【中田英寿氏と考える】自分らしい、これからの生き方〜Life 2.0の果たす役割〜

JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 代表 TAKE ACTION FOUNDATION 代表理事 中田英寿氏とマニュライフ生命 取締役代表執行役社長兼CEO 吉住公一郎の対談

 マニュライフ生命のTVCMに出演する元サッカー日本代表の中田英寿氏。現在は、日本文化の魅力を世界に発信することに取り組んでいる中田氏が今回、マニュライフ生命が掲げる「Life 2.0」のコンセプト“自分らしい、これからの生き方”について、マニュライフ生命・吉住公一郎社長兼CEOと語り合った。

サッカーに費やしていた情熱を日本酒にもつなげられる

好きなサッカーを続けていたら、
プロになることができた

 ——まずはじめに、マニュライフ生命が掲げる「Life 2.0」とはどういうことか、吉住社長にお尋ねします。

 吉住 「Life 2.0」とは“自分らしく生きる”ということなんです。今、人生100年時代と言われ、その100年をどう生きるかというときに、一番大切なことは“自分らしく生きる”ことではないかと思います。マニュライフ生命では、自ら積極的に人生を切りひらく人たちを、応援していきたいと思っています。

 ——中田さんは、まさに自分らしい生き方を切りひらいている印象があります。現在は事業会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANYの代表として日本酒、ひいては日本文化全体の魅力を世界に向けて発信されています。ところで、なぜ日本酒だったのでしょう?

 中田 それは、好きなことをやり続けることが自分の生き方だからです。小学生のときに『キャプテン翼』という漫画を読み、サッカーが好きになり、サッカー中心の生活になりました。そこには、プロになりたいとか、世界の大会に出たいという夢が前にあるわけではなく、好きなことをやり続けたい、好きだからこそうまくなりたい、という思いがありました。そしてやり続けた結果、プロになれたんです。

 もちろん、プロになれたことや世界の大会に出られたことはうれしかったです。でも重要なことは、自分が好きなことをやり続けられる環境にいたこと。逆に言えば、プロでいることが好きだったわけじゃないんです。

 だからこそ、プロでいることには終わりが来ました。

 サッカーを辞めた後、新たな好きなことを見つけるために世界各地、そして日本全国を旅しました。

 日本全国を車で見て回りながら、工芸家、農家、酒蔵などを訪ねたのですが、そうするうち、日本酒って面白いなと感じるようになりました。「そこにはサッカーに費やしていた“好き”という情熱が、日本酒でも持てる」と思えました。要は、僕は好きなことしかできないんですよね。そんなふうに、今も好きなことをやり続けるための仕組みをつくっているだけであって、僕の生き方そのものはサッカーをやっているときも今もまったく変わっていません。

困難の中にも、楽しさを見つけてほしい
吉住氏

自ら積極的に人生を切りひらく人を応援していきたい

 ——好きなことをやり続けている中で、現在は経営者という立場でもあります。

 中田 自分が好きなことをやるために経営はしますが、経営をしたいわけではありません。サッカーはやり続けたかったけど、プロを目指したわけではないのと似ていますね。基本的には、自分が経営から離れられるための会社づくりの仕組みを考えています。

 吉住 おっしゃることはよくわかります。企業の場合、後継者をつくっていかなければなりません。うまく引き継ぐということを第一に考えるんです。社長といってもそれは同じで、実は私も「社長になりたい」と思っていたわけではないんですよ。ただ、この立場を通じて実現できることは非常に多いので、私は今ここにいると思っています。つまりそれは、私にとっての好きなことをやるということでもあるわけです。

つらかった日のことは、絶対に覚えている

 ——中田さんは、好きなことをやり続ける上で、日ごろから何か心がけていることはありますか?

 中田 正直なところ、ありません。今までの人生、好きなことしかやってきていないので、心がける必要もないんです。もちろん、世間の当たり前と違うときもあるので、その分、周りからは色々言われることもあります。でも、何が重要かといえば、自分が生きていると感じられることをやり続けられることこそが、重要だと思うんです。

 ——自分が生きていると感じられること、とは?

 中田 例えば仕事に限らず、今日は楽(らく)をした日というのはあると思います。でも、楽だった日のことって翌日は覚えていません。それよりも、つらくても充実していた日のことは絶対に覚えているものです。そのような厳しさの中に身を置ける環境をつくることが、一番大事ではないでしょうか。一般的に正しいことだからするのではなく、自分がしたいことをすることで、生きていると感じられるのだと思います。

 そもそも目的があれば、そこへ向かうまでの道のりが厳しいのは当たり前です。見方によってはリスクに見えるかもしれませんが、それは結果論であって、先のことはわかりません。周りから見て厳しい選択であっても、僕はその先により良いものを見られると思うからこそ厳しい道のりを選択しています。

 吉住 先のことは本当にわかりません。中田さんがおっしゃったのは、経営においてはリスクをヘッジするのではなく、リスクをどうテイクするかということ。大切なのは何のためにテイクするかです。

 私は部下が自分の意見を主張して、みんなが納得した上でリスクを取って失敗したとしても、それも尊重したいと思います。

自分を捨てて嘘をついてまでやる必要はない

 ——中田さんのスタッフとのコミュニケーションはいかがでしょうか?

