キャリアデザインを考える女性のための実践的学習講座である「丸の内キャリア塾」のスペシャルセミナー。2018年1月29日には、エレガンスを愛する女性を中心に絶大な支持を得ている女性ファッション誌『25ans(ヴァンサンカン)』の協力のもと、大阪にて開催。地元大阪出身の宝塚歌劇団元星組トップスター・柚希礼音さんがゲストとして迎えられた。
星組トップスターとして6年以上も組をけん引し、2014年には宝塚歌劇団100周年の顔も務めた柚希さん。退団公演の千秋楽には、東京宝塚劇場周辺に過去最高の12,000人ものファンが詰めかけ、退団を惜しんだ。その退団から約2年半、現在は女優・アーティストとして幅広い活躍を続けている柚希さんに、表舞台で輝き続ける秘訣、ライフスタイルのこと、宝塚時代の思い出などをフリーアナウンサーの竹下典子さんが聞いた。
柚希礼音さん
女優、元星組トップスター
1999年初舞台。2009年宝塚歌劇団星組トップスターとなる。主な主演舞台に『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』『眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯(はて)に―』などがある。14年には、日本武道館での単独コンサートを行うなど、宝塚歌劇100周年を支えるトップスターとして活躍。15年5月惜しまれつつ退団。退団後は、ワールドプレミアミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』に唯一の日本人キャストとして出演。18年1月21日からミュージカル『マタ・ハリ』、4月9日から地球ゴージャスプロデュース公演Vol.15『ZEROTOPIA』と出演作が続く。
- 竹下さん
- 宝塚歌劇団を目指したのはなぜですか。
- 柚希さん
- 子どもの頃からクラシックバレエをやっていて、バレエで留学をしようと思っていたのですが、背が大きくなりすぎてしまって。周囲には宝塚受験を勧められたのですが、あまり興味がなかったんです。でも一度は観てみようと公演に行ってみたら、想像していた以上に楽しくて、受験しようと決めました。
- 竹下さん
- 実際に入ってみていかがでしたか。
- 柚希さん
- 宝塚の授業は、普通の学校でやるような一般的な勉強はなく、すべてが芸事。私は芸事が大好きなので、ここに来て本当に良かったと思いましたね(笑)。踊りだけでも、日本舞踊、タップ、ジャズなど、たくさんの授業があるんです。
- 竹下さん
- 成績が優秀だった柚希さんは下級生の頃から大きな役に抜てきされるなど、注目されていました。そして、2009年には、星組のトップスターに就任します。トップとして、80人以上の生徒をどのようにまとめたのですか。
- 柚希さん
- トップ就任当初は、若い子たちをむりやりにでも頑張らせようとしていたのですが、ある時から、まずは自分自身がしっかりしよう、自分のことに集中しようと考えを改めました。それから組のまとまりがよくなったような気がします。
- 竹下さん
- トップと最下級生とは世代の差が大きいと思うのですが、コミュニケーションをとるうえで工夫したことはありますか。
- 柚希さん
- 世代の違う若い子たちにも、愛をもって伝えれば必ず通じます。先輩方から教わることはもちろん多いのですが、若い世代に教えることで学ぶこともたくさんあります。また、若い子に責任のある仕事を任せることも大事だと感じています。私自身、入団5年目で、ダンスリーダーを任命されたときは大変なプレッシャーでしたが、責任を伴うことで、何事にも代えがたい経験を得ることができました。
- 竹下さん
- 相手役(娘役トップ)の夢咲ねねさんとの関係はいかがでしたか。
- 柚希さん
- 何かあったとき私は、思ったことは直接、自分の口から伝えていました。私の役作りは、ねねの役作り、ねねの役作りは、私の役作りでもあると考えていましたから。ちゃんと伝わらないと嫌ですし、いいときも、お芝居で心が通わないときも、正直な気持ちを話すようにしていました。ねねもそうしてくれていたと思います。ずっと向き合ってやってきたので、芝居の方向性や舞台で良かったと思うタイミングはいつも同じでした。
