株価変動の「投資心理」を考える

大きく上下に揺れ動く株価。ギリシャや中国、米国の金利動向など悪材料も浮上し、株価下落の因果を海外に求めたり、需給に求めたりする分析が目に付く。しかし、株価は売りと買いの出会いで決まるもの。その売買を決定する最終要因である「投資心理」は市場動向の展開によって大きく変化する。それは株価の上昇下落の大きな要因でもある。株式市場における投資心理の影響やその動向、そしてワンアップ投資の方法を「兜町カタリスト」の櫻井英明編集長に分析してもらった。

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投資心理はトレンド追随で変化する

 株価が上がり続けると投資心理は根拠の薄い期待感で満たされ、「出遅れたくない」となる。株価が下がり続けると漠とした不安心理にさいなまれ「どうしよう、見たくない」となる。心理は希望に満たされると慢心し、痛めつけられると疑心暗鬼に変化するものです。本当は「疑心暗鬼の先に光あり、順風満帆の裏に影宿り」。この、「人の行く裏にある花道」を多くの人が時間をかけて求めているのが株式市場です。でも実際のところは、「比較多数の心理に付く」というのが正しいのでしょう。


 株式相場とは心理。上に動けば加速の動きと足を引っ張る動きがうごめきだします。下に動けば同様に加速の動きと引き戻す動きが現れます。このせめぎあいのリズムのハザマで動くもの。売りは売りを呼び、買いは買いを呼びます。しかし、その逆ベクトルも稼働を開始。まさに「相場解釈はトレンド次第」ですから「株高ければ強気、株安ければ弱気」。どちらのパワーが強いのかの見極めが必要です。たぶん本当に必要なのは他人の解釈ではなく自分の解釈。自分の肌で感じる相場観こそ正しいと信じることが一番大切です。
 ただ、株式市場はバックミラー投資になりがちなもの。言葉は前を向いているものの注意はほとんど後ろに向けているようなもの。「過去に饒舌(じょうぜつ)、未来に寡黙」というのが株式市場。未来に饒舌になったときに市場は明るい未来を示しているでしょう。そして海外株安だから日本株安なんて解釈は姿を消すに違いありません。

「儲けたい欲望」

 もうかると思うからお金が集まるのが株式市場。必要だとか、アレを持ちたいとう欲望とは少し違った欲望に左右されています。フツーのものは価格が下がれば皆喜んで買いに来ます。ところが株式市場は価格が下がると不安になって手が引っ込む場所。未来永劫(えいごう)この構図は変わらないでしょう。ところが価格の上昇局面ではどちらも一緒。我先にと買いを出し始めます。ただ、フツーのものは高値になると諦めが登場しますが、株の高値は諦めどころか希望満載。これだけ違うのが消費心理と投資心理。おなじ心理もつかさどるものが違うとこれだけの差が生じてくるから面白いです。価格に背中を押してもらわないと踏み出せない心理は変わらないのでしょう。

「市場心理の本筋は驚き」

 本来、市場が求めているのは驚き。想定しない方向から玉が飛んでくるから避けようとし、次の動きに注意するもの。わかりきった方向から腐ったリンゴのような球が来たところで「だから何?」。市場は繊細かつ横着ですが、横着に支配されていては売り方の空しさこの上ないでしょう。むしろ、作戦を変更して材料となる視点を他に振ることが多いような気がします。だから今、視点はウクライナやギリシャなどをさまよい、時折本筋の米国や中国が登場するのでしょう。久しくとどまり腐った魚は猫でも見向きしないもの。「不景気の真っただ中に大底から反転し、好況の真っただ中に天井を示現するのが株式相場」と先達は言っています。その驚きこそ、真骨頂。警戒過多は鈍感を醸成し、鈍感は弱気を強気に転換してくれるものです。どんなに好悪の材料が混在していても、最後は「ウリカイ」の決断の結果である注文がぶつかり合うところ。この決断への推理推論を積み重ねることは相場に対して必要なことです。客観的材料の吟味も大切ですが、主観的相場観の類推が重要。なかなか難しいことですが、これを実行することで相場観は飛躍的に進歩するはずです。

7年周期の思考法

ストックウェザー 「兜町カタリスト」編集長 櫻井英明氏

ストックウェザー
「兜町カタリスト」編集長
櫻井英明氏

 最近株式市場では7年周期の株価下落説が流行しています。「今年はユダヤ暦7年に1度の暴落の年。7年前は2008年のリーマンショック。それ以前は、01年の9.11同時多発テロ、94年の米国債暴落、87年のブラックマンデー、80年のハードリセッション、73年のオイルショック……」
 確かに時間軸は符合しています。しかし考えておきたいのは、株価の下落に対して世界は一致して対応策を出してきたという現実。7年という時間軸は少し長いですが、株も馬と同様に買い場を与えないと上がれないもの。こういう見方をしたくなってきます。もっとも7年周期がもしも正しいというのなら、次は2022年までその年回りはこないと考えることも可能です。


 2015年夏の相場の下落・低迷の底流は金融相場から業績相場への移行途中の中間反落と考えたいところ。38,915円に至った昭和バブルのスタートは1982年。しかし途中1987年にブラックマンデーに見舞われました。これが中間反落となり、その後高値を示現したのが歴史。歴史は繰り返すと読んでいます。

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タイミングなのか銘柄なのか

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Profile

ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長 櫻井英明氏

ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。日興証券(現SMBC日興証券)の機関投資家担当トレーダー、株式新聞Weekly編集長を経て現職。東京MXTV「東京マーケットワイド」やラジオNIKKEI「投資知識研究所」キャスター。

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