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2018年1月の『押さえておきたい良書

『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題』-「あなたは自分を利口だと思いますか?」

世界最高峰の奇妙な入試問題、あなたはいくつ解ける?

『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題』
 -「あなたは自分を利口だと思いますか?」
ジョン・ファーンドン 著
小田島 恒志/小田島 則子 訳
河出書房新社(河出文庫)
2017/11 280p 820円(税別)

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 英国のオックスフォード大学とケンブリッジ大学といえば、言わずと知れた超がつく名門。出身者のリストには、政治家やノーベル賞受賞者など、優秀、有能な世界的著名人が名を連ねる。同レベルの英国が誇る世界最高峰の学び舎として、両校をまとめて「オックスブリッジ」と呼ぶことも多い。

 そのオックスブリッジの入学試験がどのようなものか、ご存じだろうか。両校とも入試の一環としてインタビュー、すなわち口頭試問が行われている。そこで試験官から尋ねられる質問に、とても変わっているものがあるそうだ。例えば「火星人に人間をどう説明しますか?」というような。

 本書『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題』では、オックスブリッジの入試におけるインタビューで実際に投げかけられた60の難問奇問を取り上げ、解説を加えている。

 60問の中には、「正解」がないような質問も多数含まれている。それらについて著者は「どのように考えていくべきか」という思考の道筋を示している。正解が出せる問いについては、「なぜこういう質問がなされるのか」などを解説し、読者の思考の広がりを助けている。

 著者は著述家で、時事問題や科学に関する膨大な著書がある。ケンブリッジ大学ジーザス・カレッジの卒業生だ。

自分が利口かどうかを問われたら?

 「あなたは自分が利口だと思いますか?」
 これはケンブリッジ大学入試での質問だ。どう切り返すべきだろうか。

 「はい」と答えたとする。そうすると自信家と思われ、他の試験の評価のハードルが上がるかもしれない。かといって謙虚に「いいえ」と答えれば「利口な生徒」を求めるケンブリッジ大学にふさわしくないと判断される可能性がある。迷うところだ。

 もしこの質問が「あなたの知能は高いですか?」であったなら、もう少し簡単に答えられる。IQテスト(知能検査)を受けたことがあれば、「スコアが○なので、平均よりは高いです」などと答えられる。

 だが利口というのは主観的な言葉であり、IQテストのような客観的な基準が存在しない。しかも「小ざかしい」「ずるい」といったネガティブなニュアンスも含まれる。

 こうした問いにうまく答えるには、まず質問者の本当の意図を考えてみることが大事なのだそうだ。本書では、上記のような利口という言葉のニュアンスを踏まえた上で、まずは次のように答えるのを提案している。「はい、私は大学側の望む程度には利口です」
 この答えならば、自信家にもとられないし、「本学にふさわしくない」とも思われない。

一見途方もない問題に答える

 次のオックスフォード大学入試での質問には正解がある。
 「もしこの紙を無限回数折りたたむことができるとしたら、何回折れば月に届くでしょうか?」

 「そんな途方もない計算など無理だ」とすぐにさじを投げてはいけない。落ち着いて地道に計算すれば答えは出る。答えはたったの43回前後。紙の厚さ0.1ミリメートルを、月までの距離40万キロメートル弱に達するまで倍にしていけばいい。0.2、0.4、0.8、1.6…といった具合だ。

 ここで質問には、「無限回数折りたたむことができる」という前提があることに注意しよう。現実には紙を43回折るのは不可能だ。折るたびに厚みが増して、物理的に折れなくなる。実際には12回ほどが限度とされている。解答には影響しないが、オックスブリッジはそこに気づけるくらいの頭の柔らかさを望んでいるのかもしれない。

 本書の60問にチャレンジすることで、きっとあなたの頭の柔軟性も増していくだろう。試しにケンブリッジ大学入試の次の質問を考えてみてほしい。
「牛1頭には、世界中の水の何パーセントが含まれていますか?」
 正解は本書でご確認を。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2018年1月のブックレビュー

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