- 竹下さん
- そして2015年、いよいよ宝塚歌劇団を退団します。6年間もの長い期間、トップを務めるというのは大変だったのではないでしょうか。
- 柚希さん
- (トップスターとしての)お披露目公演のときからはいろいろなことを勉強して、自分のことを好きになることができました。今でも舞台に出演するときは、毎回緊張しています。とにかく努力を続けるしかありません。納得できなければ、もっと頑張ればいい。それでもできなくて落ち込むときは、温泉に行ってリフレッシュします。
- 竹下さん
- 退団後は、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』のお稽古ですぐにニューヨークに行かれたんですよね。
- 柚希さん
- 宝塚という場所から離れたあとに、3カ月間、ニューヨークで過ごした時間はすべてが新鮮でした。グーグルマップを使ってひとりで移動するのも、稽古場の飲み物を自分で用意していくのも本当に久しぶりで、今までのありがたさを感じつつ、これから自分ひとりでやっていくんだということを実感しました。
- 竹下さん
- 現在は女優さんとして活躍しています。
- 柚希さん
- ずっと男役を演じてきたので、女性を演じることに関しては、まだまだ分からないことだらけ。でも役がたくさんのことを教えてくれています。最近は、『マタ・ハリ』に(第一次世界大戦下、ドイツとフランスの二重スパイとして疑われ、波乱の人生を送ったダンサー、マタ・ハリ役で)出演しているせいか、「女性らしくなりましたね」と言われることが多いんですよ。「ビリー・エリオット」に(母親でもあるバレエ教師役で)出演していたときは、自分で言うのもなんですけれど、やたらと母性にあふれていた気がします。意外と私、役を引きずるタイプみたいです(笑)。退団後はファッションもずいぶんと変わりましたね。まず買う洋服が違います。宝塚時代は、デパートのメンズ館で服を買っていました。(笑)
- 竹下さん
- お忙しい毎日のなか、柚希さんはどんなライフスタイルを送っているのでしょう? 気を付けていることはありますか。
- 柚希さん
- 私の健康法は寝ること! できれば10時間くらい寝たいのですが、公演中は7時間の睡眠を確保するのが精いっぱいで……(笑)。また、私には子どもの頃からやっているクラシックバレエが向いているようで、体に不調を感じたら、バレエのバーレッスンで治すんです。筋肉を使うことがいいのか、不思議と体が楽になるんですよね。バレエをする時間がなくても、お腹を引っ込める動作だけでもある程度の効果は期待できると思います。やりすぎかもしれないというくらい勢いよくお腹を引っ込めて、息をしてみるといいですよ(笑)。今はお腹が見える衣裳を着る作品に出演しているので、炭水化物の摂取は朝だけにして、お肉と野菜をたくさん摂るようにしています。青汁やアミノ酸も積極的に摂っています。
竹下典子さん
フリーアナウンサー(元フジテレビ)
「スター千一夜」(フジテレビ)、「3時にあいましょう」(TBS)などの司会をはじめ、テレビ、ラジオで活躍。現在、演劇関係のトークショーの司会などを担当。
- 竹下さん
- お休みがあったら何をしたいですか。
- 柚希さん
- 海外旅行ですね。今行きたいのは南フランスです。ニースやモナコのあたりをめぐりたいですね。
- 竹下さん
- 柚希さんのお部屋はどんな感じなんでしょうか。
- 柚希さん
- モダンテイストが好きなので、ひとつの壁を黒にしています。じゅうたんも好きなので、こだわっています。観葉植物もいっぱいありますよ。私、観葉植物を育てるのはけっこう得意なようで、昔からある植物がすごい勢いで成長しています。
- 竹下さん
- 最後に、なりたい自分は、どんな自分ですか。
- 柚希さん
- 自分のことがちゃんと好きな自分、でしょうか。まだまだ課題はあっても、頑張っていると思える自分に、いつまでもそう思えるような自分でありたいですね。