2017年10月の『押さえておきたい良書』
ビジネスパーソンにとって、もっとも大事なスキルは何か。
営業力や企画力、マネジメント能力など、人によって答えは違うだろう。おのおのが抱える課題によっても異なるにちがいない。だが、今挙げたようなビジネススキル全般に通底するのは他でもない、「プレゼン力」なのだ。
プレゼン力とは、自分の意図や考え、企画の内容や価値などを正しく相手に伝え、相手に行動を促す力だ。この定義に当てはまるのは、大勢の人の前でするプレゼンテーションだけではない。取引先との打ち合わせ、チームメンバーへの説明など、あらゆるビジネスの現場で発生する対人のやり取りを含む。このスキルに秀でていれば、常に結果を出し、仕事ぶりも高く評価されるはずだ。
本書『マイクロソフト伝説マネジャーの世界NO.1プレゼン術』は、プレゼン力を向上させるヒントが満載の一冊。大勢の前で話す、いわゆるプレゼンテーションを例にとり、構想時のビジョン、構成やストーリーの作り方、さらには好印象を与える姿勢など、あらゆるノウハウを6つの法則に当てはめて解説している。
著者は日本マイクロソフト株式会社マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長。プレゼン回数は年間200回以上を数え、登壇したイベントでは常に最高の評価を得ているという。2006年には、全世界のマイクロソフト従業員約10万人の中でトップクラスの成績を収めた者にビル・ゲイツが与える「Chairman’s Award」を受賞している。
「ハッピーな未来」のイメージが人を動かす
まずは「相手からどんな行動を引き出したいのか」を考えるのが、どんなプレゼンでも基本。相手に動いてもらうにはまず、行動すると「どんなハッピーな未来が訪れるのか」をイメージさせることだという。
たとえば著者は、経営者に自社製品であるマイクロソフトウィンドウズを売り込むとき、「この機能を使えば作業時間が40%短縮できます」などと機能面の説明に終始することはないそうだ。それらに加え、作業時間を短縮すると「社員の残業が減りコストが削減できる」「会社のイメージアップにつながる」といったメリットを話す。ウィンドウズの導入によってもたらされる「ハッピーな未来」を印象づけるようにしているのだ。
プレゼン中の自分をビデオに撮って見る
さて、あなたは自分のプレゼンが相手や聴衆からどう見えているか、意識したことがあるだろうか。たいていは、頭の中に浮かべた姿と現実にはギャップがあるものだ。そこで著者は、自分がプレゼンをしている姿をビデオに撮ることを勧めている。
撮影したビデオを見返す前に、「自分はどんな話し方をしているか」「話すスピードはどのくらいか」「声のトーン、ボリュームはどうか」など、プレゼン中「自分はこうしているつもり」というイメージを書き出してみる。その後、ビデオ撮影した実際の様子と比較してみる。すると、ギャップがはっきりと見えるので、一つひとつ修正していけばよい。
言うまでもないが、本書は読むだけでは不十分だ。ぜひ実践してみてほしい。いきなり本番は不安だという人は、身近な人を相手に練習しよう。その積み重ねによって、自分自身の「ハッピーな未来」も見えてくるはずだ。(担当:情報工場 宮﨑雄)