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今月の『視野を広げる必読書

『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法』

さらば「報われない努力」!
フルスロットルの効率化を実現するスーパーノウハウ

『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法』
河野 玄斗 著
KADOKAWA
2018/08 272p 1,400円(税別)

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昼夜を問わず努力しても達成できなかった資格取得条件

 私がITコンサルタント会社に転職した当時のことだ。

 その会社では、ソフトウエアに関する複数の資格取得が義務付けられていた。入社後半年以内に5個、1年以内に10個、2年以内に15個といった具合に、取得が必要な資格の数と期限が定められていたのだ。

 これは極めてハードなタスクだ。1つの資格を取得するのに、30ほどの参考文献に目を通して勉強しなければならないからだ。もちろんフルタイムで仕事をしながら、だ。

 「大変なことになったぞ」と、焦りながら、かじりつくように片っ端から参考文献を読みあさり、昼夜問わず勉強を続けた。だが、結果として、求められたすべての資格の取得は、かなわなかった。

 一生懸命勉強したのに、なぜうまくいかなかったのか。時間が足りなかったというのは言い訳にならない。与えられた時間内で効率よく勉強すればいいだけだからだ。

 私の場合、段取りをあまり考えずに進めたせいで効率が悪かった上に、だんだんモチベーションが下がっていった。期限が近づく頃には、すっかり勉強するのが嫌になっていた。

 本書『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法』は、「効率を突き詰めた誰でもすぐに使える勉強法」を具体的に指南している。

 著者の河野玄斗氏は1996年生まれで、2018年現在、東京大学医学部医学科5年生。在学中の4年生時に司法試験に一発合格している。また、第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのベスト30に入り、クイズ番組を中心にテレビ出演も多い。

 著者が東大医学部の入試や司法試験といった超難関を突破できたのは、そのためのタスクを「最も効率的なやり方」と「最大限の努力」で実践したからだという。本書で披露される勉強法は、そんな著者の経験をもとにしたものだ。

 これを読んでいる方々の中には、「資格取得の必要もないし、今さら勉強法など知らなくてもいい」と思う人も多いかもしれない。だが、本書の勉強法は、普段の仕事において効率的にタスクをこなし成果を上げたり、モチベーションを保つのにも、十分応用できるものだと思う。

「どの方向で頑張るか」を時間をかけてプランニング

 著者は、勉強を「頑張らなくてもいい」と言っているわけではない。ただ、がむしゃらに頑張るだけでは、限られた時間内に成果を上げるのは難しい。「どれくらい頑張ったか」と、「どの方向に向かって頑張ったか」のかけ算で結果が変わる、というのが著者の主張だ。

 努力の方向を定めるには、勉強に着手する前に、しっかり時間をかけてプランニングする必要がある。その方法の一つとして著者が示すのが「逆算勉強法」だ。これは(1)目標を立てる、(2)目標を分析したあと、それに向けておおまかなスケジュールを作る、(3)おおまかなスケジュールを細かく分け、タスクベース(どれだけこなさなくてはいけないか)とその日1日の目標を作る、というシンプルなものだ。

 当たり前に感じられるかもしれない。だが、これを多忙な中、個人ベースできちんとできている人がどれだけいるだろうか。また、短時間に膨大なタスクをこなさなければならないときほど、「時間がないから」と慌てて着手しがちではないだろうか。事実、私も冒頭で触れた資格勉強の際に、参考文献リストのアタマから順番に、何も考えずに読み始めてしまった。

 また著者は、逆算勉強法を実践する際に陥りがちな罠(わな)の一つに「手段の目的化」を挙げている。

 例えば資格取得や受験の際に、一通り勉強をし終えてから力試しとして過去問にチャレンジしたり、模試を受けてみたりする人が多いかもしれない。だが著者によると、その場合、過去問や模試で良い点を取ることが目的化しやすい。そうではなく、過去問や模試は手段として用いたほうが効率的なのだそうだ。

 つまり、「この分野やこのような問題形式に自分は弱いから、そこを補強する」といった具体的なゴールを設定するための手段として過去問や模試を利用したほうがいい、ということだ。勉強を始める“前”に過去問を解いたり、模試を受けてみると、自分の弱点が見えてくる。そうすれば勉強の方向性もおのずとはっきりするだろう。

