マザーズ投資の魅力 東証マザーズ指数先物は2017年7月19日で1周年を迎えました

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マザーズ投資の魅力 東証マザーズ指数先物は2017年7月19日で1周年を迎えました

マザーズABC

6IPO市場としての魅力度
~驚きの結果が~

太田 忠氏
太田忠投資評価研究所 代表取締役社長

2017年8月8日

太田 忠氏 太田忠投資評価研究所 代表取締役社長

太田 忠氏
太田忠投資評価研究所
代表取締役社長

「マザーズABC」の連載もいよいよ今回がフィナーレである。これまで5回にわたって、マザーズ市場および銘柄の特徴、過去のトラックレコード、個別銘柄投資へのアプローチ、先物と組み合わせた投資手法などを紹介してきたが、最終回はIPO(新規株式公開)市場としての魅力度について探っていきたい。

IPO市場の変遷

日本市場全体におけるIPO企業の数は2007年までは9年連続で100社を超えていたが、07年の106社を最後に2ケタへ転落。リーマン・ショックが起こった08年には49社へ半減し、09年にはわずか19社となった。その後も低空飛行が続いたが、13年には54社まで回復。そして、ここ2年でようやく100社近い企業がIPOを果たしている。

IPO市場におけるマザーズの企業数はコンスタントに6~7割となっており、その存在感は大きい。とりわけベンチャー色の強いマザーズでは第3回で述べたように、従来のマーケットには存在しなかったタイプの「ニュービジネス」企業を輩出していることもあり、個人投資家の注目度が高いのは当然のことといえる。

プライマリー市場とセカンダリー市場

メディアなどでIPO市場が語られる際、よく使われるセリフが「公募価格に対して初値は○倍になりました。IPO市場は非常に活況です」という類いのものである。しかし、IPOを論じるにおいて、これでは不十分なことに注意していただきたい。

IPO銘柄は2つのプロセスを経て取引がおこなわれる。すなわち、「プライマリー市場」と「セカンダリー市場」である。

プライマリー市場というのは、IPOする企業が上場前に株式の新株発行および売り出しをおこなうための市場である。新株発行はIPOを引き受けた幹事証券が取り扱いをおこない、新株を買いたい投資家に販売する。その際の価格が公募価格と呼ばれるものである。もしIPO銘柄に投資したければ、この価格で幹事証券に申し込みをおこなう。一方、売り出しは既存株主であるオーナーやベンチャーキャピタルが手持ちの株を売却するためのものであり、いわゆる彼らの利益確定としておこなわれる。売り出し価格も公募価格と同じ設定であり、通常、公募・売り出しはまとめておこなわれる。

こうしたIPO案件に実際に申し込みをおこなった場合、抽選で当たる確率はどれくらいかご存じだろうか? もちろん銘柄によって抽選倍率は異なるうえ、正確な数字が公表されているわけではないが、一説では東証1部の大型IPOの場合で5%程度、マザーズのような小型IPOでは1%未満ともいわれている。IPOは人気があるため、めったに当たらないということである。

セカンダリー市場はIPO銘柄が自由に取引できる、上場日初日からの市場である。プライマリー市場ではなかなか株を手に入れられないが、セカンダリー市場では簡単に投資することが可能である。従って、大半の投資家がIPO銘柄に投資できるのはセカンダリー市場に移行してからということになる。

東証マザーズの「幻想価格」はすさまじいパフォーマンス

さて、マザーズのプライマリー市場における価格形成を見てみよう。図表1は2010年から17年6月末までの各年のIPO実績の推移表である。まずは図表の左半分である、上場銘柄数、初値>公募価格の銘柄数、勝率、公募価格vs初値の騰落率に注目していただきたい。

全部で251社あるが、初値が公募価格を上回った企業数は実に232社、勝率では92%という結果となった。また平均の騰落率は+108.1%となっている。騰落率は相場が活況となった2013年以降の方が高いパフォーマンスであるが、10年から12年の不振時においても+70%以上の騰落率を確保していることが分かる。

「マーケットが良い時でも、悪い時でも抜群のパフォーマンス」「損する可能性がほとんどない」……という結果が出ているので、「プライマリー市場ではマザーズのIPO銘柄は全部申し込むべし」という結論になる。もちろん、IPO銘柄のクオリティーは玉石混交であるが、初値に関して言えば、どんな企業においてもとにかく期待値が先行して価格形成されるのがメリットである。初値がついた時点でIPO企業は株式市場で最初の公の評価を受けるわけだが、ここで注意していただきたいのは、それは「幻想価格」と言っていいものである点だ。

