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その男、グランドセイコー「新たな価値を創造するイノベーターたち」

Vol.01 Daito Manabe ライゾマティクスリサーチ主宰 真鍋 大度 氏

作品は古くなってしまっても優れたアイデアは色あせない

「世界最高峰の腕時計をつくる」を合言葉に1960年に誕生し、伝統に革新を積み重ねて国内外で高い評価を受けてきたグランドセイコー。2017年、そのグランドセイコーがグローバルブランドとして、さらなる高みを目指し、新たな挑戦に踏み出す。そんな思いとも重なる4名のイノベーターを招いて話を聞くインタビュー企画「新たな価値を創造するイノベーターたち」。第1回のゲストは今、世界から最も注目を集める日本人クリエイターの1人、真鍋大度さん。

先進的かつ独創的なアイデアと、卓越した技術力から生み出されるセンセーショナルなメディアアート、ライブイベント、ミュージックビデオ、そして広告。ジャンルという垣根を軽々と飛び越えながら、デジタル表現の未来を切り開くクリエイティブ集団、ライゾマティクスをけん引する真鍋さんに、成功を収めながらも新たな挑戦を続ける原動力とは何なのか、話を聞いた。

真鍋 大度 氏

優れた作品を生み出し続けるには産業と良い関係を作るしかない

テクノポップユニットのPerfume(パフューム)、アート界も注目するアイスランドの歌姫、Bjork(ビョーク)など国内外のトップアーティストとの協業で名をはせるデジタルクリエイター、真鍋大度さん。その鋭敏なセンスや高い技術力については、改めて説明するまでもないが、注目すべきは、自らの表現とビジネスをうまくマッチングさせる能力と、未来を見据えながら行動する先見性の高さだろう。

「デジタルクリエイティブの先輩にも、素晴らしいクリエイターはたくさんいます。ただ、国や大企業からの要請を受けて研究開発ベースのパフォーマンス作品を大舞台で発表できるようになったのは、ここ最近の話だと思います。美術館や劇場だけで作品を発表していても、どうしたって食べてはいけない。作品を生み出しながら、ちゃんと稼ぐには産業と良い関係を作るしかない。ずっとそう思っていました」

Perfumeとのコラボで世界への第1歩を踏み出す

『Music Station Ultra Fes 2016』におけるPerfume “Spending All My Time” パフォーマンス

『Music Station Ultra Fes 2016』におけるPerfume "Spending All My Time" パフォーマンス
©テレビ朝日「ミュージックステーション ウルトラFES 2016」
通称アナモルフィックという錯視を利用した手法により、立体的に見える映像効果をRhizomatiks Researchが開発。カメラの位置・姿勢に合わせて映像を変化させている。

2006年に創作集団ライゾマティクスを立ち上げるも、当初は名前すらクレジットされることのない、地味でタイトな下請け仕事ばかり。だが、2008年、ついに転機が訪れる。音楽信号によって顔の表情を動かす「electric stimulus to face」という実験的動画作品をインターネットで公開して初めて世間がざわついた。そして、キャリアのブレイクスルーとなったのが、Perfumeとのコラボレーションだ。

「ミュージックビデオの監督や振付師など制作陣が、今のように前面に出るようになったのはPerfume以降です。以前であれば裏方に過ぎなかった僕らの名前が大きくフィーチャーされるきっかけになった。ステージに立つ人だけでなくクリエイションに関わる人たちが表に出る文化を作り出したという意味でPerfumeは画期的だったと言えると思います」

2010年に真鍋さんらが参加してからのPerfumeが一貫して見せてきた、未来的で斬新かつ精緻なデジタル演出は、日本のみならず世界をも魅了する。ライゾマティクスが新たな挑戦へと突き進む足がかりとなった。実は、この成功も「常にイメージして、準備をしていた」というから驚きだ。

真鍋 大度 氏

目的達成のためには何をすべきかを戦略的に考える

「自分たちの作品を一般の方に認知してもらうために、どうすればいいか。IAMAS(情報科学芸術大学院大学)というメディアアートの学校に入り直した学生時代から、ずっと考えていました。そのためには人気アーティストの大きなステージで自分たちの作品を使ってもらうのがよいと考えました。僕らの作品と相性のいいアーティストを想像してみると、PerfumeとBjorkが思い浮かびました。Perfumeは映像監督の関(和亮)君が友人だったこともあり、プレゼンのチャンスをもらって、いろいろとプロトタイプを見てもらっていました。それから3年後に、ようやく一緒に仕事ができるチャンスをいただきました。5年後の一昨年には念願のBjorkとのコラボも実現しました。全てが計画通りには行きませんが、大目標を作って初心を忘れないことも大事かと思います」

