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その男、グランドセイコー「新たな価値を創造するイノベーターたち」

Vol.03 Masatoshi Nagase 俳優 永瀬 正敏 氏

製作スタッフ全員の宇宙を集めると大きな銀河になる

「世界最高峰の腕時計をつくる」を合言葉に1960年に誕生し、伝統に革新を積み重ねて国内外で高い評価を受けてきたグランドセイコー。2017年、そのグランドセイコーがグローバルブランドとして、さらなる高みを目指し、新たな挑戦に踏み出す。そんな思いとも重なる4名のイノベーターを招いて話を聞くインタビュー企画「新たな価値を創造するイノベーターたち」。第3回のゲストは俳優の永瀬正敏さんだ。

弱冠16歳で鮮烈にデビューして30余年。映画を愛し、俳優として映画に関わり続け、50代を迎えながらも挑戦を重ねる永瀬さん。最後の本格派映画俳優ともいわれ、写真家の一面も持つ希代のクリエイターに映画、演技、写真など作品づくりに共通する思いを聞いた。

永瀬 正敏 氏

海外での映画づくりから学んだこと

「まずは飛び込んでみることですよ」

日本人として初めてカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に3年連続で出演作がノミネートされた映画俳優、永瀬さん。冒頭の言葉は、日本の若い映画監督や俳優など、海外での映画づくりに憧れる人たちにいつも助言しているメッセージだという。

「僕が初めて海外の作品に出演したのは1988年のジム・ジャームッシュ監督の作品。当時は、まだ日本の俳優が海外に出ていくことは大変な時代でした。自分の心の中にも高い垣根があった。ジャームッシュさんの現場を経験して気が付いたのは、良質な作品を生み出すという目的さえ同じなら、世界的な名声を得た監督の映画づくりも、日本のそれと何ひとつ変わらないということでした。ジャームッシュさんや彼のクルーと20代前半で出会うことができたのは本当に幸運だったと思います」

世界には素晴らしい出会いがたくさん待っている

ジム・ジャームッシュ監督・脚本の映画『パターソン』(2016年)から。27年ぶりのジャームッシュ作品への出演となった

ジム・ジャームッシュ監督・脚本の映画『パターソン』(2016年)から。27年ぶりのジャームッシュ作品への出演となった

Photo by MARY CYBULSKI ©2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

脚本でも演出でも演技でも、常に自分たちなりの作品づくりを主張していくべきだと永瀬さんは語る。

「日本の俳優やスタッフの技術は世界一のレベルだと僕は思っています。例えばハリウッドではせりふの担当など、カテゴリーごとに何人もの監督がいることも珍しくない。数カ月や1年という長い時間をかけて役を作る。日本の役者はその作業をたった3日でやってしまいます(笑)。時には寝る間も惜しんで作り込む。日本の俳優がハリウッドの恵まれた環境に身を置いたら相当素晴らしい仕事ができるはずです」

だからこそ、俳優も監督も若いうちに海外で経験を積むべきだと永瀬さんは力説する。海外の様々な現場を経験した永瀬さんの発言だからこそ説得力がある。

「役者も監督も、どんどん自分を売り込んで海外へ出て行ってほしい。日本が悪いわけでは決してないですし、僕も日本映画には誇りを持っています。僕は自慢できるものなんて何も持っていないですが、ただ、人との出会いだけは自慢できる。世界には、そんな素晴らしい出会いがたくさん待っているということも事実です」

永瀬 正敏 氏

大切なのは作品と真摯に向き合う姿勢

永瀬さんには写真家という一面もある。撮る側と撮られる側。異なるベクトルの表現に対する取り組みは相乗効果を生む。写真への情熱を、時を超えて祖父と共有できることは大きな喜びだという。

