IFRS 導入に向けた戦略的対応

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特別講演

「IFRS時代のグローバル経営を支える経理財務変革」

企業の海外展開が広がる中、世界各地における事業実態の迅速かつ正確な把握は大きな課題だ。国際会計基準(IFRS)は、そんな観点からも注目されている。グローバル経営を支える基盤として、統一基準に基づく経理財務の数値は欠かせないからだ。日本アイ・ビー・エムの松尾美枝氏は、IBMグループが進めてきた管理基盤づくりの経験を紹介し、求められる財務経理の役割について語った。

IFRS対応はグローバル経営の基盤づくり

松尾 美枝氏
講師:松尾 美枝 氏 日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
コンサルティング・サービス
戦略コンサルティンググループ
パートナー

 世界60カ国の企業の最高経営責任者(CEO)や公共機関のリーダー1500人以上を対象にIBMが実施した調査、「IBM Global CEO Study 2010」から興味深い傾向を読み取ることができます。日本でも約170社にご協力いただきましたが、日本と日本以外の国との間にはグローバル化への関心に大きな違いがありました。

 「今後3年間で自社に最も影響を与える外部要因は」との質問に対して、「グローバル化」と回答したCEOが、日本では目立って多かったのです。この項目の順位は日本では2位、世界全体では6位でした。日本企業の経営者は、グローバル化についての課題を強く意識しているようです。

 そのような時代の潮流の中で、IFRS導入を巡る議論が高まっています。多くの経営者はIFRSを単なる会計制度ではなく、グローバル経営を支える基盤と捉えています。例えば、国ごとに会計基準が異なり、在外子会社の比較が難しいという課題は多くの企業に共通するものではないでしょうか。IFRSをきっかけに、こうした現状を改めようとする企業は少なくありません。

 グローバル経営の管理基盤に求められる要件には、効率化とビジネス洞察力の強化という2つの軸があります。効率化では、業務の標準化や集約化などの課題があり、一方の洞察力については、経営や戦略の意思決定を支援する分析、計画などが求められます。

 しかし、これは経理財務部門だけで実現できることではありません。管理基盤を整備するためには、ただ規定・制度をつくればいいわけではなく、社内の組織体制を整え、グローバルに対応できる人材を活用し、それを支えるインフラや業務プロセスも整えなければならず、多面的に取り組む必要があります。もちろん、経営トップのリーダーシップも欠かせません。

グローバル経営を支える経営管理基盤とは、多面的要素から成り立つ一連の仕組みであることを理解することが重要
グローバルに統合された企業を目指した改革

 では、グローバル経営の基盤づくりに向けたアプローチは、どのようなものでしょうか。具体的に説明するために、IBMの経理財務改革について紹介しましょう。

 IBMは、真の「グローバルに統合された企業」を目指して改革を進めてきました。そのポイントは成長市場への素早い注力、それを支える間接機能のグローバルな統合、資産の最適な活用を促進することです。経理財務改革はこうした仕組みの一環です。

 グローバルな統合を進めている間接機能は経理財務だけでなく、ITや広報宣伝、営業管理や人事など11の部門が対象です。全世界でこれらの業務を標準化した上で、その中の定型業務をシェアード・サービス・センターに集約し、効率化によって生み出されたリソースを高付加価値の業務に振り向けるのです。

 IBMは1993年に大きな経営危機を経験しました。それ以前の経理財務部門は、データの正確性と情報管理に主眼を置いており、過去の業績リポート作成などが作業のほとんどでした。しかし93年から改革が始まり、その後この比率は大きく変化しました。データや情報の管理といった業務はシェアード・サービス化を進めて効率化し、より多くの労力を新規ビジネスへの提言など戦略的意思決定の支援に割けるようになりました。

 こうした経理財務部門の改革には、一定の時間と地道な取り組みが不可欠です。重要だったのは、経営管理のためのシステムとデータ管理の統一でした。

 以前は、各国ごとにデータの定義やシステムがバラバラでしたが、それではビジネスの実態を迅速かつ正確に把握することは困難です。そこでデータの定義、業務アプリケーションや勘定元帳の共通化に取り組みました。IBMは米国企業ですから、各国の経理財務では自国基準の前に米国基準でまず決算を締める方式に取り組みました。

 こうして、米国基準という1つの会計基準で全世界のビジネスを管理する基盤を構築することができました。これにより、ただのデータが「情報:インフォメーション」に変わったのです。各国の膨大なデータが「産業別」「ブランド別」「地域別」という3つの軸で把握できるようになり、経営者やマネジャーは自分が見たい切り口で予測や実績などの数字を確認できます。そして、同じ数字を共有した上で議論ができるようになったのです。

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