日進月歩のテクノロジーの世界にあって、次々と生まれる斬新な作品も、やがては過去のものになっていく。だが、その優れたアイデアが持つ普遍的な価値だけは、いつまでも色あせることはない。

「僕は作品が古くなることについては結構ポジティブなんですよ。テクノロジーは古くなるのが当たり前。でもアイデアは不思議なことに古くはならない。ここは大事なポイントです。新しいアイデアを生み出す時はテクノロジーには頼らない。だから、研究開発は日常的に行い具体的な問題に取り組み、コンセプトを考えるときは、できるだけ問題を抽象化する。紙と鉛筆みたいに、どこでも手に入るもので実現できるのに、今まで誰もやってこなかったことを思いついたりするのが大きな喜びですね。もっとも、そういうアイデアは年に1つ思いつけばいいほうですが(笑)」

国民性は時間という普遍的なものにも存在する

株式取引など金融の世界のデータ流通を視覚化した作品

株式取引など金融の世界のデータ流通を視覚化した作品
「traders at MOT (realtime visualization of Tokyo Stock Exchange)」
(2014年, 東京都現代美術館)photo by Eiji INA

聞けば取材前日、真鍋さんは米国のロサンゼルスにいたという。当日は東京での打ち合わせと取材をこなし、翌日には今度はスペインに旅立つというジェットセッターぶりだ。

「ひどい時差ボケは、作業効率が悪くなるから、早く治そうと思うのですが、治る頃にはもう別の場所に移動しているという毎日です(笑)。世界中にコラボレーターがいるので、空港は訪れる機会が多い場所の1つですが、いろんな時間が交差するので、気に入っています。実は時報が好きで、時間をテーマとした曲を作るために世界中の時報を集めたことがあります。時報自体が存在しないシンガポール、1日で10秒以上もズレてしまうハンガリー、優雅なBGMが流れるイタリアなど、時間の捉え方も、お国柄が色濃く出ます。国民性が時間という普遍的なデータにも溶け込んでいる。時報はとても興味深いですね」

日本人ならではの創意工夫を武器に世界で勝負する

失敗の許されない一発勝負のライブイベント。だからこそ、最後まで徹底的にこだわるという真鍋さんとライゾマティクスだが、その成功の陰には決して日の目を見ることがない膨大なプログラム群が存在するという。

「リハーサルもできないようなイベントの仕事では、映画のような映像作品とは全く別の技術が求められます。いかに失敗しないかが至上命題。だからシステムの8割ぐらいはリスクヘッジですね。幸運なことに本番で使われることは、ほとんどないんですが(笑)。それも含めて『作品』なんです」

プログラミングというモノづくりの世界においても、海外と日本では大きな差が存在するという。

「東京の狭いアトリエでの制作は、ロサンゼルスのリッチで広大な空間のそれとは確かに違うと感じます。ただ僕らはそんな環境のなかでも、ソフトウェアで広いスペースをシミュレーションしながら制作するなど、さまざまな工夫を重ねている。予算にしても、空間にしても、制約がある方が面白いものが生まれやすい。Perfumeの場合だと、海外ツアーのライブ会場で、ステージが踊れないくらい小さかったりして驚いたこともありますが、そんな制約のなかでも、やれることを考えることで、演出家が全く新しい演出方法を生み出した。派手で大規模で分かりやすいものは海外勢にはかなわないかもしれませんが、いろいろなアイデアが入り組んでいたり、コンテキストが複雑に組み合わさった作品などは、日本人の方が得意ではないかと思います」

日本人ならではの精緻な技術。それはプロダクトというハードウェアだけではなく、プログラミングや演出表現といったソフトウェアにも確実に存在する。

「海外のアーティストのステージを見ると、立ち位置や演出などのディテールが結構大ざっぱなことが多いです。アーティストが自由にできる余白があるとも考えられますが、緻密な表現とは言えません。時間的、空間的な『解像度』は、僕ら日本人の仕事が圧倒的に高いんです。サンドイッチと幕の内弁当ぐらいの差があるんじゃないでしょうか(笑)」

いつまでも無名の新人として挑戦を続けたい

ライゾマティクスのメンバーは総勢およそ40人。「業界内ではユニコーンと呼ばれる、レアなスキルセットを持ったスーパークリエイター」(真鍋さん)が所属するなど、時代の最先端を行く精鋭ぞろいだ。

「なんでもできるといっても過言ではない。どんなプロジェクトにも対応できる体制です」と真鍋さんも胸を張る。

「僕もチームのエンジニアも、モチベーションを高めるために、新しいこと、面白いことだけをやっていたい。ビジネス的には効率的だけど、クリエイティブ的には非効率、そんなプロジェクトは極力避けているんです。僕らの使っているPC自体がUNIXベースですから、オープンソースで仕事をしていることになりますが、オープンソースのツールを使った表現をしているだけでは誰も評価してくれない。ソースコードやアイデアをオープンにするということが大事なんです。だから僕らが過去に制作したプログラムのコードも、公開可能なものはすべて公開しています。それで簡単にまねされるようでは結局、大したことではないんですよ」

