宇田川宏孝
1958年生まれ、東京都出身。84年、北海道大学歯学部を卒業後、東京都千代田区の木本歯科勤務。87年、宇田川歯科医院開設。2012年医療法人社団スマイルプラス宇田川歯科医院設立。
http://www.udagawa-dental.com/

INTERVIEW

宇田川歯科医院はお年寄りから子供まで幅広く治療を行い、予防歯科については日本でも早くから取り入れた先進医院です。専門とするインプラント以外にも、審美歯科、矯正歯科、口腔外科などマルチに対応をしており、若手歯科医師の養成にも力を入れています。若者に伝えたいことは「信念を持ち、自分の存在意義を問いながら、信じた道で目的地に向かいチャレンジを続けること」。年を重ねるごとに失敗による挫折は大きくなりますが、それも経験値になります。乗り越えられる自分を信じてあげることが大切です。自分の道を歩めることに感謝の気持ちをもち、歩みつづけてほしいと思っています。

自分の信念を重ね、開業へ。

宇田川宏孝

幼い頃は4人兄弟の3番目で、人を集めて遊ぶことが大好きな少年でした。医者の家系ではなかったのですが、小学生の時に海外ドラマ「ベン・ケーシー」を見て医者に憧れるようになりました。幼少期から歯が悪く、毎週のように歯科に通っていたことから歯科医というものに親しみがあり、手先も器用でしたので、自然と歯学部を目指していました。几帳面で真面目な性格が功を奏し、順調に大学に進学。卒業後は研究職の世界にも魅力はあったのですが、人と会話することが好きだったことから、患者に人として寄り添う「医療人」になりたいという思いを持ち、開業医の木本先生に師事。木本先生には「医療人とは何か」という基本理念を教えていただきました。医学というのはあくまでも学問であり、私は研究者ではないわけです。社会の中でこの知識や技術をどう生かすかを常に考える医療人になることが求められていました。

当時は、現代のような研修医制度はなかったので、初出勤当日に10名の患者を診ることになりました。ベテランの衛生士たちにサポートいただき、無事治療を終えた時は、衛生士とのパートナーシップによって成り立つ歯科医の治療というものを実感した瞬間でした。そこからは毎日が「医療人としてあるべき姿」を教えられることの連続。例えば、道具の置き方ひとつとっても、患者の気持ちを察することが大切。患者が少しでも恐怖心を持たぬよう、尖ったものは下向きに置く、ということを教えられました。同様に、血のついたガーゼを見えるところに置かないというのも、患者の気持ちを考えてのこと。医師にとって常識である風景や物事も、患者にとっては非常識なことがある、という姿勢を教えていただきました。この細やかな教えは、私も後進の者たちに継承しつづけています。

3年後に退職を決め、自分の診療所を持つことになります。これまで移転を重ねながら、32年目になる今日まで一歩一歩理想の医院の形へと近づけてきました。当院の特徴は、ゾーン分けをしていることです。これも患者の気持ちを尊重していることの一つ。歯を削るような治療を行うのはCureゾーン。定期検診やホワイトニングなどはCareゾーン。そして最後に作ったのが、1室で受付から、ケア、治療まで一通り行い、くつろげる環境でコンサルテーションを提供するNext Stageゾーンです。整った環境の中で、総合診療医(General Practitioner)としてフルラインナップの診療科目を、専門医に匹敵する技術レベルで治療を行いたいと思っています。

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人として、患者の幸せを考える。

歯科医として最も大切にしている姿勢は「患者本位であるべき」ということです。昔は、病気を発見したら医者が治療法を決めて進めていましたが、いまは患者が自分で選ぶ時代です。「インフォームド・コンセント」から、「インフォームド・チョイス」へと変わってきています。患者の幸せが目的ですから、当院では早くからこの方針を取り入れていました。もうひとつ当院でこだわっていることは「感染防御」のシステムです。感染と聞くと、インフルエンザなどを思い浮かべるかもしれませんが、実は虫歯や歯周病も感染症なのです。医療人と患者の間、そして患者と患者の間で感染を阻止するためには、滅菌と消毒を徹底的に行うことが求められます。その専門機材や専門スタッフを導入したり、使い捨て用品を取り入れるには、莫大な費用がかかります。その分を医療費に追加することももちろんできませんし、経営者目線でいえば不採算なものでしかありません。法的チェック制度もないため、医師の良心に委ねられており、きちんと対応できてない医院も多いのが、日本の抱える課題と言えます。

また、変わりゆく時代の中で、今後を支える若手医師の養成も使命であると考え「宇田川道場」という養成講座を開いています。道場とつけた理由は、技術や知識の習得に止まらず、人としてのあり方を見つける場所であってほしいという思い。患者の人生の歩みに合わせ、長く付き合いを続ける歯科医にとって、人間性はとても重要です。道場訓は「目的を持て。信念を持て。感謝せよ。選択せよ。行動せよ。」の5つ。私自身が人生の目的とはなんだろうとふと考えた時、これまでなんとなく生きてきてしまったことに気づかされたことがこの道場訓の始まりです。自分が生まれながらにして、どんな使命を持っているのかという意識を持てば、自分の立ち位置が見え、その先の目的地が見えてきます。目的地までの原動力は信念。その道を選んだ自分を信じながら、周りへの感謝の気持ちを持てば、過去を断ち切り前向きになれます。そして、限られた人生の中で、『やりたいこと・やらねばならないこと・やれること』と『やらないこと』をきちんと選択し、全身全霊で行動すれば、本質のある人間になることができます。どんなに時代が変わっても、本質が確固たるものであれば、ブレずに突き進むことができるのです。

高齢化社会が進む今後は、地域で医療をネットワーク化し、その地域に暮らす人を総合的に支える仕組みを作らなくてはなりません。若手医師が技術から人間性までを学べる懐の深い社会と、患者にとって暮らしやすい優しい社会の双方を作るために、チャレンジし続けることが、私のこれからの使命だと思っています。

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