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2017年11月の『押さえておきたい良書

『世界で800万人が実践! 考える力の育て方』-ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる

いつの間にか「考える習慣」が身に付くスーパーメソッド

『世界で800万人が実践! 考える力の育て方』
 -ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる
飛田 基 著
ダイヤモンド社
2017/07 248p 1,400円(税別)

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 私たちが生涯にわたり生き生きと活躍するのに、最も必要な能力は「考える力」なのではないだろうか。

 考える力がなければ、日々起こる問題の解決策を見いだせない。人間関係の構築や改善も難しいかもしれない。「何かをしたい」と目標を掲げても、それを達成するには考える力が必須だ。

 かくも大事な考える力だが、一朝一夕では身に付けられるものではない。子どもの頃から鍛える必要があるのだ。

 本書『世界で800万人が実践! 考える力の育て方』には、子どもの考える力を伸ばすのに有効なメソッドとツールが紹介されている。親や教師など、子どもの周りにいる大人たちが押さえておくべき考え方やコツなどを、具体的なエピソードを交えながら詳しく解説。その内容は、子どもだけでなく大人も対象とし、例えば職場で部下を指導するのにも十分応用できるものとなっている。

 著者は経営コンサルタントとして活躍する傍ら、教育・福祉・ビジネスなどの分野で「生き方」を指導・支援するライフコーチとして活動。いずれもTOC(制約理論)を適用したメソッドを用いており、NPO法人「教育のためのTOC」日本支部理事も務めている。TOCとは、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱したビジネス理論である。

子どもには、「困りごと」を尋ねればうまくいく

 本書のメソッドやツールの大前提は、子どもへの「問いかけ」だ。すべてに共通して問いかけが実行される。なぜ前提になっているかというと、問いかけに答える際に必ず「考える」プロセスが必要になるからだ。

 だが、「何を問いかければよいか分からない」という人もいるだろう。また、「普段から問いかけているが、そもそも子どもが反応してくれない」という人もいるはず。どうすればよいか。子どもの「困りごと」を尋ねればよいのだ。

 子どもにまず「どんなことで困っているの?」と聞く。すると子どもはするすると話し出すことが多いのだという。

 このとき大事なのは、親が子どもの発言をそのまま受け止めることだ。子どもが「勉強に対してやる気が出ない」と言ったら、「そうか、勉強に対してやる気が出なくて困っているんだね。他には?」などとおうむ返しをして続きを促す。「こうしなさい」「こうすればいい」などと言ってはいけない。子どもの思考の流れを分断してしまうからだ。

「理想の状態」を引き出し、3つのツールを使う

 子どもが困りごとの質問に答えていくことで、その子自身の「理想の状態」を引き出せる。

 例えば、「勉強しないといけないけど、日によってやる気が出ない」という困りごとに対しては、「日によってやる気が出ないのか。じゃあ、どうなったら理想かな?」と問いかける。

 子どもは「毎日3時間以上集中して勉強できること」と答えるかもしれない。そうすればしめたものだ。それこそが理想の状態であり、子どもは自分でその状態を手にするために何をすればよいのかを考え出すのだという。

 本書では、さらに子どもの思考を助け、深めるための3つの思考ツールについて図解も加えて解説している。3つの思考ツールとは、困りごとと理想の状態などの対立を解消するアイデアを導く「クラウド」、物事を論理的に整理する「ブランチ」、大きな目標を達成する「アンビシャス・ターゲット・ツリー」のことである。

 まずは子ども(職場の部下でもいい)に問いかけをしてみてほしい。それで反応があったら、ぜひ本書を開き、3つの思考ツールによるエクササイズに進んでいただきたい。図を参照しながら順を追って実行するうちに、いつの間にか子ども(または部下など)に考える習慣が身に付くことだろう。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2017年11月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店