滝澤聡明
1968年生まれ、埼玉県出身。93年、神奈川歯科大学卒業後、国際デンタルアカデミー入校。国際デンタルクリニック勤務の後、96年にタキザワ歯科クリニック開業。98年、日本大学歯学部生理学教室に入室し、2004年に博士号取得。同年、医療法人社団明敬会を設立し、理事長に就任。
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INTERVIEW

私のクリニックは最寄り駅から距離があり、途中に歯科は何件もあります。そんな中、うちを選ぶメリットはあるか、ということをいつも考えます。せっかく選んでいただくのだから、「来たかいがあった」と患者さんに思ってもらえないとだめなんですよね。うちでは、親知らずの抜歯や金属アレルギーの対応など、他の医院では積極的にやっていないことに力を入れています。独自の診療内容を持っていることが私たちの持ち味。「ここでしかやっていないから」という理由で多くの患者さんが足を運んでくださいます。誰だって、存在価値のある仕事をしていると思いたいものです。私もそんな自信を持ちたくて、日々挑戦しているのかもしれません。

他の歯科でやらないことをやる

滝澤聡明

学生時代は、受験のための勉強に疑問を抱いていました。歯科医を目指したのは、どうせ勉強するなら将来の仕事に直結することを学びたいと思ったからです。私自身、歯の治療を受けるときは身構えてしまうタイプだったので、病院嫌いな人や痛がりな人にも配慮したきめ細かな対応のクリニックを開業したいと、その頃から素人なりに理想を思い描いていました。

開業してしばらくの間は、腕の良い歯科医になろうと必死に技術を磨きました。しかし経営はなかなか軌道に乗りません。ある時、患者さんにとって歯科医の腕の良し悪しというのは分かりにくいのではないかと気付いたんですよね。そして、特色を出すために他の歯科ではやっていないことを積極的にやっていこうという考えに至りました。技術の優劣よりも「あの病院ではやっているか、いないか」のほうが、違いが分かりやすいでしょう。

よそがやらないということは、採算性が悪いかリスクが高いかのいずれかです。例えば、親知らずの抜歯を売りにしている歯科はほとんどありません。親知らずは太い神経と接しているので、抜歯には神経まひのリスクがあり、割に合わないのです。親知らずが歯茎に埋まっているような難しいケースだと、紹介状を書いて大学病院などに送るケースがほとんどです。うちはそれを自前でやる、というだけで他院との違いが明確になるし、「経験豊富でスキルがあるんだな」というイメージを持っていただけると思うんですよね。リスクを恐れるのではなく、患者さんにもリスクはきちんと伝えながら、院内で設備やトレーニングを充実させてリスクを極力抑えるのが私たちのやり方です。

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「できません」と言ってしまえばそこでおしまい

ある患者さんの話ですが、矯正専門医に「歯並びが乱れるから親知らずを全て抜いてください」と言われたそうです。「痛いわけでもないのに、本当に抜かなきゃだめでしょうか」と、その日のうちに私の元へ相談にいらっしゃいました。話を聞いていると、せっかく矯正した歯を乱したくないという医師の都合で抜歯を勧めているように感じたんですね。この時、患者さんの話をじっくり聞くことも診療の一つなのだと実感しました。保険の点数にはなっていないけれど、診断やカウンセリング、アドバイスも歯科が生きる道の一つ。歯をいじったり削ったりすることだけが歯科医の仕事ではないんですよね。

歯科業界は保守的な考えの人が多いのですが、一般企業が次々に新しいサービスや商品をつくり出しているように、歯科も新商品を出したりインターネットで情報を発信したりして、新たな市場を開拓することはできると思います。海外で最新の機械や材料が出たら、いち早く導入することで患者さんに最先端の医療を提供することだってできます。技術を高めることももちろん必要ですが、他でやっていないものや新しいことに挑戦することも大事です。治療の引き出しが多ければ、患者さんにいろんな提案ができますからね。私も、あらゆる面で進化していたいと思います。

私たち歯科医の力を引き出してくれているのは他でもない患者さんたちですから、私たちは技術や知識を身に付けて還元していきたいと思っています。患者さんの要望に「できません」と言ってしまえばそこでおしまいです。

今後は院の規模を大きくするのではなく、診療の幅をもっと増やしたいですね。特定の分野にフォーカスを当てて、情報を提供したり診療内容を充実させたりしていきます。私たちにとっても勉強になりますし、飽きることなく新鮮な気持ちで仕事に臨むことができます。

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