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今月の『押さえておきたい良書

『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』-利益生むホントの働き方改革

32時間の仕事がたったの3分で済んだ!

『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』
 -利益生むホントの働き方改革
各務 晶久
朝日新聞出版(朝日新書)
2018/08 208p 790円(税別)

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 最近話題の「働き方改革」。響きのよさとは裏腹に、仕事の効率化を暗中模索する企業が多いのではないだろうか。本書『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』では、仕事の取り組み方を少し変えるだけで効率や生産性が劇的に上がる方法を、多くの事例とともに紹介する。社内の慣例や常識を疑う視点を持てば効率化のヒントは発見できる、というのが本書のポイントだ。著者は経営・人事のコンサルティングを行う株式会社グローディアの代表取締役。

新たなルールづくり

 A社では、勤務中もっとも多く時間を費やす作業がeメールだった。管理職は3分の1近くの時間をメールに割き、特に送信数が多い。今世紀普及したeメールは利用ルールが成熟しておらず、本人の心情や判断に任されているため無駄の温床になりやすい。著者は、部下の報告のみのメールには返信不要の原則を作り、8割ものメールを削減させた。また社内メールは挨拶文を禁止した。無駄な返信や挨拶がないことがマナーだという意識を、ルールで醸成したのだ。こうした幾つかのルール決めだけで、全社分300人で年間4万9320時間の削減、コスト換算で1億3千万円近い削減になったという。

ミーティングのあり方を見直す

 著者は、仕事の作業時間第2位の会議の改革にも取り組んだ。「排除」「結合」「代替」「簡素化」の着眼点をもとに、惰性で続けていた朝礼を廃止、メンバーの似た会議を集約、情報共有のみが目的の会議は社内報などに切り替え、時間や頻度や参加メンバーを見直した。そもそも必要のない会議をなくすなどした結果、1億9千万円余のコスト削減効果があった。

ルーティンワークを見直す

 B社の改革では、人事・給与センターで32時間かかっていた仕事を3分に短縮した。採点用紙のマークシート化とエクセル処理のマクロ化(操作を記録し、繰り返し使えるようにする)というシンプルな方法で達成できたのだ。定型的に業務に携わるベテラン社員ほど、業務の改善を思いつかないことが多いと著者は指摘する。

 非効率だと感じていた作業から解放されると、社員は生き生きと働き、職場の雰囲気もよくなり、収益も上がる。無駄な仕事の排除によって本業を豊かにすれば、おのずと人生が豊かになるという著者の考え方は、本当の働き方改革を進めるための良いヒントになるだろう。

情報工場 エディター 丸 洋子

情報工場 エディター 丸 洋子

慶應義塾大学文学部社会学科卒。小学5年からニューヨークで、結婚後はロンドンで、それぞれ2年間を過ごす。子育てが一段落したのち、英国の女流作家の小説を翻訳。現在は自宅で英語を教えながら、美術館では対話型鑑賞法のガイドを務める。好きな語学とアートの魅力を子どもたちに伝える喜びを感じながらも、みずみずしい感受性から学ぶことのほうが多く、日々活力をもらっている。日課の朝の散歩で季節の移ろいを感じるのが、至福のひととき。

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