マザーズ投資の魅力 東証マザーズ指数先物は2017年7月19日で1周年を迎えました

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マザーズ投資の魅力 東証マザーズ指数先物は2017年7月19日で1周年を迎えました

マザーズ上級編「東証マザーズ指数先物」投資戦略

3東証マザーズ指数先物を
利用した裁定取引

岡崎 良介氏
金融ストラテジスト

2017年5月23日

東証マザーズ指数先物の上場から10カ月

岡崎 良介氏 金融ストラテジスト

岡崎 良介氏
金融ストラテジスト

上場日(2016年7月19日)こそJ-NET取引を合わせ、3270枚もの売買高を記録したものの、その後、1703枚、1283枚と減少し、10月29日には最低水準となる1日35枚まで激減したことで、東証マザーズ指数先物取引の将来性を悲観する声が広がった。しかし売買高だけが、市場の存在価値を決める尺度ではない。それよりもマザーズ先物の上場によって生み出された、新たな価値はどこにあるのかを調べてみるべきであろう。市場の存在意義は、適正な価格形成に基づく新たな価値の創造と、その効率的な交換にあるからだ。

それに、何よりも関係者が安堵していることは、最大の懸案事項であった特別清算指数(SQ)値の算出が、今のところ問題なく行われていることである。すでに16年9月限、12月限、17年3月限、と3度のSQ算出が行われたが、当日の東証マザーズ指数寄り付き値に対する乖離(かいり)率は、+0.1%、+0.1%、+0.2%、という結果になっており、流動性が損なわれた形跡はない。また、SQ値の前日終値からの騰落率も、-0.4%、-0.3%、+1.0%と、極めて安定的な数値が算出されている。

一方、建玉を観察すると、マザーズ先物市場は確実に成長を続けていることがわかる(図表1)。

図表1 東証マザーズ指数先物:上場来の建玉・売買高推移(2016年7月19日~17年3月31日)

図表1 東証マザーズ先物:上場来の建玉・売買高推移

通常、先物の建玉残はSQを経過するところで減少する。投機的な売買や、両建て取引を行っていた参加者の建玉が、SQによって自動的に決済されるからである。ところが、中長期の買いポジションを持つ投資家は、SQを挟んで、当限から翌限へのロールオーバーを行う。この時、この買いのロールオーバーに向かう形で、中長期的な売りポジションを作ったまま、当限から翌限への、売りのロールオーバーを行うのが、ヘッジャーもしくはアービトラージャーと呼ばれる裁定取引を行う投資家である。両者が存在することで、先物取引の厚みは増してくる。

SQ日当日の、マザーズ先物市場の建玉推移を見てみると、9月9日2695枚、12月9日3575枚、3月10日4745枚、と確実に増加をしている。これが中長期投資家の買いポジションとそれに見合う裁定業者の売りポジションと考えれば、マザーズ市場の裁定取引残高は、26億、32億、52億、と着実に積み上がってきたことがわかる。たかだか52億円にすぎないのかと失望されたかもしないが、マザーズ市場の時価総額4兆円から考えれば、先物上場1年目としてはまずまずの数字である(例えば、現在の東証1部の時価総額はおおよそ500兆円前後で推移しているが、これに対して裁定取引の残高は、少ない時に1兆円程度、多い時には3兆円を超える数字となっている)。

マザーズ先物を利用したさまざまな裁定取引が、静かに広がっている可能性が高い。

裁定取引のパフォーマンス

ではその裁定取引の実態はどんなものなのか。これは個々の投資家によってやり方は違うであろうが、過去のデータから計測すると興味深い事実が浮かび上がってくる。簡単な方法として、東証マザーズ指数先物が上場した時点のマザーズ指数構成銘柄上位10社を拾ってみる。そしてこれらの銘柄が先物の当限が推移するたびに、どのようなパフォーマンスになっていったかを、マザーズ先物と比較して相対パフォーマンスを計測してみる。パフォーマンスは3つの期間に分け、第1期を上場日である16年7月19日から9月限SQ算出日となった9月9日まで、第2期を9月9日から12月限SQ算出日となった12月9日まで、第3期を12月9日から17年3月限SQ算出日となった3月10日までとする。マザーズ先物のパフォーマンスは、上場日当日の初値から9月限SQ値まで(第1期)、9月限SQ値から12月限SQ値まで(第2期)、12月限SQ値から17年3月限SQ値(第3期)を使い、個別銘柄は、16年7月19日寄り付き値、9月9日寄り付き値、12月9日寄り付き値、17年3月10日寄り付き値を使用した(図表2)。

図表2 東証マザーズ指数と個別銘柄のパフォーマンス比較

図表2 東証マザーズ指数と個別銘柄のパフォーマンス比較

第1期は、比較的落ち着いた動きの中、マザーズ主要銘柄を保有しながら、先物を売るという裁定取引が有効であった。第2期は、マザーズ先物が低迷する一方、マザーズの準主役クラスの銘柄が好パフォーマンスを記録し、こちらも裁定取引が有効であった。ブレグジット(英国のEU離脱)から大統領選挙まで、イベントリスクに直面し新興市場の流動性が懸念された時期である。マザーズ先物で売りポジションを作ることで、この問題が解消できたのである。

しかし第3期は、上位個別銘柄のパフォーマンスが軒並み不振となる中、一部の銘柄、それもマザーズの中での、中小型、上場したばかりの新規銘柄がけん引する形で、マザーズ指数・マザーズ先物を押し上げた。上位銘柄とマザーズ指数の動きが逆となったため、この期は裁定取引が苦戦した可能性が高い。

第3期というのは16年12月から17年3月まで3カ月である。この時期、大型株は停滞期にあり、指数の中ではマザーズが群を抜いていた。この時期は、現物買い・先物売り、という基本的な裁定取引ではなく、マザーズ先物買い・TOPIX(もしくは日経平均)先物売り、という先物間の裁定取引が有効であった。中小型株の物色が究極まで進むと、マザーズ先物を買うことが、最も効率的な投資となることが見て取れる。

東証マザーズ指数先物の導入による市場への影響

最後に、マザーズ先物が上場したことで、これまでハイリスク・ハイリターンとされてきた新興市場が、ゆっくりとではあるが市場全体としては扱いやすい性格に変わってきたことを紹介しておこう。図表3から、マザーズ市場の相対的なリスクが低下したことがわかる。これはマザーズ市場の流動性が、先物の導入によって増加した結果であることに他ならない。

図表3 マザーズ市場のボラティリティーの変化

図表3 マザーズ市場のボラティリティーの変化
岡崎 良介氏

岡崎 良介
金融ストラテジスト

慶應大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て、1987年から2012年まで内外の資産運用会社にて、年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。12年独立し、現在、BS12投資情報番組「マーケット・アナライズ」メイン・コメンテーター、日経CNBC「昼エクスプレス」「ラップトゥデイ」メイン・コメンテーター。岡崎良介オフィシャル・サイト主宰。

慶應大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て、1987年から2012年まで内外の資産運用会社にて、年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。12年独立し、現在、BS12投資情報番組「マーケット・アナライズ」メイン・コメンテーター、日経CNBC「昼エクスプレス」「ラップトゥデイ」メイン・コメンテーター。岡崎良介オフィシャル・サイト主宰。

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