石田行司
1965年生まれ、大阪府出身。徳島文理大学薬学部を卒業後、製薬会社のMRとして勤務。アルツハイマー治療薬アリセプトの国内総責任者や関西北陸エリアのマネジメント責任者も勤を務めたのち後、02年に独立。調剤福祉事業を軸に、他業種や自治体と連携して街づくりやグローバル事業など幅広く手掛ける。
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INTERVIEW

「目の前の患者さんが自分の家族だったら」と考えるようにしています。心から満足した患者さんは清々しい表情で「ありがとうございました」と言って帰っていきます。社内外で「ありがとう」が飛び交う風土を作っていきたいですね。その風土にひかれて、人が集まってくるものだと思います。

起業のきっかけは子供が障害を抱えたこと

石田行司

子供の頃は病気がちでたびたび入院しました。白衣や白い壁、消毒液の匂い。病院特有の雰囲気は私にとってなじみ深いものです。長く入院していると、同室の子が亡くなることもありました。そんな経験もあって、物心ついた頃には医療の道に進みたいと思っていましたね。

大学は薬学部に進学し、製薬会社のエーザイに就職しました。比較的新しい会社で、学閥がなく実力で評価される雰囲気に魅力を感じたんです。いずれ独立するつもりで入社しましたが、この会社で長く過ごすなら最低でも支店長や役員レベルになれるぐらい頑張ろうと張り切っていました。MRとして三重県に配属され、全国トップクラスの成績を収め、史上最年少で管理職に就くことができました。 これは、自社の薬がどのように使われれば取引先の医師や患者さんに喜んで頂いただけるか、また患者さんの症状や生活背景まで考慮した上でどこのメーカーのどの薬が最適か、ということをきめ細かくアドバイスできるように、他社の薬も含めて幅広く勉強した結果だと思います。上司は私のやり方に良い顔をしないこともありましたが、取引先からは絶大な信頼を得ることができました。目の前の商品を売ることに固執しなくても、お客様にたくさん感謝してもらえる仕組みを作れば売り上げはあと後からついてくるものです。

起業の決意を固めたのは、次女が生後すぐインフルエンザ脳症にかかってからです。次女は視力を失い重度の障害を抱えました。「なぜ我が子が」と打ちひしがれましたが、泣く暇もないぐらい通院や役所の手続きに忙殺される日々が待っていたのです。通所施設や税制のことなど、どこで手続きをすればいいか分からず介護福祉課や税務署など何カ所も駆け回りました。医療従事者の私でも苦労したので、これが身寄りのない高齢者や身体の不自由な方ならどんなに大変でしょう。この時、日本の医療システムを変えなければいけないと心から思ったんですよね。起業して、病気や介護の予防から治療、再発抑制、介護保険の申請までワンストップで情報を提供できるような薬局を作ろうと決心しました。

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経営の危機を一人で抱え込んだことも

薬局の一店舗目を開店する際、パートを含めた数人のスタッフの前でこのビジョンを語りました。その時、実現できると信じていたのは私だけだったようですが、当時のスタッフは今も全員残ってくれています。 創業3年目に資金繰りが苦しくなりました。それを誰にも話せなかったんです。店舗が次々に増えていく中で後戻りできない怖さもあったし、お給料をたくさん払っていいかっこうをしていました。

いよいよどうしようもなくなった時、全店舗を回って「給料を下げないと乗り越えられない。私の責任だ」と正直に話し、頭を下げました。すると、創業時からの社員が「驚きませんよ。ずっと気になっていました」と言ったのです。「最初の頃、社長はなんでも私たちに相談してくれたのに、いつしか自分だけで抱え込むようになった。でも今回、こうして打ち明けてくれた。スタッフには私たちが話しますから、必ず会社を立て直してください。そして最初に話した夢を絶対に実現してください」と。涙が出ましたね。私にはこんなに素晴らしい仲間がいるのだから、助けてほしい時ときは素直に頼ろうと思いました。それから楽になりましたね。

今は調剤薬局を大阪から全国に展開し、フランチャイズも増えているところです。大手調剤薬局ともパートナー契約を結んでいます。地域での検診の啓蒙や医療技術のグローバル展開など、トータルなビジネスを手掛けていきたいですね。 今、特に注力しているのが、年輩の方々がいかに元気に社会に貢献できて生き生きと過ごせるようになるかということ。現状は高齢者を支えるために「社会保障費」として国や地域の負担になっていますが、これを「社会再活性化費」と位置づけて世の中のビジネスモデルを転換するきっかけにできればと思っています。働けるなら働きたいと思っている高齢者はたくさんいます。そのために医療人としてできることを模索していきたいですね。

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