戸田拓夫
1956年生まれ。広島県出身。80年、早稲田大学を中退後キャステム(旧キングインベスト)に入社。95年に日本折り紙ヒコーキ協会設立。2007年、キャステムグループ代表者・最高責任者に就任。09年に紙飛行機の滞空時間でギネス記録を更新、翌年には自身の記録をさらに上回る記録を樹立。
http://www.castem.co.jp/

INTERVIEW

どの企業でも、新規事業のプロジェクトチームに社長が顔を出すことはめったにないと思います。責任者に進捗状況を確認するだけではないでしょうか。でも、夜中の何時であろうと社長が顔を出して社員の労をねぎらわないとダメだと私は思います。社長も現場で状況を把握すべきです。そして、最近は遅くまで働くとすぐ「ブラック」などと言われてしまいますが、時間を忘れて何かをする情熱こそものづくりの原点です。それがないと世界で戦えないですよ。

不良品の山を築きながら突っ走る

戸田拓夫

実家では、父の代から部品工場を営んでいました。私は大学時代に体調を崩して泣く泣く中退し、実家の工場に入ったんです。当時の職場環境は最悪でした。従業員たちは自分勝手に行動し、 製品の質も悪い上に納期も守りません。しまいには技術部長や工場長が社外に工場を作り、従業員を引き連れて出て行ってしまったんです。人がいなくなった工場で、さびついた設備をきれいに磨き上げてゼロからスタートしました。徐々に人が定着するようになると、次は技術力向上に注力しました。競合他社の優秀な技術者の自宅に押しかけて教えを請うたこともあります。技術力を追求したことで、お客様の信頼も徐々に高まっていきました。

うちは不良品率が非常に高いんです。でも、そこが強みなのです。100個中99個も不良品になってしまうような厄介な仕事を引き受けているわけですから。他社ができないことをやって、高い価値を生み出すのが私たちの持ち味だと思っています。最近は、海外に拠点を増やし、医療機器の部品などを手掛けることも増えてきました。

また、元来の「みんながやりたくないこと、やらないことをやる」というスタンスから、様々な分野の新事業にも着手しています。秋葉原に立ち上げた「アイアンカフェ」では、商品の展示販売やオーダーメード鋳造を展開しています。2017年末には、京都で古いビルを改装して工場を立ち上げ、伝統工芸品に必要な金属部品を作る予定です。部品の形状が特殊だったり数が少なかったりすると請け負ってくれる企業はなかなかありませんから、ぜひ私たちがやりたいですね。性能がいいものを作るだけではなく、そこにデザイン性や芸術性を持たせたいと思っています。

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失敗に対して悪い評価はしない

今まで培ってきた工業的技術を生かして、農業のようなことにも取り組んでいます。たとえばトマトを栽培するのに、薄いシートを敷きます。このシートから微量の水分が浸透するので水をやる必要もありません。トマトは微量の水分を必死に吸おうとするので、生命力や渇望感が引き出されて非常に甘くなるんですね。自然を当てにするのではなく、自然を分析してどうすれば良いものができるかを探って、自分たちで作れるようにするのです。これはほんの一例ですが、私たちの管理、開発能力を他の産業に生かしてみようと様々な挑戦をしているところです。10個やってみて1個でも2個でもものになればいいと思っています。一生懸命やっていれば、失敗したとしても副産物がもたらされ、それが次のメシの種になるかもしれません。私は、失敗に対して悪い評価はしません。結果的に成功すればもちろんすごいけれど、どこまで追求できたかが重要だと思っています。

若い人は、自分の生き方に対して冷めた見方をしている場合ではありません。もっとあがいてほしいですね。いろんなことに挑戦して、これは好きだなとか面白いなと思ったらとことん突き進むのが、人生を豊かにする上で大切なことです。それがお金になるかどうかなんて考えなくていいんです。ばかにする人もいるかもしれないけど、気にすることはありません。自分のことを本気で考えるのは自分だけです。

これからは「どんな小さな分野でも一流」になるような生き方を目指すといいと思います。野球やサッカーなどで一流になろうと思うとなかなか大変ですが、私なんか紙飛行機ですから。紙飛行機を飛ばしたことがある人は山ほどいるけど、極めている人がほとんどいません。私もばかにされたりあきれられたりしましたが、子供の頃から大好きだった紙飛行機を極めて滞空時間のギネス記録をうちたてました。紙飛行機の協会も作り、ミュージアムも立ち上げました。大半の人が「若いうちにあれを極めておけば」という惜しい生き方をしていると思います。何でもいいから、その道の第一人者を目指して突っ走ってほしいですね。夢中になって何かに取り組む姿は魅力的ですし、そんな人は何をやってもうまくいくものです。

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