「役者と写真家は自分にとっては自転車の両輪のようなもの。お芝居をして、そこで感じたことが写真を撮る際にも生きてくる。その逆もあります。まだまだ役者が写真を撮っているとしか見られないことも多いのですが、今は人生の歴史を感じさせる堂々とした人の写真を撮り続けたいと思っています。今の若い人たちはみんなかっこいいし、かわいいのですが、年輩の方が持つ重みにはかなわない。ポートレートを撮りたいのは、祖父が写真館の人間だったせいかもしれません。戦争もあって写真を断念せざるをえなかったのですが、作品は残っています。祖父が撮影や現像に関する技術をまとめたノートを発見した時、お客さんの記念日を印画紙に美しく焼き付けたいという熱い思いが伝わってきました。残念ながら祖父と写真について語り合うことはできませんでしたが、その思いだけは、しっかりと継承させてもらいました。俳優という仕事も同じです。作品に向かう姿勢は大先輩の後ろ姿を見ながら学ばせていただきました。三國連太郎さんや藤竜也さんなど素晴らしい役者さんと、若い頃にご一緒できたのは僕にとって本当に大きな財産です」

様々な意見を受け入れるための余白を持つ

2017年5月にロードショー公開された河瀨直美監督・脚本の『光』のワンシーン。

2017年5月にロードショー公開された河瀨直美監督・脚本の『光』のワンシーン。永瀬さんは弱視の天才カメラマンを演じた

12月6日(水)『光』Blu-ray&DVD発売
セルBlu-ray:6,800円(税抜き)
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:ポニーキャニオン
©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

作品ごとに異なる性格の役柄に取り組む俳優という仕事は常にチャレンジの連続だ。役づくりにおいても年齢を重ねて大きく進化した部分があるという。

「脚本を読ませていただくと、自分の脳内に一度、役のイメージができあがる。昔はそれを研ぎ澄ましてから現場に持ち込んでいました。最近はそれでは駄目だと思っています。キャラクターとして必要なものを作り上げてから現場に行くと、どうしても、それに凝り固まってしまう。固めすぎると、監督の要望に瞬時に反応できなくなる。だから今は撮影前にいったん全てをリセットして、様々な意見を受け入れる余白を持つようにしています。そうすると、監督や共演者が言うように別の考え方もあることに気付く。僕だけの小さな宇宙よりも、監督、共演者、技術スタッフといった、チームみんなの宇宙を合わせて大きな銀河を作り上げたほうが、作品としては絶対にいいものになるんですよ」

役柄として生きていくという演技

そんな俳優道を追求する永瀬さんにとって重要な意味を持つのが、日本を代表する映画監督の1人、河瀨直美さんの「河瀨組」での映画づくりだ。

「河瀨さんは、お芝居をすることを否定される方です。役としてその場を生きていないとOKをいただけない。少しでも技術に走ると、すぐにバレてしまう。『今のは、お芝居やったな』って言われちゃうんですよ。自分でも分かるんですけどね(笑)。河瀨監督の現場では役者として築いてきた技術が一切役に立たないんです」

実はこのインタビューの数日前まで、河瀨組の新作撮影のために、奈良の山奥にある廃屋で暮らしていたそうだ。

「誰も住んでいない山奥で、コウモリの巣になっていたボロ屋に手を入れて暮らしていました。カメラが回っているわけでもないのに、クランクインの1週間前から撮影が終わるまで、ずっとそこで生活する。俳優・永瀬正敏ではなく、役柄である『山守のトモ』として生きていく。役者としては、他の仕事との切り替えがとても大変なのですが(笑)」

失敗してもいいから攻め続けたい

国際的な俳優としての地位も名誉も確立されている身でありながら、あえて過酷な撮影に挑む永瀬さん。その裏にある思いを明かしてくれた。

「先の保証はありませんから、安定しているところに留まるよりも、失敗してもいいから攻め続けたい。攻めていれば、失敗したとしても、その経験が自分の糧になる。役者を続けている限り、死ぬまで満足することはないでしょう。作品は、時代も国境も越える。手を抜いてしまったら、妥協した作品として永遠に残ってしまいます。だからこそ、一本一本が勝負です。もっと前へ行かなきゃ、もっと攻めなきゃと、50代になってからより強く思うようになりました。そのぶん、私生活では、とことん息を抜きたいんですけどね(笑)」

永瀬 正敏氏 着用モデル グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223

「物づくりにおける日本人の技術力や独創性、美意識の高さは、映画でも時計でも変わりはありません。世界に誇ることのできる素晴らしいプロダクトとして、もっと多くの方に知っていただくべき時計だと思います」

