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2018年1月の『押さえておきたい良書

『問題解決大全』

にっちもさっちも行かない時、きっと役立つ「あの手この手」

『問題解決大全』
読書猿 著
フォレスト出版
2017/12 412p 1,800円(税別)

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 ビジネスでも日常生活においても、事の大小はあれど「問題解決」が求められる場面は無数にある。それらをいかにすばやく、効率的に行うか、古今東西、さまざまな考え方や手法・技法が開発されてきた。

 本書『問題解決大全』では、それらを厳選して紹介している。定番といえる有名なものから、知る人ぞ知るものに、著者オリジナルの手法を加え、37個を収録。おのおのをレシピ(手順)+サンプル(実践例)+レビュー(解説)という構成にそろえ、使い方だけでなく思想史上の背景なども伝えている。

 著者は『読書猿 Classic: between/beyond readers』という書評ブログを主宰する人物だが、その正体は明らかにされていない。「猿」と名乗るのは「読書人や読者家には遠く及ばない浅学の身」であるのを表すためだそうだ。著書に、同様の形式による『アイデア大全』(フォレスト出版)がある。

問題を細分化する「ニーバーの仕分け」

 仮にあなたの息子が「引きこもり」だとする。どうやって解決するか。「ニーバーの仕分け」という思考法ならば、そんな深刻な問題についても解決の糸口が見いだせる。レシピは以下の通り。

“(1)問題や課題を細分化する。
(2)細分化したそれぞれの部分について、変えやすさ(可変度)について点数づけする(表にするとわかりやすい)。
(3)可変度がゼロか低いものは(少なくとも当面は)受け入れるしかない。
(4)可変度が高いものについて問題解決に着手する。”(『問題解決大全』p.33より)

 引きこもりの息子という問題に対し、まず(1)問題を細分化し、構成する「部分」を具体的に書き出してみる。すると「息子が働かない」「息子が部屋から出てこない」「私(母)が息子の食事の用意をする」などとなる。

 次に(2)これらの可変度に点数をつける。「息子が働かない」は1。「息子が部屋から出てこない」は、トイレのために部屋から出てはいるため可変度は高いと判断し5となる。「私(母)が息子の食事を用意する」は自分の行動を変えればいいので可変度は8と極めて高い。

 (3)からすると「息子が働かない」は当面受け入れることにする。そして(4)可変度が高い「私(母)が息子の食事を用意する」に着目し、「食事の用意をしない」ことから始めるといい。

解決プランを仮置きする「ピレネーの地図」

 本書で紹介されている「ピレネーの地図」という思考法は、次の逸話が元ネタだ。

 スイスで軍事演習をしていたハンガリー軍の偵察隊が、豪雪のアルプス山脈で道を失った。だが3日後に全員が帰還。たまたま地図を持っていたおかげで、パニックに陥らずに帰り道を見つけられたのだという。ところが隊員が持っていたその地図は、スイスのアルプス山脈ではなく、フランスとスペインの国境付近にあるピレネー山脈の地図だった。

 この逸話をビジネスなどに応用した思考法が「ピレネーの地図」。明確なプランが思いつかないまま問題に対応しなくてはならないときに、何でもいいから使えそうな既存の類似プランを「たたき台」にする、というものだ。その仮のプランが足がかりとなり、的確な解決法が浮かび上がる可能性が高まる。

 本書は、イラストや写真、図解も豊富なため視覚的にも理解がしやすい。小さな問題でもページをめくり、当てはめてみるといい。その繰り返しできっと問題解決スキルが身についていくことだろう。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2018年1月のブックレビュー

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