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2018年4月の『押さえておきたい良書

『「ラクして速い」が一番すごい』

“仕事のムダ”をなくすキーワードは「持ち味」

『「ラクして速い」が一番すごい』
松本 利明 著
ダイヤモンド社
2018/01 224p 1500円(税別)

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 仕事で「精いっぱい努力しているのに、思うように成果が出ない」という悩みを抱える人は多いのではないだろうか。

 たとえばこんなシーン。新人のA君は、初めて任された企画書を時間をかけて作り込み、自信満々で上司の机に持っていく。ところが上司は一通り目を通すと、「これじゃダメだ」と言って突っ返してきた。どうやら期待していたものとは方向性が違ったらしい。やれやれ、一からやり直しだ。

 あるいは、一生懸命考えて組んだ仕事の段取りが、取引先の都合で白紙に戻ってしまうことなども、「仕事あるある」の1つだろう。

 本書『「ラクして速い」が一番すごい』は、効率の良い仕事をするカギは「他者とのやりとり」であると指摘。自分がスムーズに仕事をこなしていくのに、同僚や上司、取引先などの「他者」との関係をいかにコントロールするか。そのノウハウを56個の「コツ」に分けて解説している。

 著者は人事・戦略コンサルタントで、HRストラテジー代表、日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員を務める。PwC、マーサージャパン、アクセンチュアといった外資系コンサルティング会社で人事制度改革や人材開発などに携わってきた経験がある。

 タイトルにある「ラクして速い」仕事をするポイントは、本書によれば2つある。結果につながらない"ムダな努力"をなくす。そして、自分に備わった"持ち味"を最大限に生かすことである。

「60点の出来」が上司の思考を刺激する

 冒頭のシーンで渾身(こんしん)の企画書をやり直すはめになったA君の、それまでの時間と労力は戻ってこない。こうしたムダな努力をできる限り防ぐにはどうしたらいいか。

 著者は「60点の出来」の段階で、「これはドラフトなのですが」などと言いながら上司に見せにいくのがベストだとしている。もし全体の方向性が違っていたとしても、やり直しの労力は少なくて済む。

 さらに、あえてフィードバックをもらうことで上司の思考を刺激する。やりとりをするうちに上司自身が思い描いていた最終形のイメージが明確になり、指示も具体的になる。これにより仕事の完成度は高まるうえ、上司との信頼関係も生まれていくという。

自分に向いた仕事ができる「流れ」を作る

 2つ目のポイント、自分の持ち味を最大限に生かす、というのはどういうことか。

 著者は、まず自分の仕事を「向いているか」「成果が出るのか」という2つの軸で見直してみることを勧めている。

 他の人よりスムーズにできたり、結果が周囲の人から感謝されることが多かったりするのが「向いている」仕事だ。言い換えれば、自分の持ち味が生かせる仕事のことだ。「成果が出る」仕事は、文字通り、業績として評価されるものを指す。

 この2軸に照らし、「向いていて成果が出る」仕事は自分でできる範囲で優先的に取り組むことを心がける。その仕事があなたの持ち味であることが周囲に浸透すれば、次第に振られる仕事の多くが「向いていて成果が出る」ものになっていくだろう。

 つまり、ラクして速くできる仕事が振られるような「流れ」を、自ら作るのである。

 また、「向いているが成果がでない」に振り分けられた仕事も見過ごしてはならない。その仕事はあなたの伸びしろだ。著者は、たとえば日々の労働時間の10パーセントを使って、その仕事のスキルアップに励むことを提案している。

 他にも本書には、波風を立てずに上司の判断を変えてもらう方法など、さまざまな実践テクニックが紹介されている。ぜひ参考にして、自分にできそうなものから取り入れてみてはいかがだろうか。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2018年4月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店