エアビーアンドビーやウーバーなどのシェアリング(共有)サービス、フェイスブックやインスタグラムのようなソーシャルメディア、あるいはユーチューブやウィキペディアに代表される参加型のサイト――。私たちはこれらを当たり前のように使っているが、いずれも20世紀には存在しなかった。
これらを「ニューパワー」として、旧来の「オールドパワー」と対比しながら論じるのが本書『NEW POWER これからの世界の「新しい力」を手に入れろ』。著者の2人は、いずれも米国でニューパワーの思想に基づく起業やムーブメントに関わってきた。
著者らが定義するニューパワーとは、分権、オープン、参加、協働、共有などを特徴とする組織やコミュニティーだ。対するオールドパワーの特徴は、集権、クローズド、支配、競争、消費など。
台頭する新しい組織形態を扱う類書はたくさんある。本書では、それらの多くとは違い、オールドパワーを一概に否定していない。現代を「ニューパワーがオールドパワーを駆逐しようとしている」ではなく、「ニューパワーとオールドパワーのせめぎ合い」と捉えているのだ。
意外に思うかもしれないが、著者らの定義によれば、アップルはオールドパワーだ。秘密主義で、消費者の意見を聞くこともなく一方的に「自分たちがすばらしいと考える製品」を提供するアップルに、ニューパワーの要素はほとんど見られないからだ。
また、形としてはニューパワーの特徴を持つビジネスモデルを採用しながらも、オールドパワーの価値観で運営されている組織やコミュニティーもあるという。たとえばフェイスブックはニューパワーのビジネスモデルで、参加型のプラットフォームを提供している。しかしその運営にはオールドパワーの価値観が随所に見られると本書は指摘。ユーザーが運営に口を出せない、一方的に(ユーザーの日常活動などの)情報を吸い上げる、といったことだ。
さらに、テロリスト集団がニューパワーのビジネスモデルを悪用し、オールドパワー的な支配の価値観を広める場合もあるので注意が必要だという。
著者らが推奨するのは、戦略的なニューパワーとオールドパワーの使い分けだ。ケースごとにどちらを使うか、あるいは両者をいかに組み合わせるか。そのアイデアを得るのに本書は最適だろう。