 中田 いやあ、難しいですね。サッカーでも、チームメイトとコンタクトをとるのが大変でしたからね(笑)。僕が「こうだ」と断定的なことを言うと、シーンとなったりすることもあります。

 吉住 僕が言うのもおこがましいですけど、中田さんは自分らしくやればいいと思います。組織を運営していくには、みんながゴールに向かって楽しむことが大切です。でも、そのために中田さん自身が自分を捨てて嘘をついてまでやる必要はまったくない。「自分も嘘はつかないし、みんなも本当のことを言ってくれ」とシンプルに言えばいいのでは?

 中田 吉住さんのような監督がいたら、僕ももっと伸びていたと思います(笑)。

 でも一方で、「自由にやる」のは一番大変なことでもあります。なぜなら、「責任が伴う」からです。自由にやって責任を取らない人たちは、やはり組織を崩します。

 吉住 そうですね。企業という組織の中でもそれは同じです。そして、ただ自由なだけの人は我々がいくら受け止めようとしても、おのずと組織から落ちていきます。

 中田 企業であれば、どの人にも必ず役割があって、その役割に対してコストが発生しています。それを認識して役割を果たしていれば、正直何をしていてもいいと僕は思います。

 吉住 「ペイ・フォー・パフォーマンス」ですね。外資系企業では当たり前のことですが、この原理が理解されていないことが多い。

 中田 サッカーでも、監督から「これをやりなさい」と言われても、監督のコンセプトから外れていなければ何をしてもいいわけです。それに、試合中の指示も毎秒ごとにあるわけではないので、その“行間”には必ず自由がある。それをどう読み取るかだと思います。人生においては、行間がとても長いからこそ、色々な解釈の仕方があるのではないでしょうか。

自分が好きなことをやり続ける生き方
中田氏

本当に好きなものを見つけるにはとても時間がかかる

何でも手に入る環境が
本当の幸せを見えなくする

 ——先ほど、中田さんは好きなことをやり続けているとおっしゃいましたが、今、若い世代の人たちからは、「好きなことが見つからない」という声も聞こえてきます。そういう人たちに対して、中田さんからメッセージを送るとしたら、どのような言葉になるでしょう。

 中田 一番簡単なのは、「好きな人が、そんなに簡単に見つかりますか?」ということです。好きな人が簡単に見つからないように、そんなに簡単には好きな物事は見つからないと思います。例えば、結婚するまでに相手のことをわかるためにも付き合う時間をつくりますよね。それと同じで、本当に自分が好きなことをやりたくて、希望する会社で働いていても、その仕事が実際のところ自分が好きなことではない可能性もあります。でも、ちょっとやってみて違うから辞めるのも違う。好きであればこそ、乗り越えられるものがあると思うし、結局、本当に好きなものを見つけるためには、すごく時間がかかるということです。

 僕もサッカーを辞めてから次に好きなことを見つけるまで10年かかりました。10年かかって、やっと「これだ」と思えたのが日本酒だったわけです。

 吉住 今は入りたい企業に入っても挫折してしまう人が多くいます。私から若い方々に言いたいのは、困難の中でも楽しさを見つけてほしいということです。

 今はもしかしたら、困難の中でも楽しむということに気づける環境が整っていないのかもしれません。

 中田 今はモノでもコトでも、何でも楽に手に取れる環境が整っています。それを幸せと勘違いしてしまう人が多いのかもしれません。

 吉住 だからこそ、本当の意味で何が幸せなのか、我々のような上の世代も共に考える必要がありますね。今日伺った、中田さんの「自分らしい生き方」には、そのためのヒントがたくさん詰まっていると思います。ありがとうございました。

なかた・ひでとし/元サッカー日本代表。引退後100以上の国や地域を旅した後、2009年から日本国内47都道府県の旅を開始。これらの経験から日本の伝統文化、工芸等の新たな価値を見いだし、その継承と発展を促すことを目的とした「Revalue NIPPON Project」や、お酒の素晴らしさや面白さ、魅力を多くの人々に知ってもらうことを目的に、2012年ロンドン五輪、2014年ブラジルW杯、2015年ミラノ万博と、日本文化や日本酒の魅力を世界で伝えるプロジェクトを実施。現在、国際サッカー連盟(FIFA)の諮問機関である国際サッカー評議会(IFAB)の諮問委員を務める。

よしずみ・こういちろう/2007年にマニュライフ生命に入社後、執行役員として代理店販売チャネルの立ち上げを指揮。2015年からは専務執行役兼CDOとして販売チャネル全体を統括。マニュライフ生命に入社する前は、外資系生命保険会社で独立代理店ビジネスの推進を担うなど、金融サービス業界において30年を超える経験を有している。2018年4月から現職。