンピューター会社事務 40代 女性)。

ゼネコンの環境開発部門に勤務する40代男性は、建設業の延長線上で使える情報を探しに来たといい、地下空間でのクロスウェーブ技術などに加え、地中熱利用や下水熱利用(写真③)などの省エネ建築技術にも興味があるとのことだ。
「全体的に、建設業にかかわる省エネやリニューアルに関するものを見にきました。SEKISUIみらいTOWNを拝見しましたが、再生可能エネルギーを使うシステムと省エネシステムがうまく融合する社会に移行していくなか、国交省からの要請もあり、市場規模はますます大きくなっていくと見ています。私も地中熱などの技術を顧客に提案していきたいと思います」(建設会社環境開発部門勤務 40代 男性)。

今後への大きな手応えをつかんだ大盛況の3日間

今後への大きな手応えをつかんだ大盛況の3日間

環境意識の高い来場者が多数訪れるエコプロダクツ展では、大手企業から中小企業、官公庁、大学、NPOまでさまざまな団体が多様な角度から「環境」を語りかけ、それぞれに実りある3日間を終える。積水化学グループでは、現在および未来の環境貢献製品・技術を紹介、多くの来場者とのコミュニケーションが加わり、スタッフ一同、確かな手ごたえを感じたようだ。今後の「SEKISUIみらいTOWN」づくりもさらに力強い歩みへと成長していくに違いない。

  • SEKISUI積水化学グループ環境への取り組み詳細はコチラ
  • 「世界こどもエコサミット2012」リポート

東京大学教養学部客員准教授 松本 真由美

熊本県出身。上智大学外国語学部卒業。東京大学教養学部付属教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門客員准教授。専門は地球環境とエネルギー問題に関する環境/科学技術コミュニケーション。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事。