
私たちは女性問題に焦点を当て、女性の社会進出と雇用を促すための教育を行いたい。女性は貧困問題や教育格差に深く関わっているため、国連ミレニアム開発目標のゴール3「ジェンダーの平等と女性の地位向上」にアプローチすることで、同ゴール1「極度の貧困と飢餓の撲滅」とゴール2「初等教育の完全普及の達成」の解決まで可能になると考えた。舞台は南アフリカ共和国。経済成長が著しく、教育推進にも力を入れている国である。
伊藤忠商事と東芝、関西学院大学が協力して、グローバルな視点で社会的課題を解決できる女性の育成を行う。手段としては、新しい学部を既存の大学に設立。奨学金を出すことで、安心して学べる機会を提供し、アフリカの有能な女性を呼び込むことを目指す。教育内容は、座学と実学の両立を図りたい。座学では関西学院大学から経営学やBOP ビジネスなどの実践的な講座を提供。実学は、南アフリカで活動しているNPO/NGO を中心に伊藤忠商事と東芝、その関連会社でインターンシップ活動を実施する。
最後に、プロ野球のポスティングに似た制度を導入し、教育を受けた有能な女性を世界中の企業やNPO/NGO に輩出する仕組みである。この制度を受けられなかった女性については、起業してもらい、その利益を還元するという方法を考えたい。アフリカの女性に希望をもたらすことで、世界中の女性の笑顔を創出することを目指す。
【講 評】
●商社の経営資源である人材に着目したのはうれしい。元気なプレゼンもよかった。(伊藤忠商事)
●奨学金の条件としてやる気を最も重視するという点に感動した。南アフリカから世界へ人材を創出するという着想がユニークだ。(東芝)
【審査委員長から】
女性問題の重要性は洋の東西を問わない。リソースの2社に加えて、大学自身も主体になっている点が評価できる。
■関西学院大学GSR研究会(指導教官:小池洋次教授)
本プロジェクトを通じて、社会的弱者にも平等にチャンスを与えられる社会の実現に貢献したいと考えている。機会不平等によって社会的利益がどれだけ損失を被っているか。その現状に一石を投じるきっかけをつくりたい。

アジア途上国は経済発展が著しいが、その負の側面として経済格差が問題となっている。その代表的な国のひとつであるタイでは、世界的に話題となった洪水によって主要な農作物である米が被害を受け、それを栽培していた貧困層の農民が危機に瀕する結果となった。このような災害に対応するために、タイ独自の宗教観念である「タムブン」の思想を通じて、富裕層が貧困層を助けるモデルを提案したい。富の再分配構造の形成である。
これは、資生堂の商品をタイの富裕層が買うと、その売り上げに応じて今回の洪水のような災害時に貧困層の農民に支払われる保険(損害保険ジャパンによる天候インデックス保険)の保険料が積み立てられるというもの。このような「購入代金の一部が社会問題解決のために寄付される」という商品は「寄付つき商品」と呼ばれる。
タイではタムブンという宗教観念が浸透している。タムブンとは徳を積む行為のことであり、人を助けることや寄付をすることで徳が積まれると考えられている。タイにおいて「購入することによって徳を積める商品」として寄付つき商品を浸透させることで、「経済発展」と「経済格差による諸問題の解決」を両立させて行きたい。
【講 評】
●中間所得者層のニーズや商品性などで議論の余地はあるが、富裕層と貧困層をつなげる発想は素晴らしい。(資生堂)
●意外性もあり、非常に面白いと思った。天候インデックス保険を消費者にどこまで理解いただけるかがカギだろう。(損害保険ジャパン)
【審査委員長から】
損害保険ジャパンを天候インデックス保険で組み入れる手法が手堅い。災害対策に着目した点に今日性を感じる。
■東京大学 x STeLA チーム(指導教官:村松正彦アドバイザー)
学部・院生の混合チーム。科学技術界でのグローバルリーダーの育成とネットワーク構築を行う「STeLA」出身のメンバーが多い。医学・工学・文学と多方面の知を融合することで、斬新なアイデアにもとづくイノベーティブなGSR事業プランを提案したい。

