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2018年6月の『押さえておきたい良書

『CHANGE!(チェンジ!) 人とチームを強くする、ラミレス思考』

万年下位から強豪チームへ
アレックス・ラミレス式 結果を出すための指導戦略

『CHANGE!(チェンジ!) 人とチームを強くする、ラミレス思考』
アレックス・ラミレス 著
KADOKAWA
2018/03 208p 1,300円(税別)

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 プロ野球の横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)といえば、弱小球団のイメージが強かった。事実、2015年まで10年連続Bクラス(リーグ6チームの下位3チーム)だった。
 だが2016、17年はリーグ3位、2017年はクライマックスシリーズを制し、日本シリーズに進出。いまや強豪チームの1つだ。

 そんなチームの成長に大きく影響したのが、2016年から監督に就任したアレックス・ラミレス氏の存在だ。本書『CHANGE!(チェンジ!) 人とチームを強くする、ラミレス思考』では、ラミレス氏がいかにチームを強く変えたのかが語られている。助っ人外国人として来日してから、日本の文化や野球を研究し、日本のスタイルの習得や、相手の特徴を理解することで結果を出してきたというラミレス氏。その手法は、我々がビジネスで慣れない環境に置かれた際にも応用できるものだ。

 著者のラミレス氏はベネズエラ出身の元プロ野球選手。1998年にメジャーデビューし、インディアンスなどを経て2001年から東京ヤクルトスワローズに入団。その後、読売ジャイアンツ、ベイスターズなどでプレーし、2014年に現役引退。現在はベイスターズの監督を務める。

元チームメイトとの間に、はっきりと線を引く

 下位からはい上がるためには、変革が必要だ。選手の起用方法も前年までとは一新することになる。ラミレス氏は、監督になって最初のチャレンジだったのは、選手たちに新しい自分のスタンスをどう理解してもらうかだったと語っている。その際に考慮したのが、選手との距離感だったという。

 監督就任時、ベイスターズには、現役時代にチームメイトだった選手が何人かいた。しかし、これからは監督として、結果次第で彼らをレギュラーから外す決断をすることもある。それまでと同じように接するわけにはいかない。

 そこでラミレス氏はシーズン開始前、彼らに今後の方針と、こうした監督としてのスタンスを直接話すことにした。そうしておけば決断をする必要があるときも、選手たちから理解を得られる。

 言うべきことをはっきり伝える場を設けるだけでなく、それを伝える意味まで伝える。すると、関係が変わっても不要なわだかまりを作らずに済む。それが短期間で一体感のあるチームを作ることにもつながったのだ。

データに基づいた高い打撃力が勝利を呼び寄せる

 ラミレス氏は監督として、投手力よりも打撃力を重視するという。相手を0点に抑えても、自チームが得点しなければ勝てないからだ。そこでラミレス氏は、各選手の特性を見極めた打順を練りつつ、強打者だった自分のスタイルをチームに浸透させることにした。

 ラミレス氏は現役時代、米国と性質が異なる日本のバッテリーを打ち崩すのに苦労したという。そこで当時、セ・リーグ最高のキャッチャーと目していた、古田敦也氏に教えを請うことにした。古田氏によれば、日本ではキャッチャーが配球を決めている場合が多く、そのパターンは、ピッチャーが変わっても大きく変わらないとのことだった。

 ラミレス氏はそれを受け、キャッチャーごとの配球パターンを研究した。そして、「このキャッチャーは2球目に内角ストレートを投げさせる可能性が高い」などのデータを持った上で打席に立った。するとどんなピッチャーが相手でも、高確率でヒットを打てるようになった。
 監督になってからもラミレス氏はそうした詳細な研究を行い、試合前の準備や試合中の決断に生かしているという。その結果、ベイスターズの打撃力は向上し、勝利をもぎ取れるようになったのだ。

 成果につながる行動ができるチーム作りは、野球においてもビジネスにおいても、非常に重要となる。本書では上記の他にも、一緒に戦略を練るコーチ陣とのコミュニケーション方法など、監督就任1年目から見事な成果を出した手法の数々が解説されている。それらは今後チームを率いるビジネスパーソンにとっても、大いに参考になるものだろう。

情報工場 エディター 宮﨑 雄

情報工場 エディター 宮﨑 雄

東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒。前職ではHR企業にて採用・新規事業開発に従事。情報工場ではライティングの他、著者セミナーの運営などを担当。その他の活動には、マンガ情報メディアでの記事の執筆、アナログゲームの企画・制作など。好きな本は『こころ』『不実な美女か貞淑な醜女か』。好きな場所は水風呂。

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2018年6月のブックレビュー

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