図表1 マザーズのIPO実績の推移

図表1 マザーズのIPO実績の推移

(注)現値は2017年6月30日終値ベース

ところが「現実価格」が待ち構えている……

ほとんどの投資家にとって、IPO銘柄への投資がセカンダリー市場からである以上、プライマリー市場での価格形成だけに着目していてもあまり意味がない。

現在の株式市場の平均PER(株価収益率)は15倍程度しかないにもかかわらず、初値価格が公募価格を大幅に上回りPERが50倍を超えることは珍しくない。50倍の評価がつけば、投資家はその企業に対して多大なプレミアムを払っていることになる。その後、成長過程において年率50%以上の利益成長が実現されるのならば50倍のPERでも正当化されるが、多くの場合、利益成長が鈍化し株価水準は切り下がっていく。

最初の株価が企業の実力値を超越した幻想価格となり、初値から時間が経過した後の株価を「現実価格」と名付ければ、過度な幻想価格は現実価格にとって大敵となる。図表1の右半分である、現値>初値の銘柄数、勝率、初値vs現値の騰落率を見るとそれがよく分かると思う。現値が初値を上回っている企業数は134社、勝率は53%にまで低下し、現実価格の騰落率は+57.5%となる。さらに各年を検証すると、幻想価格のパフォーマンスが過熱している2013年、14年、17年の現実価格のパフォーマンスは順に+15.3%、+16.2%、+4.4%とさえないことがよく分かる。幻想価格と現実価格は逆相関関係があり、最初に投資家が高いプレミアムを払ってしまうとその後のリターンが厳しくなる。

やはり個別銘柄の見極めが重要

先ほど私は「プライマリー市場ではマザーズのIPO銘柄は全部申し込むべし」と述べた。勝率92%で騰落率+108.1%などという、これほど効率的に稼げる市場は他にないからだ。極端な話をすると「業績のチェックは不要」「目論見書など読まなくてもよい」ということになる。ところが、セカンダリー市場ではそういうわけにはいかない。その証左が今述べた現実価格のパフォーマンスである。

玉石混交の企業を全部一緒にして平均値で現実価格を論じても正確性に欠けるので、パフォーマンス(現値が初値に対して)がプラスの銘柄とマイナスの銘柄で厳密に分けてその実態をチェックしたのが図表2と3である。

図表2のプラス銘柄群であるが、プラスになる確率は53%でそのパフォーマンスは+121.7%。一方、図表3のマイナス銘柄群は、マイナスになる確率が47%でパフォーマンスは-39.6%という結果がでている。すなわち、マザーズのIPOはパフォーマンスが良い企業と悪い企業の確率はほぼ半々で、良い企業に投資をすれば初値からでも2倍以上のリターンとなり、悪い企業に初値で投資をすれば-40%もの損失を被るということだ。

現値は2017年6月末時点なので、現在の比較的恵まれた相場環境での計測であるが、マーケットが悪くなると現実価格はプラス銘柄もマイナス銘柄もともに急激に低下するので、注意が必要である。

図表2 マザーズのプラス銘柄(現値>初値)の銘柄数と騰落率

図表2 マザーズのプラス銘柄(現値>初値)の銘柄数と騰落率

(注)現値は2017年6月30日終値ベース

 

図表3 マザーズのマイナス銘柄(現値<初値)の銘柄数と騰落率

図表3 マザーズのマイナス銘柄(現値<初値)の銘柄数と騰落率

(注)現値は2017年6月30日終値ベース

太田 忠氏

太田 忠
太田忠投資評価研究所 代表取締役社長

1988年関西大学文学部仏文学科卒。第一證券(現、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、DBモルガン・グレンフェル・アセット・マネジメント(現、ドイチェ・アセット・マネジメント)、ジャーディン・フレミング証券(現、JPモルガン証券)、JPモルガン・アセット・マネジメントを経て、2009年太田忠投資評価研究所設立。日本の中小型株市場に一貫して携わり、25年以上もの経験を持つ。

1988年関西大学文学部仏文学科卒。第一證券(現、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、DBモルガン・グレンフェル・アセット・マネジメント(現、ドイチェ・アセット・マネジメント)、ジャーディン・フレミング証券(現、JPモルガン証券)、JPモルガン・アセット・マネジメントを経て、2009年太田忠投資評価研究所設立。日本の中小型株市場に一貫して携わり、25年以上もの経験を持つ。

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