現在でも14 億人もの人びとが、1 日1.25 ドル以下の生活という「貧困」から抜け出せずにいる。私たちは今回、アフリカ南東部に位置する島国、マダガスカルに焦点を当てた。美しいリゾート地として有名な同国は、実は1 人当たりGDP が世界で下から8番目の世界最貧国の1つなのである。
貧困層の80%が農業従事者である同国では、水インフラの未整備によって産業発展が阻害されている。そこで、千代田化工建設と資生堂の力を結集し、マダガスカルの人びとが自国の強みを生かして経済的に自立できる仕組みを構築する。同国は、ハーブや水産物などのさまざまな特産物を有する。これらの特産品をベースにした「Made in Madagascar の高品質加工原料」を現地生産し、それらを用いた化粧品ブランドを先進国で販売する提案である。
千代田化工建設は、浄水化技術・プラント建設技術・太陽熱発電技術を生かして、水道・電気が未整備である農村での小型プラント建設を実現する。資生堂は、高品質加工原料の生産技術を供与するのに加え、この加工原料を買い取り、“Madagascar Organic Series” ブランドを先進国向けに製造・販売する。
以上の仕組みによって、現地雇用が創出されるだけでなく、マダガスカルの農業従事者の多くが再投資資金と原材料加工ノウハウを入手できる。農業を基本にマダガスカル経済が自らの力で発展するきっかけをつくりたいという思いを込めた提案だ。
【講 評】
●地球の恵みを受けている人間として、農業の改善が途上国の貧困問題の解決につながると考えている。農業への誇りに焦点をあてているのがうれしい。(資生堂)
●プラント建設や水処理など、当社の基盤ビジネスに着目してくれて参考になる。生物多様性の観点が含まれると、マダガスカルで展開する必然性が高まるだろう。(千代田化工建設)
【審査委員長から】
オーガニック化粧品という成長性の高い商品に目をつけた男性のセンス。マダガスカルが最も必要としている水問題も同時解決できる点を評価したい。
■一橋大学米倉誠一郎ゼミ有志(指導教官:米倉誠一郎教授)
米倉教授の呼びかけで結成されたチーム。メンバーそれぞれが、さまざまなバックグラウンドを持っていることが特徴である。幅広い視野で大きなアイデアを生み出し、関わる人すべてを笑顔にする未来を創り出したい。

南スーダンにおける「創造的な遠隔医療システム」を提案したい。千代田化工建設と第一三共のリソースであるIT 技術や衛星システム、製薬(ワクチン)販売や移動診療車のノウハウを活用して、医療のサプライチェーンを総合的にプロデュースするプログラムである。
本提案の主な特徴は3つある。1 つ目は首都ジュバを遠隔医療の基点=ハブ都市として、IT 技術を駆使して他の都市とリンクさせること。ジュバと他の都市を遠隔医療で繋ぐことで情報の共有と簡易な診療が可能となり、医療へのアクセススピードの短縮化と医療アクセス権の格差是正に貢献できる。
2つ目はマイクロファイナンスを活用して現地の起業家を育てる点だ。現地雇用を促進し、地方の活性化も視野に入れている。起業家の役割としては、ワクチン販売や地域住民に対するHIV/エイズの啓発活動を主に考えている。移動診療車などの移動手段の入手資金として、マイクロファイナンスの活用を想定している。
3つ目が、日本の認定NPO 法人で2006年8月からスーダン南部で支援事業を行っているJPF(ジャパンプラット・フォーム) とパートナーシップを築き、JPF 加盟団体の各NGO と協働する点である。
人びとの営みの源泉である医療問題に着目した本提案が、独立間もない南スーダンの成長・発展のための「土台」となり、国づくりのエンジンとなることを期待している。
【講 評】
●千代田化工建設さんとの協業と起業家の育成が盛り込まれたことで、事業化がより具体的になっている。起業家育成のプロセスを一緒に考えていきたい。(第一三共)
●国際宇宙ステーションの通信ソリューションに携わったグループ企業を活用することに着眼した学生らしい柔らかい発想に感心した。(千代田化工建設)
【審査委員長から】
南スーダンという大貧国ならではの提案。千代田化工建設の子会社を活用する点や医療ハブ都市の構想が面白い。
■明治学院大学GSR研究会(指導教官:原田勝広教授)
NPO/NGOで実際に活動しているメンバーを中心に、ゼミや研究室を横断した明治学院大学連合というべきチーム。本プロジェクトを通じて、持続可能な社会の実現に向けてさまざまな議論をしていきたい。