そんな真鍋さんは、やはり海外で勝負したいという気持ちが強いようだ。その理由が、実にユニークだ。

「日本ではライゾマティクスに対して、ある種のイメージが出来上がってしまっていて、変なゲタを履いて仕事をしているような感覚がある。だから、海外でも活動をすることで感覚をフラットにしておきたい。いつまでも無名の新人として挑戦を続けたいですね」

真鍋 大度 氏 着用モデル グランドセイコー 自動巻メカニカル SBGR251

「携帯電話で時間を知ることができる時代だからこそ、腕時計はその本来の機能性以上の存在になっている。ファッションのセンスが問われるポイントで、パーティーやビジネスミーティングには欠かせないツールになっています。個人的には、シンプルでミニマルなデザインが好みですね」

真鍋 大度 氏 着用モデル
グランドセイコー 自動巻メカニカル SBGR251

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VOL.02は俳優の佐々木蔵之介さんです。

真鍋 大度 氏

Profile

真鍋 大度 (まなべ だいと)

東京理科大学理学部数学科卒業、国際情報科学芸術アカデミーDSPコース卒業。2006年に大学時代の同級生らとライゾマティクスを立ち上げた後、Prix Ars Electronicaでは2011年度インタラクティブ部門準グランプリ、2013年度インタラクティブ部門栄誉賞などを受賞。2010年よりPerfumeの演出サポートを担い、ディレクションを担当した「Perfume Global Site Project」はカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのサイバー部門にて銀賞を受賞するなど国際的な評価も高い。現在は技術と表現の新しい可能性を探求する研究開発部門、ライゾマティクスリサーチの主宰を務める。

グランドセイコー 革新の歴史 4つのストーリー

2017年に独立ブランドとなった「グランドセイコー」は、
これまでも世界最高峰の腕時計になるべく前例のない革新を遂げてきた。
その挑戦の歴史を「4つのストーリー」から紐解いていく。

Vol.01【ブランド】なぜグランドセイコーは生まれ、そして独立ブランドになったのか?

「初代グランドセイコー」(1960年) 手巻メカニカル

「初代グランドセイコー」(1960年)
手巻メカニカル

セイコーが初の国産腕時計「ローレル」を世に送り出したのは1913年。当時、時計は数少ないハイテク機器であり、実用品ながら現代以上に所有者のステータスを示す存在だった。戦後、時計製造が復興への基幹産業に選ばれると製造は本格化。しかし、欧米との技術格差は歴然としており、1961年の腕時計輸入自由化を前に、セイコーは国際的に通用する高品質な国産時計の開発を迫られた。その結果、1960年に誕生したのが初代グランドセイコーである。

世界の腕時計、特に当時から評価の高かったスイス時計と戦えるブランドを作り上げるには、「精度」と「デザイン」の両面でブラッシュアップが求められた。まず精度においては主要パーツを独自で製造するところから始まる。セイコーは大学との共同研究や最新工作機械の導入によって、難題を一つひとつクリア。熟練工の腕により“精度を追い込める”構造を採用することで、スイスブランドに負けない高精度を実現した。一方、デザイン面では視認性とエレガントの両立を目指す。針の形状一つからこだわり、高級時計らしい気品ある意匠を手に入れた。

「グランドセイコー SBGR251」(2017年)自動巻メカニカル 400,000円(税別)

「グランドセイコー SBGR251」(2017年)
自動巻メカニカル 400,000円(税別)

発売された「初代グランドセイコー」はかなりの高額モデルだったが、大きな話題を集めた。これにより自信を深めたセイコーは、グランドセイコーを「世界に誇れる国産高級時計ブランド」へと育んでいく。より実用的であることを旨とし、精度、視認性、耐久性を重視した時計作りは、いかにも日本らしい、唯一無二の存在感を持つようになった。現代のスタンダードモデルの傑作「SBGR251」は、まさにそうした歴史の一つの結晶とも言うべきものである。

そして2017年、「グランドセイコー」はセイコーから独立したブランドとなることで、さらなる高みを目指す。腕時計の真髄を追求する姿勢はそのままに、本格スポーツやエレガンスにもデザイン領域を拡大。独自の世界観を持つグローバルブランドとして歩んでいくことなる。スイスを追い駆け続けた時計は、遂に世界で戦うブランドとなったのだ。

文 篠田哲生 

「世界の審美眼を挑戦する。グランドセイコー」 セイコーウオッチ株式会社

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