挑戦者の原動力 スカイライン特別企画

指揮者 西本 智実さん 空間に広がる「フェルマータ」に込めた思い

 指揮者の西本智実さんは、名門ロシア国立交響楽団および国立歌劇場で指揮者ポストを外国人で初めて歴任、世界約30カ国から指揮者として招請されている。一方で2007年にはダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」のヤンググローバルリーダーに選出されるなど、世界を舞台に活動の場を広げる西本さんにモチベーションや仕事のスタンスなどを聞いた。

すべてが根っこでつながっている文化は「接ぎ木」のようなもの

 ダボス会議に招かれたことは、私の指揮者としての活動に大きな影響を与えました。フォーラムでは多種多彩な分野の世界のトップリーダーたちが、世界で起こっているさまざまな問題について意見を出し合います。専門領域やバックグラウンドが違っても、一人ひとりの意見や考え方がつながっていることを認識し感激しました。歴史の流れも感じられました。現代社会で起こっている事象も、なぜそうなったのか突き詰めようとすると、人間が積み重ねてきた悠久の歴史に自然と踏み込まざるをえません。

 私の専門領域はクラシック音楽ですが、音楽に限らず美術や建築なども時代背景がすべてつながって今がある。文化とは「接ぎ木」のようなものだと思います。木の枝を接ぎ新しい枝が伸び、新しい花が咲き、また新しい枝が伸び、花が咲き――とつながっていく。地上に咲いている花だけを見ていてはいけません。地下の根っこはずっと広がっていて、いろいろなところにつながっているのです。コンサート・オペラ・バレエの指揮だけでなく、新しい舞台芸術の創造へと活動の場を広げているのは、特別に新しいことに挑戦しているのではなく、つながってきた大きなうねりの中で脈々と接ぎ木されているように感じています。お客さまが劇場から帰った時も、生活や人生とつながったリアリティーあるものとして舞台を届けたいですね。

ダボス会議やバチカンの経験が自分の表現を見つめる機会に

 2013年からはバチカン音楽祭にも毎年招請していただくようになり、音楽の科学性を再認識しました。カトリックの儀式と音楽は密接で、司祭が述べる言葉は音楽でもあります。日本の「わらべ歌」を思い出してみてください。言葉だけでは暗記できないフレーズも、音楽にするとメロディーがつくことで自分の中にすっと入ってきますね。また音楽にすると、聞き手と語り手がメッセージを共有しやすくなるのです。

 バチカンは、さまざまな学問や芸術の発展に大きく関わってきました。教会から注文を受けた芸術家たちは、依頼主の想像を超えてリアリティーのある創作物をどんどん生み出していった。例えば、大理石の彫像で石が透けて見えるように彫る技術など、なぜそれほど表現技術が発展していったのか、背景にはどんな事情があるのか――。

 ダボス会議やバチカン音楽祭への招請は、音楽という枠を超え、さまざまな方たちとさまざまな場所から、さまざまな物事に対する見方をさせていただく、またとない機会を与えてくださいました。自分の専門領域である音楽を使い「アジアは今後どこへ向かう」「世界は今こう動いている」ことを表現しようと、改めて決意することができたのです。

対応力には経験値も必要ですが、補うのは徹底したリサーチと準備です

「ヨーロッパの古いホールの中には“どうやって作ったのだろう”というほど素晴らしい音響のものもあります。でもそうしたホールは天候や季節に左右されやすい。また、日本の劇場の舞台はフラットですが、欧米の劇場は『八百屋舞台』といって斜めになっている舞台も多い。そうした時に指揮者の対応力も試されます。あらかじめリサーチして、自分で舞台を歩いて検証する。対応力には経験値も必要ですが、補うのは徹底したリサーチと準備です」(西本さん)

西本さんを支えるもの 木製の指揮棒

「カーボンやグラスファイバーなど指揮棒の素材はいろいろですが、そうした素材は手から飛ばしてしまったとき危険なこともあります。私の場合は本体が木製で持ち手部分がコルクのものを愛用しています。1本ずつ自分で切って長さを調整し、常に2本持って会場に入ります」(西本さん)

指揮者は一人では成り立たない仲間に恵まれ情熱で走ってきた

 指揮者は一人では成り立たない仕事です。オーケストラは多いときで100人、歌手やダンサー、合唱が入ると500人や600人にもなる舞台もあります。例えるならコンサートの指揮者はいわば短期のプロジェクトリーダー、オーケストラの音楽監督や舞台の芸術監督の場合はもっと中長期的なオーガナイザーといえるでしょう。招かれてそこに立つ時は、一人ひとりと話す機会もなく限られた時間内で仕上げていきます。特に若い時は葛藤もあり、「無我夢中」と「五里霧中」の狭間にいるようでした。良き仲間がいてくれたことと、私の中に情熱があったことで、この道を走ってこられたように感じています。自己の価値観でリードしていくことに怖さも感じるからこそ試行錯誤しながら決断し、覚悟を決めて指揮台に立ちます。結局は自分で培ってきたこと以上のものは出せないのですから。