永瀬 正敏氏 着用モデル
グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223

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次回VOL.04は俳優の藤木 直人さんです。

永瀬 正敏 氏

Profile

永瀬 正敏 (ながせ まさとし)

1983年『ションベン・ライダー』でデビュー。 『息子』(91年)で日本アカデミー賞ほか映画賞の主演・助演男優賞を総なめに。『学校Ⅱ』(96年)『誘拐』(97年)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を2年連続受賞、『隠し剣鬼の爪』(2004年)で同優秀主演男優賞を受賞。カンヌ映画祭芸術貢献賞受賞の米映画『ミステリー・トレイン』(89年)、ロカルノ国際映画祭グランプリ受賞の香港映画『アジアン・ビート(香港編)オータム・ムーン』(91年)、リミニ国際映画祭グランプリ、エジンバラ国際映画祭監督賞などを受賞したアイスランド映画『コールド・フィーバー』(95年)などの海外作品でも主演を務める。『毎日かあさん』(11年)で日本映画批評家大賞主演男優賞受賞。カンヌ映画祭ある視点部門オープニング作品、バレッタ映画祭ベストフィルムアワード受賞の『あん』(15年)では国内外の男優賞多数受賞。2017年は河瀨直美監督『光』、ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』が公開。『光』は、今年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に日本作品で唯一選出された。写真家としても活動し、現在までに多数の個展を開いて20年以上のキャリアを持つ。

グランドセイコー 革新の歴史 4つのストーリー

2017年に独立ブランドとなった「グランドセイコー」は、
これまでも世界最高峰の腕時計になるべく前例のない革新を遂げてきた。
その挑戦の歴史を「4つのストーリー」からひも解いていく。

Vol. 03【デザイン】完璧な磨きと稜線が作るキラメキのデザイン

「グランドセイコー 44GS」(1967年)手巻メカニカル ※現在は生産終了

「グランドセイコー 44GS」(1967年)
手巻メカニカル ※現在は生産終了

グランドセイコーのデザインはシンプルだ。しかし一方で、他の腕時計とは明らかに違うと一瞬で気付くのはなぜか。その理由はキラキラと輝く針やケースにある。

グランドセイコーのデザインコード「セイコースタイル」が確立したのは、1967年。名作「44GS」の誕生にまでさかのぼる。当時目標としていたスイス時計は、柔らかな三次元曲面ケースとしっとりとした鏡面仕上げが特徴だった。それとは違う独自のデザインを作りたい。そこでグランドセイコーでは、「機能は見えるように、性能は感じるように」というポリシーを掲げ、ダイヤル回りはシャープな印象を抱かせるよう、インデックスと針にダイヤカットを施し、光を受けて輝くようにした。ケースの平面部分はザラツ研磨という方法で磨き上げることで歪みの無い光沢面を作り、面の角度は宝石のカットを参考にすることで最大限の輝きを引き出している。また、ケースは直線と平面で構成しているが、キッチリと線を合わせることで、海外時計にはない屏風や障子のような“稜線の造形美”を際立たせ、メリハリのある輝きを作った。それこそが、ケースが輝いて見える理由である。

「グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223」(2017年)自動巻スプリングドライブ クロノグラフGMT 1,550,000円(税別)

「グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223」(2017年)
自動巻スプリングドライブ クロノグラフGMT 1,550,000円(税別)

こうして完成したグランドセイコーのデザインだが、自動巻化や堅牢化に伴い、必然的にケースも以前より厚くなり、それに対応してケースフォルムも進化を遂げている。

“歪みのない鏡面とシャープな稜線”という基本デザインは現代のモデルにも受け継がれており、加工が難しいセラミックス製の外装ケースをもつ「ブラックセラミックス コレクション」でさえも、光を受けるとキラッと輝くように、完璧に仕上げられている。これは、グランドセイコーが“伝統を守りながら、革新を続ける腕時計”であるからだ。

シャープな線と完璧な鏡面仕上げが生みだす、光と陰。これこそがスイス時計にはない、特別な魅力なのだ。

文 篠田哲生 

「世界の審美眼を挑戦する。グランドセイコー」 セイコーウオッチ株式会社

【時計に関するお問い合わせ】グランドセイコー専用ダイヤル
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