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2017年10月の『押さえておきたい良書

『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』

海外経験必要なし! さあ、あこがれのバイリンガルへ

『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』
上乃 久子 著
小学館
2017/04 208p 1,300円(税別)

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 外国人相手に微笑みながら流ちょうに英語を話す人を見て、「帰国子女にちがいない」「留学とかで長い間海外で暮らしていたんじゃないの」などと臆測してはいないだろうか。

 本書『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』の著者、上乃久子さんは、世界でも指折りの日刊紙「ニューヨークタイムズ」東京支局に勤務する現役の記者。日々英語を縦横無尽に使って仕事をしている。だが彼女は帰国子女ではない。留学経験もない。1カ月以上英語圏に滞在したことすらないそうだ。最近、海外生活や留学の経験がまったくない人を指す「純ジャパ(純ジャパニーズ)」という言葉が市民権を得つつあるようだが、上乃さんはまさにこの純ジャパにあたる。

 本書の英語勉強法は、上乃さん自身が現在の職場で十分使えるまでに英語力を鍛え上げたメソッドだ。注意してほしいのは「1カ月で話せるようになる!」といった即席のマニュアルではないこと。いわば「王道」に近い勉強法であり、楽しみながらコツコツ続ければ、確実に効果が上がるものなのだ。

 なお上乃さんは、香川県にある四国学院大学文学部英文学科を卒業後、同大学事務職、東京都内のバイリンガル雑誌社、翻訳会社、ロサンゼルスタイムズ東京支局、国際協力機構(JICA)などでキャリアを積んできている。

「多少発音が良くなくても通じる」は本当か?

 日本人の英語学習は、とかく「インプット」に偏りがちだ。とりわけ英文のリーディングに注力する人が多い。しかし上乃さんは、インプットとアウトプットの両面からバランスよく学ぶべきと説く。さらに本書の構成はchapter 1がスピーキング、chapter 2が発音などとなっており、アウトプット重視がうかがえる。

“せっかく英語を話すのであれば、日本語訛りのぎこちない英語ではなく、滑らかに話すことを目指したいですね。(中略)
 発音は、人でたとえると“外見”に該当します。少しでも見栄えがよく、つまり聞き手が聞きやすいように話す努力をすべきです。”(『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』p.50より)

 「なまっていたり、多少発音がぎこちなくても英語は十分通じる」と主張するバイリンガルは少なくない。だが、上記引用のように、上乃さんの意見は違う。むしろ、英語特有の抑揚やリズムがしっかりマスターできていれば、細部の発音が多少あやしくても通じることが多いのだという。

リスニングは「シャワー」よりも「泥沼」

 上乃さんは、リスニングにおける「英語のシャワー」効果にも疑問を呈する。英語学習法の定番ともされるものだが、リスニングの基礎力がまだついていない段階で、シャワーを浴びるように大量の英語を聞き流していってもあまり効果がないというのだ。そうではなく「“英語の泥沼”の底までどっぷりと身を沈める」ような聞き方が重要だという。

 言っていることがある程度理解できるまで、神経を集中させ、英語に耳を傾ける。単に聞き流すのではなく、1つの文章を細かく区切り、小分けにして繰り返し聞く。15分ぐらい続けて頭がクラクラに疲弊するまでやらなければ、十分ではないというのだ。ディクテーション(文字起こし。スペルや複数形、冠詞、助詞などを逐一正確に書いていく)の練習も推奨している。

 スピーキングのための具体的な「50英文」が例示されていたり、練習に役立つ書籍や教材、PCソフトの紹介が随所にちりばめられるなど、本書は実用的な側面も大きい。著者自身のこれまでのキャリアを振り返るコラムも楽しめる。

 英語を使って仕事ができるようになりたい純ジャパのあなたへ。さあ、本書を片手に実践だ!(担当:情報工場 吉川清史)

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2017年10月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店