 自分の道は自分にしかつくれないし、同じことは誰にもできません。尊敬する芸術家はいますが、モノマネでは意味がない。自分だけの方法を見つけることはとても大切です。悩み苦しんだりする葛藤から生まれてくるエネルギーが創造へつながっていることがとても多いように感じています。

まだまだ固まりたくない「カリフォルニアロール」のような音楽も

 「フェルマータ」という音楽記号があります。「音符や休譜を時間的に伸ばす」とみなさんも授業で習ったと思いますが、実はとても素晴らしい意味を持っています。空間のどこに向かって伸ばすか示されていないので、逆に自由に空間表現ができます。空間を感じれば時間軸も超越していきます。

 私も「フェルマータ」のように、ある面だけではなく、空間を常に感じられる思考を持ちたいと思っています。また経験も関係なく、毎回新しい作品に取り組む気持ちで舞台に臨みたい。これまで培ってきたことをその通りにやるのか、今の時代に合わせた新しい手法でアプローチするのか、方法論を模索することも大事です。そうした中から、新しい接ぎ木の一つに私もなれればと。こだわりを持ちながら、凝り固まらず挑戦を続けていきたいです。

 今後挑戦したいことの一つは、音楽と科学の関係性を体感していただけるようなコンサートです。小さめのホールで大編成のオーケストラ演奏をして、お客さまに音のシャワーを浴びてもらう。脳科学者の中野信子さんの解説で、音楽で心が揺れること、1音変えるだけで揺れなくなることなどを科学的に検証しながら実演を行います。音楽という一つの入口を提示しながら、さまざまな入口をつくり出したいと思っています。二つ目は、能や歌舞伎ではない、食べ物で言えば「カリフォルニアロール」のような、日本の楽器の音を西洋楽器で表現し、アジアの観念をより広げたい。次世代の芸術における可能性の広がりは、きっと素晴らしいものになると確信しています。

指揮者

にしもと・ともみ/イルミナート芸術監督兼首席指揮者等。名門ロシア国立交響楽団および国立歌劇場で指揮者ポストを外国人で初めて歴任、約30カ国から指揮者として招請。2013年からバチカン国際音楽祭に毎年招請、14年バチカンの音楽財団から「名誉賞」が最年少で授与。15年エルマウ・16年伊勢志摩G7サミットに向け日本政府が海外へ日本国を広報するテレビCMおよび日本国政府公式英文広報誌に国際的に活躍している日本人として起用。ハーバード大学院に奨学金研修派遣され修了。8/22 芸術監督・指揮 西本智実/イルミナートフィル&イルミナートバレエの『ロミオとジュリエット』全二幕:字幕付き(新国立劇場オペラパレス)公演予定。

指揮者

column

挑戦するプレミアムセダン

常に挑戦する魂を失うことなく、時代の最先端を走り続ける日産自動車のプレミアムセダン。クルマ本来の最高のパフォーマンス、最高の走行性能にこだわり続けてきたからこそ、あえてラグジュアリーではなくプレミアムと呼ぶにふさわしいクルマたち。輝かしい歴史とDNAを受け継ぎ、新たな未来を拓(ひら)くその魅力に迫る。

スカイライン

進化の結晶が、いまここに。

ドライブが趣味と話す西本さんは、クルマとオーケストラは似ていると言う。「大きさや車種のほか、小回りが利く、反応がいいなどクルマにはさまざまな個性があり、“ヨーロッパの細い石畳の路地を走る時にはこれが便利”といった選択肢も幅広い。一方のオーケストラも、ホールのサイズや作品によって人員を最小限でいくのか、最大限に生かすのかなどが魅力。だからこそクルマ好きな人は、オーケストラも好きだと思います」(西本さん)
60年にわたり日本を代表する名モデルを生み出し続けてきたスカイライン。その代名詞である俊敏なレスポンス、最速を目指すハイブリッド、次世代ターボ、高揚感あるデザイン、最先端の自動運転化技術(全方位運転支援システムなど)、その挑戦の魂と技術の結晶は、さらに多くの人々の多彩なニーズをも満足させるものとなっている。

スカイライン オフィシャルサイトへ

スカイライン

フーガ

プレミアムセダンの頂点を
革新し続けるFUGA

セドリック、グロリアの系譜を繋ぎ、日本のプレミアムセダンの頂点から、世界の頂点へと革新の道を歩み続けるフーガ。パワフル&ハイレスポンスな走行性能と優れた環境性能を両立する、1モーター2クラッチ方式の「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」を採用した独自のハイブリッドシステムなど。その挑戦の全ては、人生を革新し続け、真の豊かさの価値を知るオーナーのために。

フーガ オフィシャルサイトへ

フーガ

Go to INDEX