山脇隆司
1961年生まれ。大阪府出身。立正大学経営学部卒業後、日米の事務用品メーカーなどで営業、マーケティングマネージャーを経て、1996年エルドン・ラバーメイドジャパン株式会社退職後、米国フェローズインクの日本法人フェローズジャパン株式会社を設立、以降21年間代表取締役社長に就任、現在に至る。文具・事務用品業界に34年携わる。
http://www.fellowes.co.jp/

INTERVIEW

安全な道を行く人生もありですが、時にはリスクを冒さないと状況も自分自身も変わらないと私は思います。私は怠け者なので、平たんな道を歩いていてもなかなか本気になれないんですよね。崖っぷちまで追い詰められて、片足が外れたぐらいからやっとエンジンが掛かるタイプ。だから常に何かに本気で向き合って生きていきたいですね。

幼少期の海外生活で会得したもの

山脇隆司

父が大手商社に勤めていたため転勤が多く、子供の頃は何度も引っ越しました。中でも、5歳頃から数年イギリスで過ごしたことは、私の人格形成に大きな影響を及ぼしたと思います。日本人どころかアジア人もほとんどいない中、地元の幼稚園や小学校に通いました。周囲には奇異の目で見られ、言葉の壁や肌の色の違いも感じましたし、つらい思いをしたこともありました。でも一人で楽しめるテレビゲームのような娯楽もない時代でしたから、仲間がいないと遊べないんです。自分から輪の中に入っていくしかなくて、子供ながらに工夫を凝らしました。おかげでコミュニケーションスキルはずいぶん養われましたね。英語も大好きになりました。いろんな国の人とコミュニケーションを取ることが今でも楽しみですし、私の強みにもなっています。

大学を卒業すると日本の文房具メーカーに就職しました。若いうちに多くの経験を積みたかったので、修行のようなつもりでしたね。せっかく入社したのだから、会社のためにできることをやりたいと思っていました。それは自分のためでもあるからです。「今まではこのやり方だから」と漫然と業務をこなすのではなく、できていない部分や改善の余地がある部分を新しく発掘していくことを心掛けました。それが必ずしも成果につながるとは限らないのですが、まずは試して答えを出すことが大事だと思っていました。ここでは本当に先輩や上司に恵まれました。いつも私の考えを尊重し、フォローしてくださったのでありがたかったですね。時に若さゆえに暴走する私のために、上司が頭を下げて回っていることを後で知らされたこともありました。

その後、外資系のオフィス用品のメーカーに転職しました。日本でも順調に売り上げを伸ばしていたのですが、米国本社が海外事業をすべて閉鎖することを決め、私は日本法人の撤退にかかわりました。フェローズと出会ったのはその後のことです。日本進出にあたり、会社を立ち上げてほしいとオファーを頂いたのです。当時35歳の私にそんな大役が務まるだろうかと悩みましたが、認めてもらえたことがうれしくて引き受ける決意をしました。

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競争相手は他社よりも自分自身

私たちが他の事務機・事務用品メーカーと違うのは、自社で商品開発しているところではないでしょうか。「こういうものをつくれば売れる」という考えではなく、ユーザーの「こうであればいいな」を大事にしています。ユーザーのニーズにどう応えていくか。そこを追求するのが私たちメーカーの務めだと思っています。競争相手は他社ではなく、私たち自身なんですよね。ニーズは時代と共に変わっていきます。グローバルに展開できる製品も必要ですが、これからも成長を続けていくためにはローカライゼーションも重視しなくてはなりません。外資の良さを大事にしながら、日本市場にフィットした経営や商品開発を加速していきたいですね。

昨今、「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになりました。今の若い世代は、出世よりも働く環境や健康を重視する傾向が強く、職場環境は今後より大きなウエートを占めるでしょう。例えば最近、高さを調整することで立っても座っても作業ができる昇降式デスクを導入するオフィスが増えています。従来、日本人にとってオフィスワークは座ってするのが当たり前でしたが、自由自在に体勢を変えられることで仕事の効率向上や身体の負担軽減が期待できる、こうした製品が浸透し始めているのです。私たちも、自社開発の昇降式デスクを社内で実際に使いながら日々アイデアを出し合っています。良い人材が集まるような職場環境づくりに私たちの製品で貢献していきたいですね。

これからは、個々の製品を売り込むよりも、オフィス全体のソリューションを提供する時代です。気がつけばオフィスの至るところにフェローズの製品がある、そんなブランドを築き上げてユーザーの信頼を高めていけたらと思います。日本法人を立ち上げて20年になりました。よく「成功したね」と言っていただきますが、自分ではいまだによく分からないですね。成功か失敗かではなく、いかに前に進んでいけるかが大事なのかもしれません。今の立場から退いた時に、自分が積み上げてきたものがどう見えるか、でしょう。社員にはよく話すのですが、チャンスは誰にでも平等に訪れます。そのチャンスに気づき、つかむことができるかどうかは本人次第だと思います。

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