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媒体説明会(2016年6月開催)

2016年6月29日に行われた媒体説明会での講演内容をお伝えします。

パネル討論2「企業に求められるマーケティング業務の変革と改善」本間充氏(東京大学大学院数理科学研究科客員教授、アビームコンサルティング ディレクター)

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アビーム本間氏:マーケティングのデジタル化は、企業における「マーケティング再定義の機会」

ビジネスがデジタル化し顧客の購買行動が多様化する中、企業は顧客をより深く知るため、データを活用したマーケティングに取り組むようになってきた。デジタルマーケティング、すなわち「マーケティングのデジタル化」を企業が実現するために必要なことは何か、花王で長くマーケティングに携わったデジタルマーケティングの第一人者、東京大学大学院数理科学研究科客員教授でアビームコンサルティング ディレクターの本間 充氏が語った。

データを使ってマーケティングを進化させる取り組み

 デジタルマーケティングは、「マス・リアル・ネットの3領域すべてをデジタルデータで統合し、顧客導線を最適化する試み」と定義されることがある。この点について本間氏は、「マーケティングそのものがやることは変わらない」と指摘する。

 従来のマーケティングは、漁にたとえれば、「顧客(魚)がどこにいるかわからない海にマーケティングが底引き網を仕掛け、水揚げした浜辺では、目当ての魚かどうかを営業が選別する」漁法だった。仮に、網に100匹入っていても、浜辺では95匹を捨てるような非効率な手法だったが、あらかじめ顧客がどこにいるかがわかれば、マーケティング(漁)の効率は上がっていく。

 「マーケティングツールがデジタル化した」ことで、顧客がどこにいるか、何を求めているかが可視化できるようになり、企業はより顧客一人ひとりと向き合うことができるようになった。このように、顧客を知るための「データ」がデジタルマーケティングの本質にあると本間氏は語る。

 もう一つ、デジタルマーケティングの本質に、マーケティングと営業の「壁」が少なくなってきたことも挙げられる。これまで、「網をセット」するマーケティングと、「魚を選別」する営業の役割は分断されていた。しかし、見込客を案件化して営業に引き渡すマーケティングプロセスを自動化する「マーケティング・オートメーション(MA)」ツールの登場などにより、マーケティングと営業の間でデータが連携し、見込客の獲得から、商談のクロージングまでをワンストップでできるようになってきた。

 このように、デジタルマーケティングは「マーケティングがデジタル化した」ものであり、データを使ってマーケティングを進化させる取り組みだと本間氏は語った。



顧客を知るために最も重要なのは「データ」

 企業がデジタルマーケティングに取り組む必要がある理由として、本間氏は「シェアの低下」を挙げる。たとえば、BtoC向けの消費財では、仮に20年前と比べてブランド全体の市場シェアがほぼ変わらなくても、商品カテゴリーが細分化した結果、アイテム単位で見た場合「シェアが漸減している」のだという。

 広告宣伝予算はプロダクトごとに決められており、より少ないシェアのために、従来同様の「底引き網」手法のマスマーケティングを行うことができなくなってきた。つまり、顧客を「1本釣り」するために、顧客を明確に知る必要があるというのだ。

 では、データを活用したマーケティングのために、企業はマス、リアル、ネットをどう使い分ければよいのか。本間氏は興味深い数字を提示する。本間氏は、東京大学大学院数理科学研究科で教鞭を執っており、広告費とリーチの関係を数学的にモデル化している。これによると、インターネットは、どれだけ予算を投下しても「最大で30%のユーザーにしかリーチできない」のだという。

 一方、マスメディア、たとえばTV広告では「最大で85%の世帯にまでリーチする」ことがミュレーションで導き出されている。新聞でも「約60%の世帯にリーチする」効果があるということで、リーチに関するマス媒体の力は依然として強い。

 リーチでは劣るといわれるデジタル広告でも、最初はノンターゲティングで広告を配信し、反応した人を「興味がある人=ターゲット」と捉えてターゲティングを行う「2階建て」のマーケティングを行うことがある。正しくターゲティングを行うために、企業のマーケターはお客様を正しく知ることが求められるのだ。

 マス、リアル、ネットの特性を理解して、目的に応じてツールを正しく使い分けること、そして、顧客を知るために最も重要なのはデータであること。マーケターはこの点を理解する必要があると本間氏は語る。



デジタルマーケティングにより、企業の業務や組織も変わっていく

 数あるマーケティングのコンセプトや方法論の中から自社にとって最適なものは何かを考えることも重要だ。たとえば、シャネルは、「シャネルのパフューマーが作るからシャネルである」ということを顧客も、ブランドも知っている。だからこそ、シャネルは需要でなく感情に訴えかける「エモーショナル・マーケティング」を行うのだと本間氏は語る。

 その意味で、すべての企業がデジタルマーケティングを行う必要はないのだ。どの方法論がよいかを決め、その結果として、デジタル化が必要だったら行えばよい。しかし、問題は、多くの会社で「どのマーケティング方法論がよいのか」が決められていないことだと本間氏は指摘する。

 そこで、アビームコンサルティングが提供するのが「アセスメントサービス」だ。これは、企業のマーケティングのビジョンが確立されているか、組織がビジョン通りに動いているか、データ分析はどの程度できているかといった点をアセスメントし、実行に向けたテクノロジーと組織、業務の改善を行うものだ。

 本間氏は「組織や業務改革のためには、1年、2年の中期的なスケジュールを持つことが大事だ」と語る。そのために、まずは現状を可視化し、現場の担当者と経営層の思いの「ズレ」を埋める役割を果たすのだ。

 本間氏は、デジタルマーケティングは「マーケティングを再定義する機会」でもあると位置づける。従来のマーケティングと別にデジタルマーケティングが存在するのではなく、その企業にとっての「マーケティングの再定義」を行い、それを全社員で共有する機会だというのだ。



日経には現在の優良な顧客像を今後も維持して欲しい

 「日本は新聞メディアの選択肢が豊富にある」点では恵まれている。この点は、広告主企業としてのマーケターが意識しておくべきポイントだと本間氏は語る。諸外国では全国紙のブランドが衰退しており、全国紙を広告媒体のブランドとして選ぶ機会が少ない。日本は、全国紙に依然としてブランドが残っている。

 その上で、本間氏はマーケティング媒体としての日経電子版に期待することを挙げた。まず、「日経電子版だけがデジタルマーケティングのツールではない」というポイントだ。すなわち、スマホをはじめさらなるマルチメディア展開とあわせ、紙媒体としての新聞を活用した展開までをも含めたマーケティングをデータで統合し、一貫して行うことが重要になってくる。そのカギを握るのが「日経ID」だ。

 日経は、「プレミアム層といわれる優良読者を数多く擁し、電子版の閲覧行動を見ても記事の閲覧本数が多い」と本間氏は語る。そこで、メディアとしての日経には、「現在の優良な顧客像を今後も維持して欲しい」と要望した。

 最後に、広告主である企業は「メディアとの関係は相互援助の関係にある」として、「日経電子版のようなプレミアムな読者層を持つメディアを積極的に利用して欲しい」とリクエストした。