 仕事でいえば、プレゼン資料を作る際に、初めからきれいに仕上げようとデザインに凝ったりすることが手段の目的化に当たる。そうではなく、まずは全体の構成とどんな内容を盛り込むかをしっかり計画し、リサーチが足りないところがないかなど、事前のチェックに時間をかけるべきなのだ。

モチベーションを維持するのに有効な“楽しい”ゲーム化

 では、私が資格取得のための勉強が嫌になったようなモチベーションダウンは、どうすれば避けられるのだろう。

 著者がモチベーションアップのために提案するものの1つは「ゲーム化」だ。ミニゲームをプレーするような感覚で勉強をしていく。

 例えば練習問題を解く際に、どのくらい時間がかかったか、もしくはどの程度正解できたか(得点できたか)を記録する。そして、同じか、同レベルの問題を解いたときの時間や得点を記録して比べる。そうすると、「解くのに10分かかっていたのが2分に短縮できた」などという達成感から、勉強が楽しくなっていくはずだ。より時間がかかったり、得点が下がった場合も、「次こそは」と奮起できるだろう。

 著者によれば、時間を記録するのは「タイムアタック」、得点の記録は「スコア」というらしい。

やりすぎると陥りがちな「手段の目的化」

 本書にある勉強法を私なりにアレンジし、実際に試してみた。冒頭で触れた、取得できなかった資格に再挑戦したのだ。集中して勉強にあてられるのは、とある週末の2日だけとした。この2日間は自分だけの時間にあてさせてもらうと、あらかじめ家族に了承をとった。

 いきなり参考文献にあたるという前回の失敗を踏まえ、最初の計画にある程度の時間をかけた。限られた2日間で何をどれくらいのレベルまでこなすのか、学習設計をした。

 前回不合格だった時の試験結果を分析し、配点が高いにもかかわらず自分の得点が低かった分野を洗い出す。そして、これらの苦手分野で何点取れば合格水準に達するかを計算し、目標を設定。あまり得点が伸びないし配点が低い分野は、思い切って捨てることにした。

 次はモチベーション対策だ。ちょうど資格を認定する会社が、ゲームの仕組みを取り入れたオンライン学習サイトをオープンしていた。

 そのサイトでは、To Doリストのように必要なタスクをこなしたことをチェックできる。簡単な小テストに合格するとポイントがためられ、ポイントに応じてランクが決まったり、グッズをもらえたりする。このサイトの存在は知っていたのだが、これまではそんなに価値を感じていなかった。今回は、ゲーム化の効用を見るために積極的に使ってみた。

 このサイトのおかげで、十分なモチベーションを維持しながら勉強を進めることができた。ところが、である。サイトで問題を解いていくのが思ったより楽しく、知らず知らず余分な問題も解き始めてしまった。余分な問題とは、当初の計画にはない、思い切って捨てた分野の問題のことだ。

 危ないところだった。私は、手段の目的化の罠にはまりかけていたのだった。苦手分野の得点をアップさせるという本来の目的を外れて、ポイントをためるのが目的化してしまっていた。本書の内容を思い出さなければ、誤った方向の努力をしたところだった。

 さて、肝心の試験結果は――合格である。

 本書では、図やイラストをふんだんに使いながら、実践的なノウハウが紹介されている。それらを参考に、自身の個人レベルのタスク処理や、勉強・学習プロセス、さらに「働き方」全般を振り返ってみてはいかがだろうか。

情報工場 エディター 足達 健

情報工場 エディター 足達 健

兵庫県出身。一橋大学社会学部卒。幼少期の9年間をブラジルで過ごす。文系大学に行きながら、理系の社会人大学院で情報科学を学ぶという変わった経歴の持ち主。システムインテグレータを経て、外資系のクラウドソフトウェア企業でITコンサルティングサービスに携わる。1児(4歳)の父。「どんなに疲れていても毎日最低1時間は本を読む」がモットー。人工知能などのITの活用や仕事の生産性向上から、子どもの教育まで幅広い関心事項を持つ。

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